■ 万年筆の値上げが止まらない、のは、興味がある方なら耳タコです。
■ ごく数年の間に2倍の価格となり、今は165,000円ですか。でも、他の万年筆に比べると、2倍の値上げなら穏やかな方です。
■ 先日書いたプラチナ万年筆 センチュリー#3776 シャルトルブルーですが...(🔗6/16)。
■ フランス、シャルトルにあるノートルダム大聖堂(カトリック教会)のステンドグラスの色を想起させるイメージで売り出しているのでした。
■ おひざ元フランスのamazonで購入するフリをしてみましょう。どういう表示で売り出しているのかな。関係ないけど送り先はイスラエルにしてみました...。
■ 色は..."ダークブルー;Bleu foncé"なんですね...。(画像右下の青い下線; いずれも下線は私が引いたものです。以下同じ)。
■ ...なにか釈然としないです。
■ キリスト教とは袂を分かつユダヤ教...。ヘブライ語話者すなわちイスラエル人がamazonで購入を検討しているフリをして調べてみましょう。
■ イスラム教が国教となっているアラブ首長国連邦の一都市、世界の富豪が集まるドバイでamazonからプラチナ万年筆#3776シャルトルブルーのお買い物をしましょう。
■ 日本で「シャルトルブルー」として売り出したんですが、フランス語、ヘブライ語、アラビア語とも、色の表示に変更があった、ということでしょうか。変更を加えたのはメーカー自ら? だとしたら、なぜネーミングと商品イメージを貫こうとしない? それとも世界各地の現地のリテーラーたちがあえて変更? "こんなネーミングで売れるわけないだろう"との配慮? いずれにしても、日本でしか使えないようなイメージ商法なんでしょうか。
■ 所有していて、ネーミングのイメージの美しさや満足感よりも、気恥ずかしさ哀しさがチョっとだけ勝るような気が、そこはかとなく、漂うんです。
■ 身の周りの商品で、もっとも奇抜なネーミングは、医薬品です。その破壊力で他を圧倒しています。
「飲めばじきに(まもなく)治る」→"ジキニン"、「ス~っと治る」→"ストナ"、「脳(頭痛)を鎮める」→"ノーシン"、「風邪(Kaze)に逆らいスペルを逆読みして」→"イーザック"、「後が楽になるようまず飲もう」→"コーラック"、「去らせる、鈍痛を」→"サリドン"、「よく出る(ナニが?...って、その...)」→"ヨーデル"、「サラリと出る」→"サラリン"、「Through Ben」→"ソルベン"...
■ あいた口がふさがりません...
■ 莫大なカネを投入してデキた製品がこの名前なのか...。製薬会社と言えば、最も知能が優れた人たちの集団の一角...の、その感性って...、場末の町工場のおっさんが作った怪しい発明品みたいなブッ飛んだセンスなんですねぇ。やはり一般人とははるか遠い隔たりを感じます。
■ ところで、万年筆を製造する日本の三大メーカーは、パイロット、セーラー、プラチナでしょうか。前2者は、"水先案内人"と"水兵"なんですネ。
■ 両者とも、創業時の社名命名には興味深い由来がありますので、医薬品名ほど消費者をナメ切った 軽薄な 軽やかな命名ではないのですが、その製品のネーミングセンスは、なかなかのものがありそうです。
■ うち、比較的まともなパイロットは、さすが、基本的にわかりやすいネーミングなんですが...。
■ 社を象徴する代表的な高級ラインが、"カスタム74", "カスタム742", "カスタム743", "カスタム845", "カスタムUrushi"で、いずれもペン先には金(gold)を用いています。
■ 語の一般的な意味で、"カスタムcustom"という単語は、"特別あつらえの", "オーダーメイドの"という意味ですから、工業製品にあっては、"大量生産"とは対義語です。
■ さて、この会社は、万年筆メーカーとしては日本では最大、世界でも有数です。ゆえに、もちろん"カスタム"シリーズは、オーダーメイド品ではなく、大量生産品です。
■ 「あなたのためだけに特別におつくりしました」と称して差し出された大量生産品...。
■ ただ、ペン種(ペン先の種類)が多く、「使いたい人ごとに個別にあつらえている」とは言えなくても、消費者の要望を取り入れた上で、高性能な製品を比較的求めやすい価格で大量生産している点、尊敬しています。パイロットのファンであるゆえんです。(でも"カスタム"はやっぱりさすがに違和感...)
