■ 廻堰大溜池の堤防直下の、とある場所。数十年来、ただの散歩するヒトとして、その変遷を見るともなく眺めてきました。
■ 水田として開墾されたのでしょうが、すっかり放棄され原野化した葦野原。午後は高い堤防の影となり、泥濘地でした。
■ 十数年前から、家庭菜園的に手入れされ、農家の片手間みたいな雑多な野菜畑となったその一部に、ごく小さなブドウ棚(簡易な垣根式)。それが、この1,2年、少しずつ面積を増していました。
■ 今年に入って、見かけて驚いたことに、雑多な野菜畑は、全廃し、客土され、ブドウに統一されたようす。見るからに商用ブドウ畑として拡張し、徹底的にキレイに仕立てられていたのでした。
■ しかも、この、誘引作業の丁寧さと言ったら...。近づいて、見て、ドキリ(トップ画像)。
■ そうとうな強い意志を感じます。
■ 私は農家でも何でもないナニもわかっちゃいない素人の傍観者ですが、大いに惹かれ、意識して拝見するようになりました。
■ ずっと不思議に思い続けていることに、これ、長梢剪定(Guyot Double型)ですが、垣根仕立のようでチョイ変形型...。"ワイヤを利用した棚仕立"ではもちろんない。
■ 実は、ここ北津軽郡鶴田町では、生食用の"スチューベン種"が盛んで、GI(地理的表示保護制度)産品です。
■ 近隣のブドウ畑をあちこち眺めていると、一般にその仕立ては、垣根仕立をベースにしているのですが、標準的なヨーロッパ(や米・南米・豪)の垣根仕立みたいに低くないです。
■ 多く見かける高さとしては、ヒトの胸から首の高さに張ったワイヤに長梢を誘引しています。が、房は、固定された長梢を挟んでさらに斜め上にY字型に誘引されています。
■ 山梨のような、頭のずっと上に棚仕立、葉がフルーツゾーンの上あって夏の強い日射を防ぐような仕立じゃないんですね。
■ この鶴田町の独特な仕立てにより、雪による棚の崩壊がなく、棚より低コストで、冬は幹が雪に埋まり、その上の枝が積雪の上に出て折損を防いでいる状態で越冬するようです。
■ これらの工夫は、世界のどの地方にもない知恵のような気がします。
■ 今ここの農園のさらに独特な点は、その誘引の高さが、顔から頭の位置くらいと、やや高い点です。
■ おそらく、地形的特徴、つまり、堤防直下の"日陰", "湿地"という要因から、房を抜ける風の通りを優先したのかなと推理中。
■ 今度、ここの畑の人に質問してみたいです...ヘンなヤツ、怪しいヤツでしょうか、そんなことしたらやはり...。
■ 津軽地方は、ブドウ産地としては、...いつも心のなかでひとり思うのですが...、日本一の好条件なんじゃないでしょうか。
■ 本州の他の全ての地域は、開花期(Floraison)にかならず梅雨に遭い、色づき(Veraison)頃から最も肝心の収穫(Vendange)前の時期に高確率で台風に遭い、その間に30℃を連日軽く超える湿った夏。気温と降水量が、ブドウにまるで向いてないですよ。北海道は、年平均気温が低すぎ、春秋に霜が降ります。
■ それらを、熱意・創意工夫・技術でクリアして、みずみずしい生食用ブドウをアジア各国に輸出している点、日本のブドウ栽培は、涙ぐましいものがあります。
■ 津軽地方には、梅雨は無いと言ってよいし、台風に直撃される惨事は、無いとは言えないですが、中部地方や東北地方の南三県よりは、確率的に稀です。
■ 津軽地方の果樹栽培を、何の利害関係もない無力な私の、こころの中でだけのちっぽけな話ですが、大いに応援しています。