2023/10/31

■ まなぶ - 中学生が理解する経済原理 - 青森県立高校入試 2011(H23) - 社会第6問 (公民)


私の地元の県立高校の入試問題を読んで楽しんでみます。なお、私は中高生のいる家族でもなく学校関係者や業界関係者でもありません。末端の庶民が外野席から、教育上あまりよろしくない背景を、お気楽に連想して、眺めてみます。

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下の文章は、生徒が職場訪問で学んだことを発表したものの一部である。次の(1)~(6)に答えなさい。(13点)

ひろしくん:私は青果市場を訪問しました。青果市場では、せりが行われていて、需要量と供給量の関係で価格が決定されることを知りました。

みかさん:私はおもちゃ工場を訪問しました。消費者が製品の欠陥によってけがなどをしないように、とても気をつかっているということでした。

ゆみさん:私は税務署を訪問しました。租税には所得税などさまざまな種類があり、景気によって税収が左右されることなどを教えていただきました。また、国民の義務として納税は大切であるということも学びました。

ただしくん:私は銀行を訪問しました。お正月にもらったお年玉を、私は銀行に預けていますが、今回の訪問で、預けられたお金がいろいろなことに使われていることがわかりました。

みなさん、古典的近代経済理論と理想的民主主義社会が機能していることを信じた、高度経済成長期の中学生のような、素直で希望に満ちた生徒さんですね。いっぽう、その半世紀後の現在の中学生のメンタリティの現実に合うように、少し補ってみましょう;

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下の文章は、生徒が職場訪問で学んだことを発表したものの一部である。

せましくん:私は青果市場を訪問しました。青果市場では、せりが行われていて、需要量と供給量の関係で価格が決定されることを教えてもらいました。取引自体は確かに、神の見えざる手によって均衡価格が予定調和的に決定される古典的市場理論の理想を目の当たりにした気も少ししましたが、しかし、当の青果市場のような、わが国における地方卸売市場の経営者の9割以上は、閉鎖的同族会社であり、特定家族が世襲的に利益を独占している現実もあることから、理想的側面だけを中学生に見せることには、疑問を感じました。

かみさん:私はおもちゃ工場を訪問しました。消費者が製品の欠陥によってけがなどをしないように、とても気をつかっているということでした。具体的には、取扱説明書と警告文言など念入りに作って添付しないと、まぬけな消費者と強欲な弁護士に製造物責任訴訟を起こされて巨額の損害賠償を請求されるアメリカのような社会制度になりつつあると言いたかったのだと意を酌んであげました。が、私が先日買ったi-Phoneには説明書など一枚も入っていませんでした。使い方は自分でググれ、当社ではあなたの使用により日本国内で生じたいかなる損害についてもいっさいの責任を負わないものとする、という対照的な現実に気づきました。弱小な国内製造業者は、法制や税制でがんじがらめにされて豊かなお役人やわがままな消費者の食い物にされるけれど、GAFAなどの巨大企業なら、ショボい国の法的責任などすべて食い破って楽々逃げ切るヒエラルキカルなグローバル社会であることも実感しました。

みゆさん:私は国民から税金を取り立てる税務署を訪問しました。租税立法には、累進課税の美しい原則など踏みにじる逆進的な効果満載の消費税などさまざまなテクニックがあることを想起しました。また、国民の義務として納税は大切だと強調していたようでした。お父さんに、今日は税務署に職場訪問に行ってそう学んだよと言ったら、お父さんは、取られてムダ遣いされる国民の身にもなってもらいたいな、と、ポツリとつぶやいていました。しぼり取られる一方の庶民の哀愁を実感した日でした。

わろし君:私は銀行を訪問しました。お年玉にもらった莫大な金額を、私は銀行に預けていますが、今回の訪問で、銀行は、預金者の所有にかかる金銭を断りもなくいろいろなことに使っておきながら、その利益は銀行が独占していることが判明しました。銀行にお金を預けたら、銀行では大事に保管してくれているものだと、小学校以来信じていたのですが、信頼が崩壊し、またひとつ、おとなの事情を垣間見る思いのした一日でした。

2023/10/30

■ あるく - 廻堰大溜池


いつもの、りんご畑に囲まれた廻堰大ため池の周回道路。歩くとさすがにもうひんやりとしますが、週明けの今日は良いお天気です。

 早生種は、もうあらかた出荷が終わり、そろそろ残るのは、主力品種の「ふじ」だけになってきました。

 今年は、収穫間近に大雨や台風に見舞われることもなく、きっと大いに良い出来でしょう。農家の皆さんの、春先からの努力が報われますように!

2023/10/29

■ まなぶ - インクの使用量を知る




鉛筆や油性ボールペンやゲルインクボールペンは、「どのくらい使えばどのくらい減るのか」について、長年漠然とした疑問だったのが、この6月以来、けっこう執拗に(?)ここに書いてきました。

 その記述のしかたは、なるべく客観性をもてるようにしました。ある程度は、私以外の人の目安にもなったでしょう...などというとおこがましい限りですが、私が想定する「私以外の人」とは、「数か月後の自分」「数年後の自分」という、第三者です。その第三者が私の今年の記述を見て、「よくわからんな、こりゃ」と思ったらアウトです。「メモの取り方」と同じ発想です。

『オレのこの鉛筆は小学校以来ずっと使っている』『ワタシが日記を毎日書いたら、サラサは1年もった』などの場合は、本人にはワカるのでしょうが、計量できる客観的性がないのであまり参考にならない気がします。ので、ここでは、7/1の鉛筆実験(?)以来、客観的に、筆記量・期間など、なるべく多くの数値(筆記具・期間・英単語数・文字サイズなど)を記述してきたつもりです。

 なお、つまらない話ですが、私が使った英単語集は、1語あたりがちょっと長い気がします。え、そんなことよりオマエのブログ記事が長すぎるって...? ...(;^^A

 アメリカの言語学者Peter Norvigが、Google Books Ngramsにある約97,565の異なる単語(文字のみで23GB相当)を分析したところ、アメリカ語で1つの単語に使われる平均的な文字数は4.79文字だとしています。 (https://norvig.com/mayzner.html) 

 そこで、私も、7月から使ったあの単語集の例文について、PCにテキストを全文入力していますので、文字と単語をカウントして検証してみたら、入力数は、スペースを除いてアルファベット161,642文字で、単語数は31,138語ですので、1語あたり平均5.2文字となります。やっぱりチョイ長いかな...。

 鉛筆やボールペンは、誰でも同一製品を容易に入手できる点で、減り具合の記述が、ある程度検証可能な客観性を保てるけど、同時進行でずっと考えていたのが、万年筆インクの減り具合です。開封して何年も減らない気がするものもあれば、スグなくなっちゃった、と実感するものもあります。

 …ならば、け、計量してみましょう(`ω´;  ...強引なヤツだなぁ...┐(;・ω・`)┌

 「万年筆インクの減り具合」の計量が困難な特殊事情は、何といっても、万年筆本体のインク吐出量は千差万別であることです。太字細字の違いはもちろん、同じ「太字」でもメーカーによるし、同じメーカーの「太字」でも、製品によるし、同じ製品でも、個体によりペン芯とペン先の密着度やスリットの開き具合で、まるっきり違うでしょう。

 でも、あくまで「自分が使う目安」が主目的で、学会で発表し検証に耐える客観性などはもちろん、あなたのお役に立つことすらあきらめさえすれば、一定の追跡再現可能なルールを作って記述しておけば、あとで検証できるかも...。しょせん自己満足なひとりごとのウェブログですよ。

 そこで、段取りを構想します;

1). インクにつき、一般に入手可能な小瓶容量30ml(30cc)を使い切るまでの、英単語数を知る。

2). 万年筆は、計測中は、当然、同じ物を使う。

3). 毎日、ほぼ同じ分量を書くことによって、インクを消費する。

 詳細を検討します;

1). インクは、手持ちのどれでもいいが、1種類、「プラチナ万年筆製カーボンブラック(水性顔料)」とハッキリ決めましょう。30ccを全量ピペットで正確に測り取って別容器に移します。

これを、シリンジでコンバータかカートリッジに供給することにします。正確性の観点から必要なはずの、使用する液体(インク)での共洗い処理は、30mlの吸入時にのみ実施し、毎回の万年筆への補給の際のシリンジには、実施しません。その分、歩留まりは悪く不正確だけど、日常性を考慮すれば、じゅうぶん自分の今後の参考になるでしょう。

2). 万年筆は、手持ちの「パイロット万年筆製カスタム Custom 742 S (Signature)」を、2本同時に使うことにします。

1本だけだと、その1本の個性が、極端にインク吐出量が多いまたは少ない個体だったりするリスクを平均化する意図です(といっても、手持ちの2本の742 Sは、2本とも、吐出量の多寡は感覚的には区別できないです)。

このSignatureというペン種は「縦の線は極太字、横の線は中字 (パイロット万年筆のウェブサイト)」だそうですが、SU(Stub)ほど極端に縦横は変わりません。インク吐出量は多い方で、「太字(Broad)」と同じか少し多いかもしれませんが、「極太字(Broad-Broad)」ほど多くはないです。

なお、パイロット社製万年筆のすべてのペン種は現在16種類ありますが、私は、すべてのペン種を使ったことがあります(「キミは万年筆屋さんなのか」と詰め寄りたくなりそう...)。さらに付け加えると、同じベーシックラインナップのカスタムシリーズ内であっても、74と742と743と912では、同じペン種でも、弾力性など書き味が明らかに違います。(たとえば、甚だしく書き味が違うのは、3グレードに渡る同じペン種「FA(フォルカン)」)  

さらにまた、プレミアムなラインナップのCustom Urushiの30号ペン先は全く異次元の書き味です。

その経験から言えるのは、この742 Signatureのペンポイントの研ぎが、欧米文筆記体を、もっとも滑らかに書けます。というわけで、個人的な好みですし、今後も多用するでしょう。

3). 毎日、英単語集の例文を50文、英単語にして約750語 を筆記体で書き進みます。

使う英単語集は、7月-9月に使ったものと全く同じです(6/28)。これだけ繰り返して書くんだから、きっとこの悪いアタマでも少しは英単語を覚えるでしょう。

 三菱鉛筆ハイユニ (Hi-Uni) 10Bと、同時進行で、11/1から計量を開始します(^^w…って、と、途中で挫折したら...?  笑ってごまかそうかという魂胆です。

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 追;インク変更。

1)’. インクは、「パイロット;強色(つわいろ);黒 30ml」「同;青黒(Blue Black);30ml」(水性顔料)に変更となりました。

 当初案の「30ccを正確に測り取って別容器に」の方法ですが、手持ちのホールピペットを使いましたら、日頃慣れていない素人のどんくささゆえの哀しさで、うっかりピペットの先端を金属にあててしまい、敢え無く欠損しました。他に手持ちの駒込ピペット10mlを複数回では正確性に欠けるか、ホールピペットとピペッタを買い直せば1,000円~2,000円くらいか、でももうホールピペットなんか日常使わないんじゃなかろうか、買い直すんだったら、いっそその2,000円で、新品のインク30mlを買おうかな、と思いました。

 画像は、昨日購入してさっき到着した新品のパイロット製インキです。パイロット水性染料なら余裕で2本買えますが、興味があって使ったことがなかったパイロット顔料を購入しました。なお「インキ」はパイロット社の一貫した表現で、一般には「インク」と表記します。

 いつもこのウェブログの下書きは、前日か前々日に書いているんですが、昨日10/28明け方に上の本文を書いて、昨日の朝のうちにピペットを割り、すぐインクを発注したら、さっき到着したというわけです。11/1の開始に間に合ってよかった!日本のすばらしい物流システムに感謝。

 その新品のインク瓶の内容量がぴったり30.0mlあるのかについては、やはり検証のしようがないので、そのまま信じることにして実行します。また、30mlを2本同時に使ってみますので、計60mlで確かめたいと思います。え、なんで...って? 1枚の紙に1行とばしで書く奇癖のせいです(7/3)。

 2本の同じ製品の万年筆を用いて、新品のインク瓶60mlを使い切るのは、予想としては、半年後の来年春頃でしょうか。無事にたどり着けるかな...。

2023/10/28

■ まなぶ - 『うるしの話』松田権六 (岩波文庫)