■ "74"とは、会社創立74周年を機にフルモデルチェンジした製品。
■ "742"は74周年時に2万円で、"743"は同じく3万円で売り出したものです。ちなみに"74"は1万円、その後に発売された"845"は5万円でした。
■ この価格は、つい昨年(2024年=創業106年)まで長く続いたのですが、現在(2025年6月)、例えば"カスタム845"は110,000円(税込)です。パイロットを責めるわけにはいかないでしょう。寒い国の領土欲に満ちた独裁者が乗り出した戦争と、かつては民主主義を誇っていた国の金銭欲に駆られた新独裁者が関税というインネンをつけて世界中を恐喝しているせいで、"暴騰"、を越えて、"沸騰"している純金相場のおかげです。
■ 「インフレ」「購買力平価」「世界情勢の変動」という現象を知らないかつての平和な大企業在住の方によるネーミングだったのかもしれません。
■ "カスタム743"を私なりに翻訳すると、"大量生産74年型3万円版(ただし価格は44,000円)"...。製品名としてはすばらしくわかりやすくなりました!...え?、とてもじゃないが買いたい気持ちにさせる名前じゃないだろうって?...やはり"ヨーデル","ソルベン"並みの、心をわしづかみにする破壊力が必要ですよね。
「...って、まさか、また、ド・ケルヴァン(狭窄性腱鞘炎)とか、ばね指(靱帯性腱鞘炎)とかのこと?」
「うん...(泣)」
「今度は、何に書きまくったのさ?」
「古い有料の『地域電話帳』。捨てようと思ったら、万年筆にはすばらしく紙質が良くて、ついそれ1冊使っちゃって...」
「おばかだなぁ...また手術しなきゃだめになっちゃうよ!わかってたんでしょ!万年筆だなんて、仕事でもまともな社会生活でも、何の必要でもないんでしょ?」
「う、うん...。万年筆は、今どきもう実用には使えないし...。」
「ボールペンや鉛筆はまだ実用品だけど、キミって他の筆記具も使ってるんでしょ、このパソコンの時代に。それって、まるっきりただのお遊びなんでしょ? 」
「う...。い、いやっ、つけペンなら、お役所や税理士さんに出す文書やハガキや手紙には、ちゃんと実用...」
「いいから、しばらくおとなしく手を引っ込めて本でも読んでなさい!」
「はぁい...。でも、昨日で英単語集3周目を終えてワカったこともあったよ! 今使っているパイロットの顔料万年筆インク『強色』さ、英文25文ずつ毎日書いていたら、4,5日で1回インクを1cc補給するけど、こないだから鉛筆(Hi-Uni 10B)をヤメて(1/15ご参照)、万年筆だけで書いていたら、25文×4日で1本使い切ってたのが、1日に100文書いたら、ぴったりカートリッジを1本ちょうど使い切るから、つまりこういうことだよ (cf. 1/15)↓;
...っていうことだよ。『強色』は、太字で使う際のインクだけの値段だけど、コストパフォーマンスは、あれだけ寿命が短いとボヤいた太字ボールペン(2023/12/14)にすら及ばないんだね。しかも何万円もする万年筆本体は含まないのにね。これじゃぁ実用のためには使い続けられないね。趣味やお遊びなら...、う~ん、だったら、Hi-Uni 10Bの方が楽しいかなぁ。でもたまには万年筆でのびのびとさぁ...」
「...ふう、ぼくにも今つくづくワカったことがあるよ。」
「え? 何がワカったの?」
「キミにつける薬は、ないってこと...」
■ 使ったのは、2023年11月1日の新品開封から2024年1月14日まで。
■ 11/1-11/21の21日間、12/1-12/21の21日間、1/1-1/14の14日間、毎日英文を50文ずつ書きました(1/13&1/14のみ100文)。毎日1時間足らず。この間の合計で2,900文、単語数にして40,880語です。6本合計の値ですので、1本あたりにすると、483文、6,813語です。