漆器の話を10/22に書いたのは、岩波文庫で、松田権六『うるしの話』と再会したからです。

 この本は、私が大学の頃の80年代に読んだのですが、そのときには、旧仮名遣いで縦長判の岩波新書だった気がします。岩波文庫版になって、しかも表記が現代仮名遣いに直されて、たいへん読みやすくなっていました。

 漆器独自の存在感に気づいたのが、10/22に書いたように、この大学生の頃。チョっと調べてみたい気になったのですが、書店の雑誌の特集などでは、目が飛び出るような価格の高級漆器を、きれいな写真と「使っている有名人」の笑顔で勧めてくれるだけで、漆器の写真を、陶磁器や高級時計にすり替えてもこれらの雑誌はそのまま売れそうで、その存在価値が不明です...なのはともかく、図書館で調べようと思いました。ですが、専門的なモノばかりでした。そのとき、表題のタイトルどおり、すっきりわかりやすいこの書を手に取ったわけでした。

 そのときに興味があったのは、あの独自の触感というか「指ざわり」の秘密、漆の木、漆液、漆器用の塗料になるまで、といった、素材の素性を知りたかったのでした。

 この本は、話がそこ(樹液)から始まります。その後、蒔絵・螺鈿・平文などの製作の話。いずれも、たったこれだけの本なのに、非常に詳しくまたわかりやすいです。本の最後3分の1くらいの分量で、これは予想外でしたが、松田権六が、少年時代から今日に至るまで歩んできた人生を書いています。

 石川の農家の三男が、7歳から漆職人に仕えて、人間国宝に叙せられる以前の時点までの自叙伝です。私としては、漆の技術的な面に興味があって手に取った本だったことから、最初は興味がなかったのですが、軽妙な語り口でどんどん引き込まれます。ただ、その内容は、つまり歩んだ人生とその蘊蓄は、さすがに、ずっしり重いです。

 さて、先日、岩波文庫で再会して手に取り、また楽しみに読み始めました。全部読んだはずですが記憶から欠落していたのが、『蒔絵万年筆の創始とその影響』という一節でした。初めて読んだ大学生の頃は、安い万年筆は割と頻繁に使っていたものの、「蒔絵万年筆」だなんて何の興味もなかったので、読んだ直後にもう記憶から脱落したのでしょう。いま読むと、実におもしろいです。

  並木製作所(今のパイロット万年筆)に就職する大正時代の終わり頃の話が、語り口の楽しさについ笑ってしまうのですが、深く心を打たれます。

■ パイロット創業者の並木良輔と初めて出会った話です。この時点で松田は、芸大の卒業制作が教授全員の合同評価にて前代未聞の「100点満点」評価で政府買い上げ品(現在も芸大収蔵品)となるなど、受賞歴を重ねていた上、当時大日本帝国が事実上植民地支配していた朝鮮半島の楽浪郡遺跡の大規模修復作業に深くかかわった実績を重ねていますが、本人によると「無職の貧乏暮らし」。日本の伝統芸能たる漆を寺社建築のみならず、家具や室内装飾にも応用することに深く関心を抱いていた頃、万年筆や喫煙用パイプなど外国向けの新しい漆芸に魅力を感じます;

『とにかく、いっぺんその会社に行ってみようと顔を出したのが、ちょうど、会社の大塚新工場の起工式の日だった。出席すると、常務取締役の並木良輔という人が従業員や会社関係の人たちを前にこんな大演説を始めた。「きょうは、専門家の話によると、1年中で一番悪い月難と、日難の日で、しかもまた、午後2時というただいまの時刻は、今日中でもいちばん不吉な時間だという。そのいちばん悪い時刻を見計らい諸君とともに起工式を挙げる以上、今後、この工場ではろくなことが起きないものと決意されたい。もし、いいことが少しでも起きたら例外として感謝し、悪いことが起きたらあたりまえで、禍いをかならず福に転じてみせるという気構えに立っていただきたい」云々。この並木良輔の演説には大いに共感を覚え、おもしろそうな会社と思って入社を決意したのだった。...』

■ 漆塗の万年筆の歴史も、パイロット万年筆の歴史も、このような意志ある人々によってつくられたのですね。エンドユーザーのさらに末端の私ですが、漆製ももちろんプラスチック軸でも、いっそう感謝して使うことにします。

■ 漆の小さな実が、今はちょうど葉が落ちて赤みがかっている頃でしょうか。見に行きたいなという気になりました。

2023/10/27

■ まなぶ - 鉛筆を使って - ハイユニ(Hi-Uni) 10Bで


三菱鉛筆ハイユニ(Hi-Uni)の2Bを使う話を、小学生みたいにワクワクして6月以来書いていますが、9/26にひとまずひと区切りの満足を得ました。

 ハイユニの特性として、「滑らか」という長所も実感しました。この点をもう少し体験してみたくて、その後に10Bを購入したことも、9/26に書きました。

 未曽有の経験にまた興奮(やっぱりおおげさです...)。

 Hi-Uni 2Bと比べます。と、こう感じました;

 長所... いっそう濃く滑らか。鉛筆という製品における、濃さと滑らかさのピークであり限界でしょうか。

 短所... 一瞬にして筆跡が太くなり、減る。それも、「鉛筆」とは思えないような、経験のない極端な速さで、あたかも、少しこすったら溶けてなくなる...とでも言いたい感触です。

 雑感...パステルやチョークとクレヨンの中間のような書き味...といったら「サクラクレパス」ですが、それともまた違います。書き進む際の触感としては、珍妙なたとえですが、栗やさつまいもを蒸して油分を加えて固めた感じで、書くにつれて、そのほろほろした粒子が紙面に黒々と取り残されていく感触です。少しでも力を入れるとほろほろと崩れるようで、強く一押しするだけで芯は根もとまでつぶれてしまいそうです。なるべく力を抜けるだけ抜いて、紙面をそっと滑らせたいです。黒々としているので、つねにシャープな先端を使いたい欲求、と同時にしかし、一瞬にして減るので、もどかしい...その繊細さやはかなさが、大いに魅力的です。

 本来、この「10B」クラスになると、「筆記具」というよりむしろ「画材」です。連続して書き進むには、猛烈に頻繁に鉛筆を削らなくてはだめだろうと予想します。

 筆跡の濃さ太さは、画像の通り。上の緑軸は2Bで、下がHi-Uni 10Bです。画像一番下の印字は、MS-Word上で編集した “Times New Roman”体の8ポイント活字です。

 また、来月11/1から、英単語を筆記体で書き進んでみたいと思います。7/1から3か月間続けた6/30のルールと同じ要領です。

 が、今回は、毎日「100文≒約1,500語」ではなく、その半分の、毎日「50文≒約750語」でいこうかな。

■ また新品の6本を同時に開始します。Hi-Uni 2Bに比べて、どのくらい書けるものでしょうか。

2023/10/26

■ なおす - クラシックシェービング - 今日


クラシックシェービングについては、5/1に、また、シェービングソープの自作については、6/29 & 7/8に、詳細を書いたとおりです。毎週備忘録的に。

 ホルダはいつもの中国製「DS-Cosme - DS.D8. Scalloped-Destroyer」

ブレードは中国(香港)製「克労徳(Cloud) Ultra-Sharp」

シェービングソープはイタリアの定番「チェッラ 赤缶 - アーモンドオイル配合」

シェービングブラシは中国製「Yaqi -  Synthetic;Taxido(人工毛) 55mm - Heavy Metale Handle」

 ホルダは先週10/18に激賞した通り。

 刃は、香港製ですが、パッケージは、ダントツで世界最高品質の大阪フェザー安全剃刀製「ハイステンレス」を模したようす。ただし価格は10分の1以下です。

 でも、その切れ味は、世界中の他の数多の製品を抜いて、フェザー製品に近く、抜群です。範としたのでしょう。剛性感はフェザーを上回るかも。

 シェービングソープ「チェッラ赤」は、シェービング界隈の方にとっては、毎度おなじみの伝統的定番品です。香りが、アーモンドの香りというわけではないのですが、なぜか日本では「アーモンドフレーバー」みたいな話になっているようです。が、もっと合成香料むき出しのキツい化粧品の香りです。それも今の現実から離れた非日常的な別世界感を醸し出してくれるので、キライではないです。

 ブラシは中国Yaqi製です。この会社は、もとはインドネシアだったか、東南アジアの石けんメーカーが、欧米のシェービング・エンスーのメンズを相手にシェービングソープで一躍進歩を遂げたようです。シェービングブラシも女性用の化粧用ブラシも、この数年で一気にラインナップを拡充しています。シェービングソープといい、シェービングブラシといい、ヨーロッパ製品に比べて、品質は互角以上で、価格は高くても半額以下です。ただ、シェービングソープの香りは好みが分かれそう。3,4年前に、会社側の発送の手違いでトラブルになったことがありましたが、誠実な対応を受けました。

 どの製品も、大阪フェザーを除いては、日本にはまったく存在しない産業で、そのおかげで、かけがえのない、心が和むひとときを分けてもらっていています。それゆえいっそう、先週も書いたのですが、このシェービングの特別なひとときは、自由な貿易があればこそ、またそれは平和な世界があればこそ、成り立っているのだと、しみじみと感じます。「中国製に依存するのは危険だ」などの安全保障論も理解できますが、「あんなヤツはいなくても自分はかまわない」という発想は、憎しみを産みやすいと思います。親子間夫婦間のように、相手がいなければ自分は成立できないのだという相互依存が、むしろ、殺し合わなくて済む人類社会が実現できるんじゃないだろうかと思います。

 最も日常生活から遊離したひとときであるシェービングをしながら、平和の恩恵と国際情勢に思いを馳せるとは...。もっとくつろぎたいものです、そういう世界になってくれ、と思います。

2023/10/25

■ まなぶ - 万年筆を始めた私-2


- 10/21の続き - これまで聞いた複数の方々のステキな体験を合わせて、お一人の方の体験としてまとめています(;^^w


カクノのような安い万年筆はダメだなと思った。クレームをつけに行こうかとも思うが、万年筆の値段からして、クラウンを買い替えるわけじゃないんだし、改めてもっと良いものを買い直そう、と思い、プラスチックごみに。

翌朝、妻が、「今朝プラごみを収集に出そうと思ったら、これを見つけたんだけど...」といって、昨夜捨てたはずのカクノを見せつつ、「万年筆なんか使ってたっけ。真新しいじゃない。ペン先が曲がってもうだめなのね? 箱もカートリッジもいっしょに捨てるの? まだ使ってないじゃない? 他に何か使ってたっけ?」 

意外な伏兵に襲われた気がした。『カートリッジ』だって? それは何だ? ひとまず、...とっさに取り繕って、「つ、使おうと思ったら、お、落としてすぐ踏ん付けてしまったんだ...。」

「あらま、もったいない...けど、これじゃだめね。どなたかからもらったの? 自分で買ったの?」

い、いかん、この尋問にもちこたえることは、経験的に困難だ。あまり作り話をしてもムダだ。「つ、使ってみようと思って買ったんだけど、残念なことをしてしまったんだ。」

...妻の疑惑のまなざし。が、その一瞬の気まずさを払うように彼女は「今はみんなこんなペン先なのよね。私たちの中学のときって、指先の爪みたいな形だったわよね。あの形ってもうないのかな。」

「そ、そうだね。それを思い出して、仕事をやめたのを機に使ってみようかなと思って...。あ、あの形のを、また改めて買い直そうかと思って...。

妻は、「じゃ、カートリッジはまだ使えるから捨てなくてもいいわね。」といって、パッケージの箱を置く。カクノの本体は捨てることにしたようだ。...私がまだ何か隠している風なまなざしを向けているが、この話題はそれで終えることにしたようだ。ふぅ。

言われてみれば、たしかに、中学の頃、同級生らが使っていたのは、あの指先の爪みたいな形のペンだった。私は万年筆など興味がなかったが、彼女は使っていたのか。いやそれより、カートリッジとは何だ? 

またPCに向かって、『カクノ 使い方』を検索する。と、なんとあのプラのパッケージの中に、カートリッジインキと取扱説明書が入っているという。

あわてて妻が置いて行ったパッケージを開くと、パッケージの紙に隠れて、細長いカートリッジと『やさしい万年筆カクノの使い方』の紙が出てきた。隠すようにして梱包していたとは。私は、パッケージを開けるや否や本体を取り出していきなり書き始めたので気づかなかった...。

インターネットの誰かのウェブサイトの説明では、本体にカートリッジを挿して、数時間置くか、挿した状態でカートリッジの腹を少しつまむように押してやると、ペン先にインクが通じてくると...。そういうことだったのか。ボールペンと違って不親切なしくみだと思う。

だいたい、このむき出しのペン先が、やはり、これ見よがしで嫌味がある。万年筆に対して反発を感じる人も世の中には多いが、その原因の一つはこの大げさな形だろう。こんな形状は小学生には危険ではないだろうか。あの当時のような奥ゆかしい爪みたいな万年筆を最初からきちんと購入していればよかったのだと思う。

「 パイロットのウェブサイトを見る。...目も眩むほどのラインナップだ。理解できない高額なものから、下に降りていくにつれて値段が下がる。その下の方に、昔風なペン先の「エリート」と言うのがある。値段も1万円と、まぁ想像していたくらいの価格帯だ。これだ。ひとまずこれを買って、まだ興味があるようだったら、そのときには高級品にグレードアップすればよい。

2023/10/24

■ あるく - 柏の田んぼの道


秋晴れの続く良いお天気。先週ずっと雨がちでしたが、今週は穏やかな秋晴れのようです。

空気もスッキリ澄んで、爽やかです。

柏のいつもの田んぼの道。いつものポイントで撮影。ぴったり半年前の4/24と同じく、田んぼは眠りについたようです。また来年の4/24に撮影できるかな。


2023/10/23

■ まなぶ - 単語集で楽しむ


また英単語の語彙力を広げることにしましょう...。

 選択肢から選ぶ試験方式です。別な選択肢をあてはめて想像してみます...(訳は拙訳です);

問. I was (  ) to see that so much food was thrown away after the wedding reception.  Isn’t there any way to avoid this kind of waste?

「結婚披露宴の後で、ずいぶん多くの食べ物が捨てられていたのを見て、私は(   )。この種の廃棄物を回避できる方法は何かないものだろうか。」

選択肢; 1. appalled  2. enthralled  3. exalted  4. contented

 どの選択肢も、他動詞の過去分詞形で、主語の感情を表して、成立しているようです。

■ 1. を選びましょう;

「結婚披露宴の後で、ずいぶん多くの食べ物が捨てられていたのを見て、私はぞっとした。」

…回避したい・無くしたい事態だと望んでいるので、この選択肢でよいと思います。

■  2., 3., 4., を選ぶと;

2.「披露宴の後で、ずいぶん多くの食べ物が捨てられていたのを見て、私は大いに魅了された。」

3.「披露宴の後で、ずいぶん多くの食べ物が捨てられていたのを見て、私は気分が高揚した。」

4.「披露宴の後で、ずいぶん多くの食べ物が捨てられていたのを見て、私は大いに満足した。」

■  2,3,4の「私」は、捨てられた食べ物を見て、あとで厨房の裏口にもらいに行こう、今日はすごいごちそうだぞ、とワクワクしているホームレスの方ではないかと推理されます。

■  正解肢以外を選んでしまった方は、後から自分が選んだ意味を知って憤慨しそうです。こんな選択肢を置いて、多くの人に解かせよう、わからなかった人を陥れよう、としている人が存在しているのを見て、私はぞっとした...(その割に愉快に愛読していないか?)

2023/10/22

■ まなぶ - 漆器を使う


漆器は毎日使っています。津軽塗の器です。親の家で暮らしていた学齢期の昭和の時代は、どこの家庭でも食器や身の回り品として、ふつうに使っていたと思います。その後、東京で大学生活を始めて以来今日まで、やはり使い続けているようです。

 …なんてことは、考えたこともなかったのですが、人に「津軽塗の映画を観た」との話を聞き、自分で使ってきた経緯を振り返って見ましたら、使わなかった時期は無かったことに気づいた次第。ついでに興味を惹かれたので映画の予告編をちらりと見たら、弘前が舞台らしいのですが、話している言語が、俳優さんたちの努力はじゅうぶん伝わるのですが、だいぶ異なる言語なので、ちょっと...(そういうことにこだわるなよ)。

 小学校のとき(こりゃまた半世紀前の話かよ...)、友人と、砂利と土だらけの山道を自転車で上って、下りる際にスピードを出し過ぎた私も友人も、カーブを曲がり切れずに、二人とも谷底に...落ちる前に、樹木にひっかかりました。なんとか自転車も引きずり上げて、「あ~愉快」などと擦り傷だらけで帰宅。ワイルドな田舎キッズですが、友人が、その際に力いっぱい抱きついた木が、漆の木でした。翌日の発疹やかぶれ(漆性皮膚炎)が猛烈だったようで、数日間学校を休んだので、見舞いに行った記憶があります。

 中学時代の通学路として、津軽の伝統的工芸品「こぎん刺し (麻と綿の刺繍)」「ブナコ (山毛欅木工細工)」「津軽塗」の、いずれも工房の前を、偶然ですが、通っていました。街中でしたがずいぶんのどかな通学路です、今から思うと。うち、ある友人が、「津軽塗」の工房の前にさしかかると、止まって、慎重に、店の戸が開放されていないか確認した動作をします。聞くと「あの工場(こうば)の前を通るとかぶれるんだ」。ホントかっ!? と思いましたが、のちに知ったところでは、敏感な人には、未乾燥の漆液から発散する漆酸のせいでやはり皮膚炎は発症するのだそうです。

 昭和の東京の4畳半の下宿でも使っていました。貧相な男子大学生が、漆塗りの盆と茶托に白磁の器を毎日使っているだなんて、異様ですが、「茶などこぼしても大丈夫で便利」「なじんでいるから使いやすい」というだけの理由です。プラスチックのお盆でもたぶん抵抗なく使ったことでしょう。

 ところが、病院で入院生活をした20代になって気づいたんですが、病院のプラスチック製のお盆は、食器も指もよく滑って使いづらいです。今どきのプラスチック製のお盆は、防滑性耐久性その他の性能の点で、漆器を軽く上回る素材やコーティング技術だと思うのですが、あの当時、病院から自分の部屋に帰って初めて、それが塗り盆であるがゆえに使いやすいのだと気づきました。

 それ以来、意識して津軽塗製品を使っています。と言っても、まともに買うと、いまだに私の財力とは金額の桁が大きく異なるので、親の実家にあったもので古いものや使っていないものばかりを、今日にいたるまで使っています。

 画像の盆は、もう親子三代、少なくとも60年は使っていますが、たぶんもっとずっと古いでしょう。上塗りの蝋色磨きの釉はすっかり白くザラけてしまいました。塗りの再生作業の依頼も可能ですが、購入する金額とあまりかわらないようす。プラスチック以前の時代は、地元では必需品かつ消耗品で、需給関係と市場の大きさから、庶民も買えるものだったのかもしれないと思います。

 この春の実家整理の際に、使わずにしまい込まれた同種の盆を何枚か見つけたので、画像の盆のような古いものはもう処分しよう...とは思わず、まだ使おうと思いました(;^^...。十数年前に、所用で会津若松に行った際、偶然に入った繁盛している大きな古いお蕎麦屋さん。ここ30年ほどで外食した回数は片手で数えられますが、その一つです(どうでもいいか)。そこでは、驚いたことに大きな膳で給仕されました。いっそう驚いたことに、その什器類がすべて漆器でした。膳だけは、猛烈に使い込まれています。他の什器のような黒や朱の会津塗ではありません。近隣の秀衡塗や浄法寺塗でもなく、木目地は見えず春慶でもない。不思議に思って、お店のお姉さんに塗りの種類を尋ねたら、代わって女将さんがお出ましになって、「津軽塗です」と。こんな大掛かりな膳のセットで津軽塗...。「お客さんはあの青森ナンバーのお車の方?」とも。...この女将さんの力量の大きさに刮目してしまいました...。

 あの膳に比べると、小さなわが家族が50年100年使ったくらいじゃ、あの貫禄は出ないので、ボロくなっても生涯使おうかなと思います。でも、艶のある新しい塗りは、やっぱりいいです、画像の茶托みたいに(...軟弱者)。

2023/10/21

■ まなぶ - 万年筆を始めた私-1


これまでの間に直接聞いた複数のステキなお話をあわせて、お一人の方の体験としてまとめてみます(;^^w

「私(わたくしと読んでもらいたい)は、退職を機に、使ったことのない筆記具『万年筆』を購入しようかと、ふと遊び心で、思った。

「今の状況としては、職場を終えた後で、時間的に経済的にもだいぶゆとりがある。住宅ローンも終わってだいぶたつし、クラウンの乗り替えやゴルフクラブセットの買い替えなど費用のかかるものはこの1,2年で済んだ。離れて家庭を持つ子や孫も手がかからない。今の趣味のほかに、さらに心の余裕も出てきたと言ってよいので、日常生活に多少の遊びがあっても良かろうと思っている。

「万年筆というものは、私の学校時代など、周りに自慢げに使っていた同級生もいるようだったし、また、万年筆ブームとやらも長く続いているようだが、しかし、あのむき出しの金ピカの金属の先端が、いかにも大げさで嫌味な印象だった。また、職場の部下たちが話題にしていたこともあるが、職場の文書には使ってはならない非実用品であり、職務遂行には不必要なぜいたく品で、軽薄な気がした。私はそのようなものにかかわったことはないし、彼らをうらやましいと思ったことなど、一度もない。

「だが、今後の私の生活を豊かに彩るのに、角度によって輝くペン先など悪くはないなと感じるようになった。ゆとりはあるので、少し良いものを買いたい。情報過多の現代、わざわざ年下の部下たちに頭を下げてまで意見を聞く必要は感じない。ネットで『万年筆 初心者』など、ちょっと調べればすぐ知識は得られる。

「初心者とはいえ、今の私にふさわしいものがよい。有名なモンブランやペリカンから始めるのがよいだろう。私のロレックスと万年筆は合いそうだ。カフェでメモしたり図書館で調べものなどする自分を想像すると、実に年齢や立場にふさわしい気品が漂う。

「さっそく『モンブラン』を検索すると、製品の番号によって値段がだいぶ違うが、画像はどれを見ても全く同じにしか見えない。この形のコピーはどこにでもありそうだ。だのに、どれも想像していたより極端に高額だ。どうやら宝飾品としての位置づけらしい。使うか使わないかわからないような、たかが真っ黒けなプラスチックの筆記具に、この金額はない。私は理性的な方だから、やめておこうと思う。

「『ペリカン』も聞き覚えがある。滑(すべ)らなそうな機能を表すわかりやすいが変な名前がついていて、赤青緑の縞模様から松竹梅を選ぶようだ。ところが、自慢気な若者たちのウェブサイトで、不穏な記述がある。洗って水にふやけて使えなくなったとか。冗談はやめてもらいたい。

「イタリア製品はさすがに気品がある。代表的なのはオーロラみたいな名前のだ。買うつもりで何度かサイトで探していたが、あるとき、グーグルに『オーロラ』と入れても出ない。どうも「アウロラ」と変な読み方をするようだ。そこで『アウロラ』と入れてスペースを押した途端『アウロラ_折れる』と妙なセットがヒットする。『ラミー_折れる』というのもある。不審に思い、導かれて読み進むと、購入者によるほんとうに折れた画像が次々と、また、そんな噂の火元を消そうと躍起になっているいくつかの販売店の記事があり、いっそう不信感がつのる。あぶなかった。やはり検索して下調べをする私の判断は、賢明だったというべきであろう。

「そもそもどんなものでも、国産品がいいに決まっている。質実剛健で賢い消費者としては当然だ。

「国産といっても、メーカー名だけ見ては、日本の会社か外国の会社かわからなかったが、『日本3大メーカー』があるようだ。しかし、どれを見てもモンブランと同じデザインだ。

「迷った場合は、業界最大手の物に限る。クルマだって、トヨタに限るのと同じである。どうもパイロットというメーカーらしい。

「初めて使うおすすめは、各種サイトに共通して『カクノ』だという。何といっても小学生を視野に入れた安い価格なので、まずは謙虚に従い、慣れたらすぐグレードアップすることにする。この謙虚さが私の取り柄である。休日に妻につき合わされて出かけた地元の大きなモールの文具ショップで、シックな黒をすぐに購入できた。

「初めての万年筆を、さっそくパッケージから出す。ボールペンのようなノックはいらないようだが、代わりにキャップを取って、一枚板のような銀色の金属の板を露出させて、書いてみる...が...