■ 1か月前の2023/12/14の記事に書いた通り、7月から9月まで、同様に使った 三菱鉛筆 Hi-Uni 「2B」は、同じく1本あたり、1,100文、17,380語でした。
■ また、従来型高粘度油性ボールペンのパイロット レックスグリップ1.6mm(極太)は、360文、5,700語で1本を使い切りました。通常の、0.5mmや0.7mmの細字なら、もっと長寿だと思います(が、「欧米文を書く」場合には個人的に好みではありません)。
■ いずれも、同じ単語集を使っています。
■ 以上の「1本あたり書ける英単語数」の値を可視化すると;
■ 鉛筆の芯濃度「10B」は、特殊な体験でした。以下に感想を;
■ 良い点として、
1) 「軸を寝かせて(←ボールペンにはムリ)」「どんな粗悪な紙でも(←万年筆にはムリ)」「力を入れずに弱い筆圧で(←鉛筆HBにはムリ)」という条件(🔗2023/6/26ご参照)を、6月のあのときに考えて予想した通り、まさにピンポイントでドンピシャと合いました。一種の理想の筆記具です。
2) 濃く、速く、筆跡も筆圧も文字サイズもたいへんコントロールしやすく、紙の上を舞うような軽やかな書き味です。
■ 劣った点として;
1) 芯が極端に柔らかいです。使い始める前にまず、電動や手動回転式の鉛筆削り機では、芯が、回すそばから粉々に崩壊して、永遠に削れません。ポケットシャープナーかナイフだけでしか削れません。
2) ほんの少しの筆圧で、いや、紙に少し触れただけで、芯が、「折れる」のではなく「砕ける・崩壊する」。文字を書き続けるには、ちょっと熟練の必要があります。そもそも「10B」は、「画材」であって「筆記具ではない」とわかる瞬間です。
3) 書き始めると、一瞬で芯が減ります。1文(16単語)ほど書くと、もう先端が丸いです。削りたいです。私は、後半は、3文を書くごとに、別な鉛筆を使いました。
■ 三菱鉛筆 Hi-Uni 10Bの6本を使った2か月半の、「良い点」と「劣った点」をまとめると;
■ 削っていった鉛筆の後半は、手で持てないほど短いので、ステッドラーの補助軸を使いました(🔗2023/9/26ご参照)が、3文を書くごとに、つまり3分おきに補助軸を付け替えます。この補助軸の使い心地もまた夢のようにすばらしく、自重だけで筆圧ゼロで書き進み、私の手は紙に筆記している感覚がなく、宙を舞っている錯覚に陥ります。また、6本を20分程度で使い切るので、毎日1時間弱の間、6本まとめて削るタイミングが3回程度必要でした。ただ、削るのは、シャープナーを1回転させるだけで、1秒で、薄くシャープな削りカスがシュっと舞い上がって、実に快感です(🔗2023/12/30ご参照)。「道具を使っている」感じを堪能しました。
■つまり、自宅以外では使えないほど手間なのは明らか。「10Bの芯」「ステッドラーの補助軸」「自分で砥石を使って猛烈にシャープに刃を砥いだポケットシャープナー」と、極度にこだわった道具立て...。真冬の夜明け前の1時間...。現実を離れた世界へと遊離しました。「君もやってごらん」などとは口が裂けても言えないかも...。
■ Hi-Uniの、2Bと10Bを使ったのですが、次は、その中庸を行くことを期待して、6Bを使います。実はもう使い始めています。思った通り、濃く、軽く、それでいて減りは抑えられるようです。三菱鉛筆Hi-Uniと、トンボ鉛筆Monoの両方を試しているところです。違いはあります。が、いずれもとてもよいです、鉛筆の濃度のうちでは、いや、すべての筆記具に勝って!