「なぜか書けない。私は筆圧がかなり強い方なのだが。ジェットストリームを使うのと同じく強く押してみる。先端の、紙と接触する金属の板の中心が、最初から割れているのだが、不安定にしなるだけで、紙に傷だけがつく。値段も安いし、やはり不良品か。いっそう強く押したら、しなっていた銀色の先端が、ぐにゃりと曲がった。元に戻らない...。どういうことなのか...。国産メーカーの安物は実は中国製などではないのか。当たり外れがありそうだ。やはりきちんとした本家本元のモンブランとかでないとだめなのではないだろうか。

2023/10/20

■ まなぶ - 桂米朝『はてなの茶碗』


落語の話です。三代目桂米朝の、私が言う必要もないのですが、文句のない名演です。

 今日は、この噺のあらすじや成り立ちをご紹介し、米朝の演じ方を評論してみましょう...などと神をも知らぬバカなマネは、さすがにいくら独りよがりな私でも怖気づきます。

 上方落語を代表するこのお話を、今日は、思い出し、聴き直し、いつも感じてきたことのうちから、2点だけ採り上げてみます。

 1) モノ自慢より、ヒトの機微

 モノ自体は、話のネタにもならないような「どこにでもある湯呑」、今風に言えば「百均の湯呑」です。いや、それだって、今どきは「百均で買いましたぁ」「全然イイですじゅうぶんですね」などというブログネタにはなっていそうですが。

 この話は本来はモノの評価や価値観の話のような気もするのですが、取るに足らないそのモノ、使う人のしぐさ、目をつける人たち、人に関する情報・思惑・それに基づく行動がどんどん重なり、あれよあれよという間に爆発的にストーリーが広がります(このスピード感は、噺家の洗練によるものです)。

 人類社会で、i) 驚くべきことは、動物との決定的相違点である「モノを作り使う」過程のテクノロジーの発達だ、というのは、たしかに今さら言うまでもないですが、

他方、ii) 驚くべきことではないが、そのモノをどう使うかは、人類発生以来、あまり変わり映えがしないだろう。入手と取引方法、本来の使い方とそこからの乖離、本来の値打とそこからの乖離...。

■ ii)はありふれたストーリーですが、人間社会でおもしろいのは、i)よりii)である点にハッキリ目を付けたお話なんだなと、意識します。

 モノそのものより、それがどう使われる・どういう運命をたどる...が、尽きることのないおもしろさの源泉です。

 振り返ってみれば、江戸時代背景のこのお話も、現代のインターネット上のお話も、あいかわらずそうではないでしょうか。(ネット上で、i)「買っちゃいましたぁ。すごいですね~。試しましたぁ。やっぱいいですね~。」...だから何なのよ? と、つい、「ブツを買って紹介」のサイトに楯をつきたくなるのは、性格の曲がった私だけでしょうか。 それより、ii)「こんなふうに使ってきました」という長年の工夫と愛着を見て、眼を剥いて驚き感嘆することがあり、充足感や信頼感は高いです。)

 2) 上方落語の背景の豊かさ

 江戸落語では、登場人物は徳川幕府時代の社会の各層に渡り、それぞれ立場や年齢にふさわしい江戸弁です。この微妙な弁じ分けは、噺家特有の妙味があり、楽しめる点です。

 他方、上方落語だって全くそうなのですが、その登場人物の社会階層のバリエーションは、江戸落語の比ではないような気がします。

a) 落語に登場する社会階層としては、

江戸落語は、徳川300年の武家社会を反映し、武家・町人・職人・農民が主たる登場人物ですが、

上方落語は、それにさらに加えて、朝廷(帝(みかど=天皇)と公家)と豪商という強烈なスター役者が存在します。町人の種類だけでも、農林水産業、豪商・富裕町人。他にも、比叡と高野に代表される僧や出家や山伏やついでに天狗様と、役者ぞろいです。

b) 舞台となる地理的エリアとしては、

江戸落語は江戸(江戸城-武家屋敷街-下屋敷街-下町)とその近郊の農村という関東平野の同心円的な背景です。東西の外延は、千葉の海岸から箱根の関所までです。

他方で上方落語は、中心点が複数に渡り、朝廷の京都、豪商の大阪、抹香の香る奈良に加え、京都と山城は違うし大阪と和泉・摂津は違うし、また、各種産業の中心がさらにその周辺の三河・尾張に始まり遠州・近州をまたいで、大都市圏を西に越え、播州・淡路・讃岐にまで及ぼうかという近畿中部中国四国に渡ります。ゆえに、関西圏の言語はすべて地域ごとに異なります。

 以上を使い分ける上方落語の噺が、おもしろくないはずがありません。

 『はてなの茶碗』では、舞台が、清水寺のお安い水茶屋、京の高級茶道具の店先、関白家、鴻池家、内裏と、他の噺にはない異常に大きなスケールです。人物は、油売り行商の大阪町人、茶屋のおやじ、公家出入りの茶道具商、その丁稚や番頭、豪商、関白家、果てはあろうことか帝(みかど)まで登場します。大坂弁と京ことば、町人と商人と公家のことばは、それぞれみな違います。やり取りの楽しさ可笑しさは言うまでもなく、思うのですが、それぞれが相手への配慮をごくさらりと、しかし必ずや、示してくれる心理や場面が存在することに気づくとき、その感動は、...ヒトとしての思いやりや機能する身分社会への信頼感やそれをすべてさらりと話してのける噺家の力量の大きさなど思い起こすと...、ひとしおです。

 米朝のCD全集盤(EMI, 2006年盤;S49-6-25広島)には、さすがに帝の口ぶりをマネてセリフを言う場面はありません。速記録にもないです。が、私の記憶では、彼の異別の録音で、帝の口調を、扇子か張扇かを口に当て少し高めの声部でゆっくりごくふた言ほど言いかけて、「いや、どんなふうに話さはったんかは、私にはわかりまへんけどな...」と茶化して途中で口調をヤメた録音があったと思います。帝のクチマネをするとは不敬な話で戦前生まれの人には許せないコトかどうか私にはわからないのですが、おそらく彼はその点に配慮したからかもしれませんが、その際の米朝の茶化し方もまたウマく、いかにも我われには垣間見ることもできない雲の上の敬愛すべき存在感を出していて、関西落語の世界の深さ厚さを一層実感した記憶があります。

 米朝のこの噺には、アハハと腹の底からこころから涙が出るほど笑うのですが、涙が出るのはおかしいからばかりではありません。

2023/10/19

■ なおす - 室内断熱に農業用マルチシート


今日はここ数日にない生温かさ。12:00の気温22.3℃。明日の予報は13.4℃、アサッテは7.8℃で、今日より15℃近くも低く、冷たい雨が強く降るようです。

 倉庫然とした自宅居住空間を、素人なりに断熱してみます。ここは、玄関ドア以外に、屋内に「ドア」と言うものが存在しないです。トイレも寝室もシャワールームもです。夏は良いのですが、津軽地方の冬は...。

 冬は、ドアがわりのロールスクリーンを補うように、農業用マルチシートで仕切りをします。開口部をおおって、ガムテープで留めるだけです。1枚で完全密閉するよう覆いきったり、あるいは、出入り可能なように2,3枚を前後に重ねて右開放左開放など垂れ幕状に交互に留めたり、隙間は自在にガムテープで調整します。まるで、キャンプ地で、タープを、風向・風力・日射・地形に合わせ、どんな形状に張るか考えるの際の工夫に似ています。

 暖房は、FFヒータと足元(机の下)に安価な電気ヒータです。FFヒータは、機器の構造自体が密閉式強制吸排気型暖房ですが、狭い空間になるので、換気経路は自分の生活に合わせてじゅうぶん検討済みです。

 暖房はいつも最小限の運転を心がけ、もちろん厚着で過ごしますが、農業用マルチで狭く仕切ったこの空間の、真冬の断熱効果は、想像をはるかに上回ります。真冬の外気温がマイナス10℃台の日々も、こじんまりと居心地よく、ほんのりと暖かさが続きます。これまでの一生のうちでこんなに暖かく冬を過ごせた経験はないくらいです。

 問題は「見た目」です。

■ 仕切った居住空間(座ってデスクワークなどの作業をする「部屋」)にいる限りは、ロールスクリーンだけが目に入るように、なんとか工夫はしていますが...。

 数百円で可能なこの断熱処理の、費用対効果は抜群です。さぁ、ぜひ参考にしてくれ、と強く勧めたいのですが、それにしても、屋外から入ってすぐ目に映るのは、画像のように、「みすぼらしいビニールハウスに住んでいる」目も当てられない生活状態です。ここまで書いてきたメリットをすべて帳消しにするかもしれません。私の提案をご採用いただく際には、必ず家族会議にて全員一致で採択される必要があるでしょう。

2023/10/18

■ なおす - クラシックシェービング - 今日のようす


クラシックシェービングについては、5/1に、また、シェービングソープの自作については、6/29 & 7/8に、詳細を書いたとおりです。

 このウェブログは、どちらかというと、誰かに読んでもらうというより、自分は何を考えて暮らしていたんだろうという備忘録というかわがままな記録ですので、ご覧になる方は「ふぅん」程度で、どうぞ読み捨てになさってください。

 さて、今日のシェービングをそっと記録しようかというわけです。誰一人興味をもたない記録です。他の人が同じページをつくっても、私は見ないかもしれません...(;^^

 今日も何の変哲もないいつものホルダとブレードと自作シェービンブソープ。

 ホルダは、「Scalloped-Destroyer」。製品名ではなく、パーツの通称名です。

 刃を挟むヘッドのデザインがScallop (ホタテ貝のような凹凸加工)で、ハンドル(柄)はローマ神殿の柱を模した何種類か決まったデザインがあるうちの、通称Destroyerという意匠パターンです。いずれのデザインも古き良き高級アメリカ製...をマネした中国製です...。

 「中国製=安い=粗悪」の連想があるかもしれませんが、クラシックシェービングの分野については、誤った先入観です。中国の金属加工技術の精密さには舌を巻きます。アメリカ製やドイツ製に倣って、非常に忠実に伝統的ディテールを再現しつつ、その素材(marine grade SUS 316L)といい加工(1000分の2インチ以内の僅少公差のCNC旋盤加工)といい、イギリス製ドイツ製の有名な定番ホルダをあっさり凌ぐ世界トップレベルの高性能品です。価格は、買ったごく数年前は3,000円台と安かったんですが、今検索してみると、ドル決済で1万円を軽く超えて...。もう手が出ません。といっても、ステンレス・インゴットから削り出したこの製品は、生涯は優に使えるでしょう。

 ソープは、いつもの自作シェービングソープ。ベイラムフレーバーをつけたのですが、天然の月桂樹の葉とオレンジピール(皮)の香りは、もう褪せています。でも、ずっと残るオリーブオイルやマカダミアオイルの香りでじゅうぶん幸せです。

 ブレード(刃)は、安くて高性能なロシア製の「アストラ緑」。ロシア産ジレット(「プレミアム」「ブルー」)が買えなくなったので、アストラを買いだめしてあるんだけど、いつまでもつかな...。供給体制はまだ潤沢のようだけど、経験のないほど値上がりしています...。

 アメリカのデザインを忠実にたどって作ったすばらしい中国製、アメリカ資本ジレットのブレードを主力生産する高性能なロシア製ジレット...。手が届かなくなりつつあります。

 去年2022年の2月までは、例えば、アメリカのシェービング関連のウェブサイトやショップの購入インプレッションで、世界中のお客が好き勝手なことを言って、それなりに楽しかったんですよ。ロシアの客のインプレにイスラエルの客、ウクライナの客、インドの客、中国の客が、みんな妙な英語でお気楽に同感したり質問したり...(インプレを書いている客のハンドルネームに国旗が表示されている事が多いです)。気楽な話でくつろぐ仲間意識、国境という概念は無い、という雰囲気が、このシェービング界隈では、ハッキリ感じられました。今はなんとなく素直な気持ちで楽しめない心の垣根が...。

 クラシック・シェービングの世界は、きっと、世界の多くの人たちにとって、大きなくつろぎの場なんだと思います。だから、どこの国のヤツだろうと気兼ねなくいつもの友人と話す調子で軽いタメ口を利くような話ができていた気がします。あの気分にもどりたいんだけどな...。

2023/10/17

■ まなぶ - 一方的にしゃべる - 青森県立高校入試 - 2009 (H21) 年 - 社会 第4問 (歴史)

※ 青森県立高校入試 2009(H21)-社会第4問

私の地元の県立高校の入試問題を読んで楽しんでみます。なお、私は中高生のいる家族でもなく学校関係者や業界関係者でもありません。末端の庶民が外野席からお気楽に眺めるだけです。

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下の文章は,さおりさんとしんごくんが江戸時代以降の日本と外国とのかかわりについて話し合ったものである。次の(1)~(5)に答えなさい。(18点)


さおり:江戸時代の日本は鎖国をしていたけれど,18世紀後半にはロシア船が来航し, 19世紀になると,アメリカやイギリスの船も日本に近づくようになったのよね。

しんご:19世紀中ごろには,日米和親条約を,数年後には,アメリカやイギリスなど5か国と修好通商条約も結んだよ。

さおり:明治時代になると,政府は,右大臣岩倉具視を全権大使として欧米に使節団を派遣したわ。この使節団の経験をもとに日本の近代化がおし進められたのよ。

しんご:日本は第一次世界大戦後に設立された国際連盟には最初から加盟し,中心的役割を果たす国の一つになったんだ。

さおり:昭和時代には,世界恐慌や第二次世界大戦があったりしたけれど,ようやく復興して今のようになったのね。


 あのさ、設問は、『さおりさんとしんごくんが江戸時代以降の日本と外国とのかかわりについて話し合った』って書いてあるんですけれど、この会話、二人は自分の主張を一方的にしゃべるだけで、『話し合った』な状態に、全然なってない気がするんですけど…。

 青森県教育委員会が県立高校生に求める理想の生徒像って、こうなのですね...。


2023/10/16

■ きく - シベリウス 弦楽四重奏曲二短調 Op56 「内なる声」- グヮルネリ弦楽四重奏団 / テンペラ弦楽四重奏団


あなたが幼いころから慣れ親しんだの地元の郷土料理を、東京のお店で食べてみたことはありますか。あるいは、あなたのお母さんの得意の手料理を、レシピをまねて他人が作ったとして...。

津軽のいなか者の私は、東京で暮らしていたときに一度、『津軽郷土料理の店』に人に連れて行ってもらったことがあります。

マンガ『美味しんぼ』の第100巻が『味めぐり-青森編』でした。県のお役人の案内で次々と県内を巡り、あらかじめ地元名士や婦人会に大掛かりに用意させておいた郷土料理を次々と食べ歩き、都内のホテルで青森郷土料理どうしを対決させる...。私の地元の料理の内容を見ると...。

 感想。「ど、どれも、ち、ちがう...」

 東京の「郷土料理の店」やマンガ『美味しんぼ』で供出されるのは、良く言うと「洗練されて」います。良い材料を用いて、誰の口にも合う、しかもちょっと特別で高級な仕上がり、というベクトルに振って調理を仕上げているのではないでしょうか。東京のような大都会で営業する以上は、そのような付加価値があっても、納得がゆきます。否定すべきものじゃなくて、「東京における各地の郷土料理」という分野も、また一つの新しい解釈だし、洗練された文化になっていると思います。

 しかし、それは、昭和のいなかの庶民が幼少時に毎日口にしたはずの家庭料理とは、かけ離れています。明らかに劣った材料を使って、その家の人の口にしか合わないようなえぐみがあるはずです。

—...---...---

 北欧(フィンランド)の作曲家シベリウスは、交響曲には中学校の頃聞いた2番以来、大学の頃に聴いたバーンスタイン/ヴィーンフィル(DG)の「スーパーロマンチシズム解釈」に至るまで、ずっと親しんでいたものの、その印象が災いして、弦楽四重奏曲は、何十年もこの1曲しか知らず、しかも「暗くて地味」というイメージを持っていて、積極的には食指が動きませんでした。

 とはいえ、どの弦楽四重奏団も、その演奏は美しいです。うち、グヮルネリSQの1989年録音盤(Philips 246-286-2;画像右)を。

 ジャケットは、年配のアメリカ人紳士の写真です。レパートリーも広くディスコグラフィも多く、40年にもわたって同じメンバーで国際的に活躍した尊敬すべき弦楽四重奏団でした。技術的に確実で、その演奏は、年配紳士の写真にとらわれてはいけないのですが、溌溂として軽やか。アメリカの弦楽四重奏団というイメージから寄せる期待に応えてくれます。

 他方、テンペラ弦楽四重奏団(画像左)は、まったく知らなかったのですが、BISレーベルから2007年頃に『The Sibelius Edition』という組み物が発売されて、これを機に、弦楽四重奏曲も聴いてみたいと思い、購入しました (BIS CD-1903/5)。第1巻-室内楽1は、CD6枚セットですが、うち、シベリウスによって完成された「弦楽四重奏曲」はCD3枚に渡るたった4曲しかなかったので、あ、そうなのか、と理解しました。うち3曲は、このセットで初めて触れました。いずれもこのフィンランドの四重奏団の演奏です。

 CDセットの1枚目の嬰ホ長調の冒頭を、一聴して仰天しました、彼女らの演奏には。天衣無縫。水を得た魚。水しぶきが次々と飛んでくるようです。

 このフレッシュさは、フィンランド人のシベリウスの曲が、フィンランド人の彼女らにとっては、自家薬籠中の十八番、毎日曲芸のように振る中華鍋でつくられた、ここでなくてはできない料理、というたぐいの見事さです。

 今は、「暗くて地味」というイメージを抱いてしまっていた二短調の、緩徐楽章(Adagio di molto)を見てみましょう。

 全体に、緩徐楽章でありながらリズムの揺れが激しく、拍子記号が数小節ごとに変更され、ご覧の連符のリズムの抑揚もめまぐるしいです。こんな楽譜は、一人で演奏して前に進むのも困難なところ、合奏で進むのはよほど高い技能を要するでしょう。

※ 楽譜 1

■ 楽譜1のこの箇所は、四声部それぞれが、たゆたう波のように浮いては沈む全体の雰囲気を代表して一部抜き出してみました。グヮルネリSQは、楽譜には忠実で、マルカート記号やクレシェンド記号も、全体としてバランスよく、安心して身を委ねられるような規則正しさで、すっきり軽やかに進みます。下手をすれば、やすらかさは眠さに交代しそうです。

 テンペラSQは...。ゆったりと、いやねっとりと、彫りが深く、夢見るように、4本の弦がうねります。1stVnの高音はシャッキリ鋭く、Vaの中音域は太くじっくりとした擦弦音の触覚や振動が、まさに手で触るかのようです。

※ 楽譜 2

 楽譜2の後半、この楽章のクライマックスですが、テヌート付きのクレシェンドで上行しながら、p (ピアノ) < (クレシェンド)  f (フォルテ) と、極端な遠近がつけられた箇所。グヮルネリSQは、遠い憧憬を思い出すかのように、手前に増幅せずに、はるか遠くに焦点を合わせるかのような音作りです。

 対して、テンペラSQは、いっさい迷いのない強いボウイングで、点のようなミクロのp (ピアノ) から、ぐぅ~ッと拡大したf (フォルテ)に、一気に視野いっぱいに音像を広げます。

 グヮルネリは、国際的に活躍し、世界中に舌の(耳の?)肥えた客を抱える弦楽四重奏団です。対して、テンペラSQの立ち位置は、地元の作曲家、地元の演奏、地元の聴衆。こってりとしたえぐみさえある演奏で、このシベリウスは、他の演奏家にはとうてい近づけない世界ではないか、と、いつも、充足感に満ちて大きなため息をつきます。

2023/10/15

■ なおす - 万年筆の洗浄-2-洗浄剤を使って

※ 洗浄液の中で溶出する顔料インク

昨日の続きです。手もとの万年筆のうち、最もよく使うのは、太字系の4,5本です。メンテナンスの統一性から、すべてカートリッジ式の、パイロット社製品のみです(ペン種は、Broad, Broad-Broad, Signature, Coarse)。

毎回の水洗いに加え、年に1,2回程度、プラチナ社製の「万年筆洗浄剤」を使って漬け置き洗いをします。加えて、年に1回程度、パイロット本社PDG(ペンドクターグループ)に送って、洗浄・ギャップ調整・流量調整などを有料でお願いします。大げさですか。実は以下のように、インクの使い方に問題があるとわかっていながら使うからです。

インクのうち、最もよく使うのは、

・古典インク...ペリカン社製4001のブルーブラック

・顔料インク...プラチナ社製の黒(カーボンブラック)と青(ピグメント)

いずれも、上の万年筆に入れ替えて使っています。...危険な使い方です。

なお、中字&細字系万年筆は、使用頻度が少なく、また、パイロット社製かペリカン社製の染料インクのみで使い回しているので、ふだんの水洗いのみで、あとは何の手間も心配もしないことにしています。

 同じペンで、顔料インクと古典(没食子)インクを入れ替えて使っていると、昨日書いた水圧洗浄?の作業を毎回必ずはさんでいるとはいえ、半年程度で、インクフローが渋く細くなるのを実感します。ちょっとくらい筆跡が細くなってきても、どうせ太字ばっかり使っているんだし、毎回よく洗っているんだし...と自分に言い聞かせてはいましたが、あるときやはり、何か化学的なソリューションを試みた方が良いかもと思いました。

世紀の大発見アスコルビン酸洗浄もよさそうです。が、今の私の場合は、それにより還元される没食子酸鉄成分以外に、顔料インク対策も必要です。

 アスコルビン酸は、1) 顔料粒子の除去が、化学的機序として見込めないこと、2) 使う分量(ごく微小)に比して買う際の分量(けっこうまとまった量)との差が大きく、保存方法と費用の点でアンバランスな感じがあること(数か月かけて飲んでしまえば健康に良いのかもしれないんですが...。美白なお肌づくりと没食子インクのみ使う万年筆の定期的お手入れを両立させたい方に向いているでしょう...か?...)の2点の懸念。

したがって、この際、古典インクも顔料インクもずっと商品ラインナップにあるプラチナ社が推奨する万年筆洗浄専用品の「洗浄剤」を使うことにした、という経緯がありました。

この洗浄液を使う直前に、いつもどおりきれいに洗っているのに(昨日の画像のカクノみたいに)、すぐ洗浄液に漬けてみたら、数分程度すれば上のトップ画像の黄色枠で囲んだ箇所の通り、顔料系のインク(カーボンブラック)が、ペン芯のフィンの間から、ゆ~らゆらと筋状に、水に溶出してくるのが目視できます。ふだんの水や水圧だけの手入れだと、完全には除去できていないという事実が納得できる瞬間です。

ってなわけで、定期的に、このプラチナ社製のクリーナで漬け置き洗いをしています。

ところで、このプラチナ社製の洗浄液は、成分表示がなく、謎の液体です。原液は、視覚感知では, 無色透明、嗅覚感知では, 常温で無臭, 温めた容器に滴下するとほのかに有臭、触覚感知では, スプーンにとって触ると指にヌルヌル感があります。

※ 左;原液 / 右;10倍希釈溶液

シェービングソープや石けんを自作製造する際に使っている万能試験紙で、以前にも確認したことがあるのですが、今日は、備忘録として、画像にしておきます。原液のpHを視認判別すると、ほぼpH値11濃紺くらい(画像左)。40℃のぬるま湯を用意して室温のステンレス製計量カップ内で指示通り10倍に希釈します(原液10ml→水溶液100ml)。と、9濃緑くらい(画像右)でしょうか。ヌルヌル感や、ごくほのかな硫黄臭から、何か硫化水素イオン化した溶液を想起しますが、しかしペン先金属表面への侵襲を配慮しているだろうと考えると、それとは違う物質でしょう。