■ 混合して固着したインク(1/6の画像)に、トップ画像の通り、以下の表組み合わせで、それぞれ溶液を、約5ccずつ、滴下します。滴下の際は、溶液を滴下する都度、シリンジのバレルとニードルを、水道水で水洗いしています。
i) 両端の①(染料+古典)と⑦(染料+顔料)は、いずれも図上部の「液だまり」から全量が流れ去っています。アルカリイオン水でほぼ融溶して排出できたようです。
ii) ②~⑥は、インクが「顔料+古典」という、強固に固着する(凶悪な)組み合わせです。万年筆のペン芯内部でこれが発生することを想定しています。うち、⑥の「水道水のみ」に浸した場合は、上部の液だまりがほとんど融溶していないとわかりました。
iii) ②~⑥のうち、上部の液だまりから、融溶して下に流れ落ちた量が最も多い順に;
③のアルカリイオン水激落ちくん
②の水酸化ナトリウム水溶液
⑤のアタックZero
④のチャーミーMagica
■ この時点における、『目的』に対する結論は、
1) ③の「アルカリイオン水激落ちくん」が効くようです。万年筆界隈でささやかれていた通りでした。
2) ④と⑤の、「台所洗剤」と「洗濯用洗剤」は、じゅうぶんに融溶したとはいえないので、これらを用いて万年筆洗剤の代用とする意味は無いと思いました。
3) 比較対照群とした⑥の水道水は、古典インクの色素は流出したものの、液だまりの固着は融溶せず、洗浄効果は無いと言えます。
■ このまま翌日まで、室温に放置します。
■ 昨日以降放置し、今日、水道水を浸潤させる意味は、「すすぎの有用性」の有無を見たいということです。
■ すると、液だまりがスッキリきれいになったのは、②の水酸化ナトリウム水溶液でした。③と⑦のアルカリイオン水激落ちくんは、顔料粒子がプラスチック容器に固着しているようです。
■ 結論です。
『目的』を達するには、今回使った溶液のうち、「水酸化ナトリウム水溶液」がベスト。次いで、「アルカリイオン水激落ちくん」。
ただし、
1) 水酸化ナトリウム水溶液を用いるのは、取り扱いが日常生活から乖離し、難易度が高い。
2) いずれの溶液を使うとしても、じゅうぶんに水道水ですすぎ洗いをする必要がある。
3) 混合したインクが特定の溶液に比較的効果的に融溶することは今回わかったが、実際に万年筆洗浄に使って効果があるのかどうかは、この実験では必ずしも明確ではない。
■ 今後は、
1) 「万年筆専用洗浄液」がプラチナとパイロットから発売されているので、これを、水酸化ナトリウム水溶液と激落ちくんと比較して確認したいです。
2) 破損しても損害の少ない「カクノ」「プレピー」で、インク固着を再現して、水酸化ナトリウム水溶液と激落ちくんを試してみたいです。
■ 画像左端は「染料+古典」インクを混ぜたもの、画像中央5マスは「顔料+古典」、画像右端は「染料+顔料」です。
■ 左端の「染料+古典」は、流動性を失っていないのですが、「顔料+古典」「染料+顔料」は、水分が蒸発しきって顔料インクの固形粒子のみが粘着しているようすです。
■ これに、画像右の洗剤類を、希釈して滴下し、溶解するのか見てみようかなと思います。
■ さて、初めての金ペン万年筆パイロットのエリートとグランセの2本を買って、自宅に帰ると、クルマを見て、妻が帰宅している他に、娘夫婦が来訪とわかる。娘夫婦には小学生の孫娘がいるが、今日は娘夫婦のみのようすが、車内をさっと見てすぐわかる。孫は部活かピアノのレッスンか...。なごむキャラがいないので、ちょっと緊張感もある...。