 アルカリ度だけからすれば、これも石けん自作に使っている水酸化ナトリウム(固体(粉末))や、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(キッチンハイター)など、何か身の回りに代用品がありそうです。が、侵襲性や濃度調整の滴定値を考えると、素人としては、万年筆を恙なく使い続けられるよう、おとなしく万年筆洗浄専用品を購入して指示に従うことにしています。

 24時間の漬け置き後は、よくすすいで乾燥させてまたインクを通して使い始めると、もう明らかに、インクフローの良さの点で、洗浄後の効果を実感できます。プラチナ社製の専用品を使い続ける理由は、ココです。

2023/10/14

■ なおす - 万年筆の洗浄-1-日頃の水洗い


毎日使う万年筆。インクがなくなりそうなら、どう補充しましょうか。私が主に使うカートリッジ・コンバータ両用式について、 私の場合はこうです;

これは個人の好みの問題ですが、コンバータを首軸に装着したままインク瓶の上で補充というワザが、不器用な私には難しいです。ほとんどが吸入式の輸入品もです。不器用なヒトって、こんな風に使うのか、しょうがないな、ということで、大目に見てください。

この補充行為ですが、一般には;まず、インク瓶の蓋をあけます。次に、万年筆のキャップと胴軸を外し、1) ペン先がインク瓶に接触しないよう、かつ、2) ペン芯がインク液面下に、かつ、3)首軸が液面上に、という3つの条件を同時に満たすよう、クリアランスの非常にタイトなインク瓶開口部直径内にて、シビアな上下左右空間を保つアクロバティックな空中静止の体勢を保ちます。その間ずっと「インクが指につかないように」と祈りつつ、恐る恐るコンバータのツマミを押したり回したり...。静止状態が要請されるがゆえに左手で懸命に保持する物体に対して、あろうことか右手で小刻みな運動エネルギーを加え続けます。...曲芸を強いられている気がします。

 ((…ということは、インクをべったり指につけたことがあるかも))

この曲芸の作業の間じゅう、インク瓶のインク液面はその表面積を大気中に露出開放中。「インク瓶がひっくり返りませんように」、「大気中を浮遊中の菌類特にカビ胞子類の皆さんや他の細菌類の皆さんに見つかりませんように」との多様な祈りも続々と加わります...。

((...ということは、インク瓶をひっくり返したことがあるかも))

((...ということは、インク瓶の中のインク液面にカビが浮いているのを目撃したことがあるかも))

コンバータにインク補充後はティッシュで首軸先端を拭くのですが、その際も「インクが指につきませんように」「ティッシュがペン先やペン芯のフィンとひっつきませんように」と最後の祈りを唱えつつ...の綱渡りの心理状態が続きます。

最後に、胞子類菌類細菌類のみなさんをインク瓶内部に大気圧充填して、蓋を閉じます。

インクという有機物豊富な培養基と、密閉したインク瓶内部という高湿で嫌気性の環境とで、何か生命体がすくすくと育ってくれるでしょう...。

以上の一連の行為は、何らかの宗教的な精神の修行ですか!?...なんちゃって、コンバータを愛用の方、ごめんなさい!不器用なヤツが何十年もインク瓶と生活を共にすると精神も荒廃してこようかというものです...。万年筆から遠ざかっていた時期がありますが、ボールペンやシャーペンの発達という理由以外に、コレを思い起こすと二の足を踏んでいたのかもしれません。

じゃぁ今のお前はどうしているのか、というと...。

ベストなのは、新品カートリッジを次々に充填...。もっとも作業がハヤい・ラク・キレイ・衛生的です。が、毎日使うことを考えれば、コストの点で、あらゆる筆記具中で最も高額に維持することにもなるので、この選択肢はナシです。やはり私もインクは瓶で購入しています。

コンバータを首軸に装着したままでの吸引はせずに、空(カラ)のカートリッジに、2mlバレル程度のシリンジで注入して再充填します(テルモなんかでなくてもダイソーで十分です)。

書き繋ぐべき状況でインクがなくなったら、シリンジ+カートリッジ(または、シリンジ+コンバータ(Pilot;CON-70N))を使う場合、シリンジでインク瓶から0.9ml程度を吸入し、すぐインク瓶に蓋をします。これだと、インク瓶液面の大気開放は15秒間程度。首軸からカートリッジを取り出し、チュっと注入して首軸に挿し戻せば、すぐそのまま書き続けられます。シリンジは、あとで、カップやビーカ内で水を吸引し、引き上げて台所シンクに排出、の作業を繰り返して洗うだけです。速いし、指をインクで汚すことはありません。

切迫した状況でないならば、インクが無くなったこの機会にいっそ首軸からコンバータなりカートリッジなりを外して洗った方が精神衛生によいです。カラのカートリッジを首軸から外して首軸を水洗いし、カラのカートリッジにはニードルを奥まで挿(さ)して2回程度水を入換え注入します。

ふだんの水洗いの際には、首軸に、別に用意してあるカラになったカートリッジを挿し、そのカートリッジの逆側にも穴があけてあって20mlバレルのシリンジ(画像最奥)に挿し、この状態で首軸をビーカ内で水没させて水を吸引、引き上げて台所シンクに強い勢いで排水します。2,3回繰り返します。

透明軸のカクノやプレピーで同じ作業をしてわかるのですが、首軸内部のペン芯のフィンは、使用中はインクがまんべんなく回ってフィンはインクに浸っています(画像手前のプレピー)。ただの水洗いでは、首軸内に残存したインクは全く取れないです。この点で、輸入品のような吸入式の万年筆は、水洗いしただけでは、新旧のインクが首軸内で必ず交わります。他方、シリンジによる水の吸入や排出により、その水圧で、スッキリきれいになるのが、透明軸の場合は目視できます(画像手前から2本目のカクノ)。

以上の作業で、万年筆は、スッキリ素速くきれいになりました。これだけキレイになったカクノを見ると、これでじゅうぶん...と思うのですが...。(明日に続いたりします)

2023/10/13

■ まなぶ - 「てまえどり」の模範?


「ねぇ、ボクいつも買ってるこの牛乳に、こないだから貼ってあるお姉さんが踊っているこのシール...『てまえどり』ってナニ?」...(・・?

「それはね、購入してすぐに食べる場合に、商品棚の手前にある商品等、販売期限の迫った商品を積極的に選ぶ購買行動のこと(環境省)だよ 。よくお客さんの中に、商品棚の奥底に手をつっこんで少しでも新しいモノを取ろうとする人がいるじゃない。みんながそうしたら、古い商品が前の方に残って、それが期限切れになって廃棄されて、食品ロスにつながるんだよ。どうだい、わかったかい?」w(‘^’)

「そうだったのか。ところでこのシールのお姉さんは、どうして踊っているの?」...(・・?

「それはね、おそらくこのお姉さんは青森県庁にお勤めの方で、キャンペーン実施に伴う公務員特別手当が入りそうだから、うれしいっていうことなんじゃないかな。どうだい、わかったかい?」w(‘^’)

「そ、そうだったのか。ボクも食品ロス防止やお姉さんの特別手当に貢献できたね。」...(^^?

「うん。君はいつも、賞味期限直前の処分価格品しか買わないから、もう何年もずっと『究極のてまえどり』を実行する模範的消費者だね、アッハッハ。」w(^O^)w

「そ、そぅだね...ははは」...(ioi)

2023/10/12

■ まなぶ - 革手帳の縫製

※ 画像は革表紙の内革(裏側)です
「手帳」ってお使いですか? 中味も装丁もさまざまあって、少しでも興味を持ち始めると、いくらでものめり込みますよね。どんな物を見ても、また、たとえ同じ物でも使っている人により、実に興味を惹かれますし、必ずまなぶ点や尊敬すべき点がいくつも見つかります。

私が使い始めたのはいつだろう、どんな変遷があったろうと、考えてみました。今日はそのハード面だけを振り返ってみます(単なる備忘録です...の割にやはりいつも長いです...)。

小学生の頃にワラ半紙を切って綴じたものや雑誌の付録や市販のお安いお手軽なものを使い始めたのを覚えています。

中学高校で「生徒手帳」というものが配付されましたが、頼ろうとして使いかけては不便な思いをし、やはり、市販の小さいサイズ(A6やB6)の「ノート」を使っていました。

大学生の頃、渡部昇一「知的生活の...」というのが流行し、だからと言ってワインやチーズや京大式カードを買い揃えれば知識人だという世間のカネがありそうなおじさんたちの珍妙な風潮を遠巻きにして眺めていたのですが、そのおかげで、大学1年の頃に読んで感化されていた梅棹忠夫「知的生産の技術」の影響ですでに使っていた京大式B6カードを、もっと自分に合う手帳として作りなおせないか、大いに考え直すきっかけとなりました。

「システム手帳」「ファイロファクス(FF)」などという何万円もする夢のような高級で知的な手帳が存在していると知ったのもこの時。買えるはずもない高級品なので、マネして作ろうと思いました。

レフィルを作ります;当時(1980年代)は「A4」というサイズは大学生にはなじみがなく、B5サイズのレポート用紙や大学ノートの使いかけて終わって余った後半の白いページを、半分のB6サイズに切り、月間予定表と週間予定表のフォーマットを自作します。FFのレフィルを参考にしつつ、当時は毎日使っていたタイプライターで、またその後数年してブレイクした「日本語専用ワープロ」で、FFよりももっと「自分の用途に合った」「より洗練された」フォーマットを作ります(←アッハッハ、笑っちゃいます...)。2穴パンチでB6レフィルに穴をあけて完成。

バインダを作ります;安価なプラスチック製の2穴バインダーの、なんとまぁ強引にも、プラスチックカバーをカッターで好きなサイズ(A5)に切断し、自作レフィルをはさんで、「自作-2穴システム手帳」となります。

 「なんてカッコいい...」と、大いに満足、自分で惚れ惚れします。「FFや(当時出回ってきた)国産の手帳レフィルなんか、ムダなデザインだし、誰にでも合うフォーマットはつまり誰にも合わないフォーマットだよ。その点ボクのは完璧に自分にマッチした美しいレフィル...」の割には、実は、恥ずかしくて人には絶対に見せられなかったり...。自己満足しつつひっそりと使いました。

が、その状態で、タイプライターが日本語専用ワープロになり、それがMS-ワードになり...時は巡って40年もたって...いるというのに、も、もしかして、いまだに「自作レフィル」を延々と作って使っています...。今、気づいてしまいました。今、自分のWindosマシンのエクスプローラを手繰ってみると、「自作レフィル」は、どうやら1997年(お手)製のもの以来、300種類(300ファイル)ほど自作しています...。連綿と作り続けているようです...。開いた口がふさがりません。

バインダーは、この26年間は、革製品を購入してきたようです。これも今、振り返って、気づきました。

その26年前に買ったらしいカーフ革製のシステム手帳サイズ10mm6穴リングのバインダは、うれしくて毎日激しく活用しました。10年ほどして、ブラウンの色が褪せ、革表紙は擦れて繊維がホロホロにほつれて、背の上下は崩壊損耗しついに扉が背から引きちぎれ...。

その手帳の末期の頃に、バッファローカーフ革製のA5サイズ25mm6穴リングのバインダを買い足すように購入。レフィルもサイズも大幅に拡張して、大いに使いました。あまりの良さに、すぐもう1冊購入しました。ここ20年ほど使っています。↑のトップ画像の2冊です。

この2冊は、国産の手帳で、革の品質の良さ手触りの良さや頑丈さや縫製の良さに、いつくしむ気持ちがますます積み重なる一方です。画像の通り、縫製のラインがスっと通り、角の処理もほんとうにていねいです。

国内の革職人さんのまごころを感じます。例えば↓の画像1の、左は20年ほど使っている長財布で、右はそれよりさらにチョっと古い小銭入れですが、角の縫製処理をよ~っく見るほどに、その丁寧さに舌を巻きます(20年使って革のヘリはほつれて立ってきましたが)。20年で安いものを5コ買い替えるより、その5コ分のお金で1コを買って20年使い続けたいです。国内の革職人さんの矜持を実感します。

※ 画像 1  (画像は財布を開いた内革(裏側)です)

さて、前置きはこのくらいにして...えっ!? (;^^A

実は、その最初の革手帳を使い始めた26年ほど前から、革手帳に合わせてレフィルが「6穴」です。レフィルを自作する私のことですから、当然、「6穴パンチ」を持っています、それも6種類も...。どれも、穿孔能力が、2,3枚です。「月間予定」なら、まぁ1年に1回、6枚程度の穴あけ作業で済むのですが、「週間」や「メモ」などは、いちいち2,3枚ずつ穴あけするのはたいへんです...と言いつつ、実はやってきました。

ところが、以前にも書いた通り、私は今、十万枚以上のPPC用紙を抱え込んでいます(6/26ご参照)。その紙がすべて、万年筆インクで盛大に裏抜けする品質だということも書きました。そのせいで、鉛筆だボールペンだと、一人で四苦八苦しているところです。

 この膨大なPPC用紙を手帳レフィルとしても使い回したい、けれど、穴が6穴のものを自作するとしたら、気が遠くなるような穴あけ作業ではないの? 大量に穴あけ可能な2穴にしたいです。手持ちの2穴パンチのなかに、1回に180枚の穿孔能力があるものがあります。

この状況で、大学生のあの時以来、またシステム手帳というものの活用を大いに考え直すべき人生の転換点に逢着しました(また大げさな...)。

「2穴のシステム手帳バインダー」はふつうは売っていないです。大学生のときみたいに、また、プラスチック製の2穴バインダのカバーを切断して穴を開けましょう...か。

 しかし、これまで26年間使ってきたバッファローカーフの革製バインダーから、突如100円のプラスチックバインダーに住み替えるのは、さびしいです...。無いなら、オーダーするという手も...おそるおそるウェブサイトを探ってみます...。

どうせオーダーするなら、この際、とうてい市販品では買えないような、豪華な仕様に...いやそれは本来の目的から逸脱するムダ遣いなので、むしろ、珍妙なサイズにしてみましょう...!?

ここ数年、私は、印刷済みまたは書き込み済みのPPC用紙で、裏が未使用(白い)のもの(=「ウラ紙」)を、A4 > A5 > A6とどんどん半分に切り、そのA6サイズを、大いに活用しています。このサイズなら、何といっても心理的に気軽です。このサイズで2穴にしてみましょう。

国内の職人さんのウェブサイトを見つけました。さっそく、「牛革、A6サイズ、2穴」という変則的なものをこわごわ相談してみます。と、こころよく引き受けてくれました。ありがたい。けど、納期は3か月、金額は払ったこともない高額、と言っちゃ大げさですが、何万円もします。でも、この際試してみましょう。それがおととし2021年の11月。翌2022年の2月に手もとに到着し、使い始めました。↓の画像2の右側です。

※ 画像 2  (画像は表紙の内革(裏側)です)

  「A6サイズ、2穴」は、やはり、使い勝手が良いです。気兼ねなく、大量にレフィルを用意し、遠慮なく書いては綴じ、綴じては捨て、捨てては書き、を繰り返すことができます。うれしい!

 あまり使い勝手の良さに、調子に乗って、もう1冊、今度は「牛革、A5サイズ、2穴」を注文しました。↑の画像2左側の新しいヌメ革のもの(ちなみに、画像1の左は長財布ですが、もとは同じ淡い色のヌメ革です)。2023年6月にお願いし、先月2023年9月に手もとに来ました。これまで20年使っているバッファローカーフA5サイズ6穴の2冊と交代するつもりです。

 同じサイズを手にしたとたん、いやがおうにも品質を比べてしまいます。すぐに、これまで使いなれたバッファローカーフ革(今日のトップ画像)の方が手触りにおいて優れていると感じます。じ~っと見てしまいます。新品の牛革は、革の品質の点ではバッファローカーフには劣るでしょう。別にまぁしょうがないです。今回は実用本位で、最も基本的な品質の革を選びましたから。ステッチ(縫製ライン)に目を移すと...。上の画像2でお分かりの通り、ステッチが、蛇行してのたくっています。「拙い」とも表現できるし「ミシン縫いではない手縫いの雰囲気が出て、味わいがある」とも表現できます。角の縫いは、2021年注文の右側のものは、ステッチが革の外周に沿っていないショートカットした直線を辿っていますが、2023年注文の左側のものは、それなりに揃ってきました...。

あなたなら、どう思いますか。私は、...何の不満もないです。明らかに手縫いしてくれた職人さんのひと針ひと針の気持ちがじわりと伝わって、大事に使おう、この手帳に刻む時間や事柄を大事にしよう、という思いを新たにします。

2023/10/11

■ まなぶ - 鉛筆を使って - 単語集で楽しむ


またあの人を食ったような愉快な英単語集で、いっしょに語彙力を広げましょう...。

選択肢から選ぶ試験方式です。別な選択肢をあてはめて想像してみます...(訳は拙訳です);

問. The burglar was not (  ) by the state-of-the-art home security system and had little trouble entering the house.

「その窃盗犯は、最新の高性能ホームセキュリティシステムに(  )されずに、やすやすとその家に侵入した」

選択肢; 1. deterred  2. detested  3. rebuked  4. lamented

どれも、他動詞です。受動態となって行為を、またはbe動詞+カコ分詞で状態を、表現可能で、文法的には正しく成立する英文です。意味はどれがお好みかな、という出題かなぁと思います。

 1) deterred を選びます;

「その窃盗犯は、最新の高性能ホームセキュリティシステムに阻止されずに、やすやすとその家に侵入した」

…良さそうです。いまどきは、最新のセキュリティシステムはAIかなんか使って判別しているのでしょうか。

 2) detestedを選びます;

「その窃盗犯は、最新の高性能ホームセキュリティシステムに激しく嫌われることもなく、やすやすとその家に入った」

…その窃盗犯は、人に好かれやすいフレンドリーな性格なので、AIの気に障るようなこともなく家に入れてもらったんですね。

 3) rebukedを選びます;

「その窃盗犯は、最新の高性能ホームセキュリティシステムに激しく叱責されることもなく、やすやすとその家に入った」

…いつもはコラッ!と叱られるんですが、今回はしょうがないかということで、大目に見てもらったんですね。

 4) lamentedを選びます;

解釈1…「その窃盗犯は、最新の高性能ホームセキュリティシステムに嘆かれることもなく、やすやすとその家に入った」

…ホームセキュリティシステムが感情の主体となる擬人法。「またこんなことをして。ああなんて嘆かわしい」という事態には、今回はならなかったんですね。

解釈2…「その窃盗犯は、最新の高性能ホームセキュリティシステムのおかげで、嘆くような事態にはならずに、苦もなくその家に入った」

…ホームセキュリティシステムが物であることから、主語burglarの述語 “was lamented”は「be動詞+カコ分詞」で主語の感情的状態を表すと解されて、by以下はその原因理由となります。家に苦もなく入ることができたのは、最新のセキュリティシステムの支援のおかげだったんですね。

 あれ、あのぉ、ホームセキュリティシステムって、どっちの味方なんですか?

 しかし...どういう性格の人がどう発想したら、「この問題にはこれらの選択肢を置いてやれ、フフ」という気になるんですか、出題者の方は...。おもしろいので引き続き愛読しましょう(;^^


2023/10/10

■ まなぶ - 洗濯用洗剤の単価?


昨日の「修道院の生活にならって...」などという高邁な?話から、一転して、生活色滲む「洗濯用洗剤のおトク度」を考えてみました...。

 買いに出かけた昨日、ホームセンターの洗濯用洗剤売り場で、母と娘(20代以上の方)らしき2人が、「アタックよりDCM(チェーン展開するスーパーマーケットのPB(独自ブランド))の方が安いじゃない。値段3倍も違うよ。同じ洗剤なんだし、十分じゃない?」「でもDCMって成分が薄いんでしょ。量だって違うし。比べられないよ。」

 く、比べてみましょう (`ω´;  ...強引なヤツだなぁ...┐(;・ω・`)┌

 自分でも、長年の疑問でした。洗剤売り場では悩むのですが、買ってしまえばまったく気にせず使い、売り場における疑問は雲散霧消し...の繰り返しでした。そこでこの機会に。ただ、私は、専門の知識も何もないエンドユーザーです。自分で、ある程度納得すれば、それで満足するとしましょう。

 自分では、毎日泥んこ汚れの小学校野球部男子じゃないんだから、DCMブランドの水みたいにチョロチョロ薄い(粘性が低い)もので十分のつもりで、それを購入し続けていました。

 洗剤の性能は、界面活性剤と酵素ですが、どちらも成分比が多いほど、またpHが高いほど、石鹸としての性能は上がり、汚れが落ちる...かもしれないのですが、いまどきは、界面活性剤も酵素も種類が多く、起泡力もpH値も高けりゃよいのか、イオン化されていればいいのか、蛍光剤など他の成分があった方がいいのか、いや、以上はすべてドラム式やコインランドリーや子どものいない世帯の場合は、非効率じゃないか、など、議論は永遠に続くでしょう。お手上げです...、って、ここで終わったらおまぬけですので、自分の場合に限って考えてみます。

 そこで、自分の使い方と計算資料の単純化の点から、問題を単純化します。

「洗剤の性能(汚れ落としの性能) = 製品に表示されている界面活性剤の含有比率」とし、

使われている界面活性剤が具体的に何であるかを問わないことにします

(というか、一般消費者には、使われている界面活性剤や酵素の種類やそれぞれのイオン率やpHはわからないから計算不能、いや、わかっても計算不能です)。

■ 比較の対象を、メーカーものブランドものの代表「アタック」と、ホームセンターオリジナルブランド(PB)の代表「DCMオリジナル」のみとします。いずれも液体タイプです。

■ まず価格です。昨日購入したのは;

1) 花王「アタックゼロ (アタック液体史上最高の清潔力。菌の隠れ家蓄積0へ ワンハンドタイプ 本体380g)」...画像中央のハンドスプレータイプ。画像中央の通り、273円(当店平常価格の50%off)。amazonでは491円。

2) 花王「アタックゼロ ギフトボックス (400g1本+つめかえ360g5袋 (抗菌+プラス 24時間部屋干し臭を防ぐ)」...画像右の箱と手前右のボトル。2,310円(当店平常価格の30%off)。amazonでは2,890円。

3) DCM 洗濯用洗剤つめかえ 1.65 kg(画像左端)。318円(当店価格)。DCMオンライン価格349円。

 花王の2商品は、お中元シーズンが終わったせいだと思いますが、処分品ワゴンにありましたので、特に安いタイミングです。成分表示は全く同じでしたので、1)の質量380g価格273円と2)の質量2,200g価格2,310円を合算し、1)+2)で、計「アタック;質量2,690g価格2,583円」とします。

 < 10gあたりの単価>

アタック;9.60円

DCM; 1.92円

…単純に単価を計算すると、DCMを基準にすると、同じ量ならアタックはその5倍の単価です。

ただ、アタックはドロリと粘性が高く、DCMはチョロチョロと流れます。

洗剤としての本体的性能である界面活性剤の含有比率がその主因と措定しましょう。

 < 中味の界面活性剤の含有比率 >;

アタック;51%

DCM; 12%

…製品ラベルの比率表示を、「製品質量に占める質量パーセント濃度」と単純化して解釈することにします。

 < 界面活性剤1%あたりの単価 >;

アタック;0.19円 (51%:9.60円/10g)

DCM; 0.16円 (12%:1.92円/10g)

…界面活性剤が同じものを使っているとすれば、DCMを基準とすると、アタックは19%高額となります。ただし、互いの界面活性剤の中味がナニであるかは異なると考えた方がよいでしょう。それでもけっこう近い値です。

 < 2kgの衣類を1回洗う際に使用する洗剤の単価 >

アタック;9.60円 (2kgの洗濯物には製品10gの使用を指示)

DCM; 4.81円 (2kgの洗濯物には製品25gの使用を指示)