■ この婿殿は、ここだけの話だが、私は実はなかなかニガテである...。それは、娘をさらっていった男という、嫁に出す父に一般に潜在する感情論もある。私のようなまあふつうのサラリーマンと違って、こちらが畏まってしまう立派な社会的地位の婿殿というコンプレックスもある。ゴルフもシングル2桁でおクルマも輸入車という悔しさもある。しかしこのぶつかるような感情の外殻にあるのが、彼が、娘によると、万年筆100本だか200本だかの一家言ある男だということだ...。私がもう何年も何度も、万年筆を職場でひけらかす人たちに反発を唱えてきたのも、このことがきっと意識下にあったからだと今では自分を分析できる気がする。もちろん、人柄は穏当で上司から信頼され部下に篤く円満な家庭人である事実の前には、私の劣等感は我ながらハッキリくだらないと認識しているので、口に出したりそぶりに出したりはしない点、十分わきまえている。
■ イマ買った万年筆は、いったんひっそりクルマの中に置いて、自宅に入る。笑顔で挨拶をかわし、一通りのおしゃべりをする。万年筆などというちっぽけな事は忘れ去って、素直にうれしいひとときだ。
■ 「ところで、お義父さん、カクノを試されたんですって?」婿殿は屈託なく聞いてくる...。妻のやつが娘に告げ口し、それが婿殿に伝わったに違いない。とっさに妻を見る。妻はいつものようにあっちを見る。娘は笑う。「わが家では***(彼の娘=私の孫の名前)も透明軸のを使っていますので、『お揃いだ』と喜んでいましたよ。今度もって遊びに来るそうですよ。」...小学生の孫が使いこなしているカクノを私はまるで使う能力がなかった。私は小学生以下か...。けれど、その話を聞いてすなおにうれしい!自分が笑顔でいっぱいになるのが、くやしいけれど、わかる。単純な自分。婿殿の、話題の振り方や持って行き方が実にツボを得たウマさがあって、如才ない男だ...。
「どうでしたか? 次に何かステキな輸入品などお考えとかですか?」
「いやとんでもない。カクノと同じパイロットで私などにはじゅうぶんすぎるくらいだと思っているんですよ。」
「じゃ次の金ペンは、74か742で試してみますか。いやでもお義父さんくらいでしたら、グレードの高い743からスタートでもよいかな。でも同じペン先で、漆の軸になった845は、最初に手にしたら一生満足できそうですよ。」
次々と勧めてくれる。あの店員さんみたいだ。「そ、その番号って、何だか、よくわからないんだ。」
「そういう万年筆とか輸入車とか高そうなモノって、名前がホントに番号ばっかりで、マニアックで、ついていけないわよね。...。」と娘がやや私の側に割って入る。まぁその通り、と、私のみならず、婿殿も頷く。
「たしかにそうですよね。パイロットの製品は、基本ラインナップのグレードのヒエラルキーがこんな感じなんですよ。」
「なるほど。なんでこんな番号なんだろう。1番、2番っていう名前じゃないんだね。」
「たとえば『742』は、パイロット社創設74周年に発売した2万円バージョンという意味らしいです。」
「創立年ごとに新製品があるのかい。だったら膨大になるじゃないか。」
「現在の基本ラインナップは、『74シリーズ』だけで、他には、8**、9**の番号のものが2,3あるだけです。この基本から、たくさんのバリエーションが派生しているようですよ。それは主に、ペン先の材質や筆記線の太さじゃなくて、軸の装飾です。」
「なるほど、エボナイト製の軸や、蒔絵の装飾軸がたくさん出ているらしいからね。...セーラーやプラチナはどうなんだろう。」
「セーラーは、基本ラインナップが、葉巻をつぶしたような楕円形をしたバランス型『プロフィット』の4階層と、それにぴったり並列して、葉巻の両端をスッパリ切ったみたいなベスト型『プロフェッショナルギア』の2本立てです。基本ラインナップはパイロットより安くて21金を使っていてお得なんですが、軸の装飾が華美な高額高級品がとても多いです。」
「プラチナは、基本的に、チョイ高めが『プレジデント』、一般向けが『センチュリー』の上下2種だけです。これらのペン先首軸を使って、軸の高級バリエーションがとても多く出ています。」
「そうだったのか。カタログなどを一見したたけでは、私たち門外漢には、目がくらんでどれを選べばいいかわからないけど、基本の構造を縦に並べて基準にすると、少しわかりやすいね。あとは、軸に凝らした趣向が、自分の今の好みや財布の状況に合うかということなんだね。」
「たしかに、数字によるネーミングはわかりづらいかもしれませんね。考えてみると、プラチナの『プレジデント』『センチュリー』は、数字じゃないだけに、わかりやすいな。でもお義父さんなら『プレジデント』を手にしても違和感はないけれど、自分はまだまだ全く『プレジデント』な立場じゃないから、そんなことを考え始めると、持つのはちょっと気が引けたりするネーミングです、アハハ。」
「言われてみれば、『センチュリー・シャルトルブルー』の青い透明プラスチック製のペンに、『フランスのカトリック教会の世界遺産シャルトル大聖堂のステンドグラスのブルーです』って言われても、すごい大げさにも聞こえるね。」と私も気づいて笑う。
「プロテスタントの人とか牧師さんたちは、持つのに気が引けちゃいそうだわね。親戚のAさん(お寺の住職)だと、欲しくなってもネーミングを見て買うのヤメちゃうかもね!?」と、娘も、マニアックな話題ではないと気づいて、気楽な冗談を盛り上げる。
「じゃ、『ブルゴーニュ』っていうこの赤い色の方は、ボクら普通の日本人ならちょっとおしゃれな雰囲気を感じるけど、かえって職業的ソムリエの人や、ブルゴーニュワインもボルドーワインもふだんからなじんでいるワインにウルサい人だったら、むしろ買う気が萎えるよね、このペン。」と、ワインにうるさそうな婿殿をチラっと見て、チョっと茶目っ気を出して言ってみる。
情報通の婿殿はサっとかわして「そういえば、この『プラチナ・センチュリー・ブルゴーニュ』が出たとき、ある自称『万年筆マニア』の個人の女性が、出てすぐ買って、自分のウェブサイトで速攻で自慢げに紹介して, “この赤い色は、深~い赤で、レッドというよりボルドーな色をしています” とパッケージを開けた第一印象を述べていました。」
「へぇ、『プラチナ・ブルゴーニュ』の色は『ボルドー』なのか!?」と皆くつろいで笑う。
「そんな、シャルトルだのブルゴーニュだの、あなたたちみたいな深い勘ぐりなんか誰もしないわよ。色がキレイなのに惹かれた日本人に、ついでにそれにチラっと日本人ならそそられるような西洋風なシャレたイメージを乗っけて売ろうっていう、メーカーの売り方戦略なんでしょ」と、妻までおもしろがって評論家として加わる。
「じゃぁさ、次の製品は、金色の軸で『トーダイジ・ゴールド』『ダイブツ・ピカピカ』とか、カクノの透明軸を使って『セイシュ大吟醸・トランスペアレント』とか、おもしろいねぇ、あはは...」と私が図に乗って放言すると、娘の「ダサ...」のつぶやきを合図に、いっきに盛り下がってしまった...。孫だったらウケてくれたのに...。