…洗濯2kgを1回洗うためには、DCMを基準にすると、アタックはそのちょうど2倍の価格となります。

 < 2kgの衣類を1回洗う際に使用する界面活性剤の質量 >

アタック;5.1g

DCM; 3.0g

…洗濯2kgを1回洗うためには、アタックで用いる界面活性剤の量はDCMよりさらに70%多いです。

 ひとまず、洗剤や化学基礎論の専門家でもない庶民のエンドユーザーが、手にした製品表示から計算したとして、ここでいったん納得することにします。

 厳密な汚れ落ち度・ブランドイメージ・香りの好み...などを捨象すれば、結論が出ました。

『アタックは、DCMより20%高額な原材料を、DCMより70%多量に使わせ、結果として、洗濯1回あたりの洗剤費用はDCMより100%高額(2倍の価格)になる。』

 指示通り使えば、同じ洗濯物を洗う場合、アタックなら、1回あたり、多くの金額を払い、多くの原材料を使って、汚れは良く落ちる、というイメージがあります。また、ブランドものの方がPBに比べて、「もっと白く、もっと抗菌作用がありそう」という、消費者にとっては科学的確証はないが「良いイメージ」があり、また実際に感知できる、より「良い」「強い」「キツい」香り、があります。この「良いイメージ」「香り」がブランド物の付加価値なのかなと、現時点で思います。

 明らかに安くついたのでいい気分なのか(DCM)、自分がもつ「ブランドものが持っているであろう付加価値」というイメージにより多く支払った方が気分がいいのか(アタック)...。今の私は前者ですが、後者が持つ付加価値に差額の分だけの価値はあると認める人や、後者が実際に汚れが良く落ちたと実感できている方は、いると思います。両者は、互いに排斥する必要はもちろんなく、共存し続けて当然だと思います。

 アタックを買うのに2,583円も出しちゃったことだし、泥んこにまみれる野球部でもないし、額に汗してきちんと労働しているか怪しい生活をしていることだし、私は、しばらくは高性能洗剤アタックをケチケチと使って、高性能ぶりを実感できるかどうかを楽しみにしたいと思います。

2023/10/09

■ なおす - 起床時間

※ 左;the façade of the church at the Monte Cassino (Wikipedia (En))   /  右;モンテ=カシノ修道院とその日課の例 -『流れ図世界史図録ヒストリカ』(山川出版社)

「朝1:30頃に起きるだなんて、不健康。」と助言をいただいたことが何度か...。「早起きも行き過ぎると不健康」「昼に寝て夜に起きる夜型に近い」「ちゃんと明るくなってから、起きて活動しなくては」など...。ご心配をいただいて、感謝しています。

 きっかけはこうです。冬期に、除雪車がこの狭い小路にも夜半過ぎに来て、わが車庫や倉庫の出入口が硬い雪に閉じ込められます。膝や腰の高さくらいまであります。夜が明けると近所の人たちが起き出して除雪作業をし、排雪溝に短時間に集中して雪を捨てます。と、すぐに詰まって捨てられなくなります。通学時間になると、この狭い道を、徒歩の小学生と高校生が、また彼らの間をすり抜けるように抜け道として使う自動車が往来し、危なくて、道幅を少しでも広くするために、朝暗いうちに早く除雪してしまいたい、という、人に先んじようとするさもしい根性があったというわけです。

 この作業は、ここ約25年間ほど、早朝真っ暗な時間帯、起き抜けに、氷点下で、いきなり心拍数が200近くなるような激しい運動だったりしたます。手押しの除雪機を得て少しはマシですがラクラクになったとは思いません。実家や倉庫など3棟分を4時間くらいかけていました。夜が明けて明るくなると、ぐったりと疲労して...。これは人生の消耗そのもので、たしかに不健康でした。

 去年あたりから、無雪期も、除雪車の来るようなこの時間帯に起きて、机に向かって何か簡単な作業をすると、チョッと気分が良いことに気づきました。「夜は勉強の効率が悪いけど、朝は、起きれさえすれば、むしろ良いかもしれない...」とは、十代の頃から気づいていました。特に夜を楽しめる人間でもないことだし、若者みたいに9時間もぐっすり眠れなくなっているし、いっそさっさと眠って早起きして...という気持ちがあるかもしれません。冬は、ほんとうについ半年前までの25年間ずっと、命の危険を感じているのですが、除雪作業がなければ、むしろ、いいじゃないか、これで、などと感じるようになりました。

 ホントに(生理学的に客観的に)いいのかはよくわからないです。朝型夜型や睡眠時間は人による、時期による、暮らす環境による-緯度や日照時間や温度や湿度、と、一般論はない気もします。(一般社団法人 日本睡眠学会-サマータイム制度に関する特別委員会『サマータイム - 健康に与える影響 (2012年3月)』)

 病院の入院患者は?...;夜9時前後には消灯、朝6時前後には起こされます。十代後半以降の若者が夜9時に消灯されたら眠れるかというと難しいでしょうが、入院しちゃったら、自分のからだを治すためですから、従うしかない...冬至の頃は、6時という起床時間は真っ暗ですが、起きなくちゃだめですよね。それがからだの生体リズムに合うということでしょうか。

 僧院のお坊さんたちは?...;カトリックの修道院のうち、最古の存在は、諸説あれど、ベネディクト会のモンテカッシーノ寺院(6世紀)としましょう(画像)。ここ1,500年間来、今でも、起床後の朝課(Matins)は朝(?)1:00~2:00頃からです。とはいえ、高緯度地方にあるヨーロッパは、その南部に位置するローマですら、緯度は札幌と同じですから、英仏独の緯度になると、通勤通学の時間はまだ真っ暗だったり、その半年後は朝1時すぎればもう真昼の明るさだったりしますので、主の降誕(冬至の頃)か洗礼者聖ヨハネの祝日頃(夏至の頃)かで、修道院聖務日課の時間帯は、年間を通じて多少のズレはありそうです。でもたいていの修道会はこれに続く朝3時台までが、修道院の一般的な起床時間でしょう。日本でも、仏僧の僧院や(高野山大学などの)学僧院も似たような起床時間帯ではないかと思います。

 上の図の右の、高校「世界史」の副教材を見ると、この修道院は、夕方5:15に就寝、明け方2:00に起床となっています。

 だからそのストイックな修道僧の時間帯が末端の庶民のお前にも合うと言えるのか、というのが、自分の疑問。ちょっと似てるんだけどな...。夏至の頃に夕方5時に就寝するのは...、ち、ちょっと...惹かれたりします...え(;^^?...い、いや、もう少し、試したり調べたりしてみたいと思います。

2023/10/08

■ まなぶ - ミミの初めてのデート [3] 大学入試センター試験 - 英語1999本試験第6問

※ 月齢カレンダー (Website; かわうそ@暦さん作成)の月齢出没計算より

ここ2日ほど読んだこのお話の、今日は、揚げ足を取ってみましょう...え? (;^^A

1) 登場人物の名前なんですが...;

“Mimi” という西洋人の名前は、わりと一般的です。それにまとわりつくイメージとしては、「庶民の娘」という役回りです。私には真っ先に思い浮かぶのが、アンリ・ミュルジェールの小説『ボヘミアン生活の情景』、というよりむしろプッチーニの『ラ・ボエーム』の方が通りがいいですか。パリの下町の裏通りのアパルトマンの屋根裏部屋で、クリスマスイヴの晩なのに寒さに震えて明かりもなく、貧しいお針子仕事で肺結核を病んでいて...。

“Robert Rover”という名前ですが、英語な気もしますが、 “Robert Rovère” とフランス語表記も可能です。いずれにしてもいかにも絵に描いたような貴族風な名前です、 “武者小路実篤” “近衛文麿”みたいな...。

話を初めて読み始めようとしたときには、なんだか、身分違いの恋、庶民の娘が貴族にもてあそばれる話...みたいなうんざり感が一瞬脳裏をよぎりました...、す、すみません。18歳の人がマジメに大学入試に向かうセンター試験にそんな話はないですよね。

ついでに “Montcalm street”という地名も、 “Montcalme”(モンキャルム)というフランス語風です。

いかにも西洋のおしゃれな雰囲気を、わざわざ鼻につくように、意図的に設定してくれているってぇわけですね。

2) リンバーガ―チーズについては;

もう10/5以来ここ数日でお話を味わうにはじゅうぶんな知識をお互い得ましたね。「誰だよ、ここで靴を脱いだヤツは?」と思わず問いただしたくなるようなかおり...。

ご参考までに、Wikipedia (Jn)によると;「リンバーガーやその他ウォッシュタイプのチーズを発酵させるために使われるバクテリアは Brevibacterium linens(リネンス菌)であるが、このバクテリアは人間の皮膚表面に生息し、人間の体臭の原因の一つとなっている。このバクテリアが使われる理由としては、リンバーガーを作ったリンブルフの修道士が、もともとは足で踏みつけることによって牛乳とカード(凝乳)を混ぜていたのが起源であろうと言われている。」

3) 赤毛の少年;

「誰だよ、...?」と問い咎めた登場人物は、「一人の赤毛の少年 (a readheaded boy)」でした。

小説・お芝居・ドラマなどの西洋のお話では、登場人物として、1) 主役 = 金髪(ブロンド), 2) 脇役 = 黒髪・栗毛 (ブルネット), 3) ライバルや悪役 = 赤毛、という図式があります。「そんなのは偏見に基づく人種差別だ」などと今どきは苦情がでそうです。まぁ昔からのステレオタイプな価値観ですので、あきらめましょう。ってことは、貴族的な存在のロバートは金髪(ブロンド)に違いない...(;^^

4) 三日月;

お話のハッピーな最後、「ミミとロバートがダンスホールを出たとき、通りは静まり返っていた。彼らは合わせて踊った曲をハミングしながら、身を寄せ合って歩いた。いまや月は高く、薄切りにしたようで、楽しげな小舟のように、彼らの頭の上に揺れていた。(The moon was high now, sliced thin, riding like a cheerful boat above them.)」

ダンスホールを出ると通りは静まり返ってたってことは、かなり夜も更けた時間? このお月様って、高いところにあるってことは、南中付近? で、かつ、薄くスライスしたような形で頭上に揺れているってことは、三日月のブランコみたいなチョいとロマンチックな...? 

天体観測的見地からは、ありえない事態となってしまいました...(;^^。10/3にいっしょに見た通り、三日月は夜更けには観測できないハズ...。画像は、今月2023年10月の、下弦の月から朔を経て上弦の月までの月齢出没時刻ですが、今月10日の「二十六日月」と17日の「三日月」の南中時刻は、それぞれ朝8:14と昼過ぎ1:09…。通りが静まり返る時間帯どころか、朝の通勤通学時と昼休み終了後にまた動き出す時間帯です。(...ココがまさに揚げ足取りという所以である...←なんてウルサいヤツ)

でも、三日月って、あっけらかんとまん丸い満月よりも、いかにも「神秘的な夜」のイメージがありますね。

 でも、ステキなお話でしたね!

■ 今晩10/8の月は、月齢23の有明の月。月の出は23:49に東北東59°。南中は朝6:49。天気は晴れ。今晩も明るい「三日月」を仰ぐことができそうです。

2023/10/07

■ まなぶ - ミミの初めてのデート [2];大学入試センター試験-英語1999本試験第6問


※ Limburger Cheese - Wikipedia(En)

※ お好みでしたら、上の設問をクリックするとチョっと拡大します。

本文に引き続いて、今日は、設問の一部を解いてみましょう。

 昨日のお話の中で、ロバートの心理的変化としては;

 ・ チーズのにおいが気になる(ロバートの最初の発言「そのチーズ、におうね」) 

→・ 次第に彼は、 “ミミが、においのことをひどく気に病んでいる”と、気づく。

→・ “ミミの気持ちを考え、チーズのことには触れないことにし、チーズが存在しないものとしてふるまうと心に決める”...この点を読み取らなくちゃ、というお話だったんですね。


問4 Why did Mimi hold her breath when the redheaded boy asked Robert about the smell?

① She was afraid that Robert would mention the cheese.

② She was worried that Robert would look bored.

③ She feared that Robert would notice the terrible smell.

④ She couldn’t stand the smell of the cheese.


問4 赤毛の少年がにおいのことをロバートに尋ねた際、なぜミミは、息を止めたのですか。

…検討しましょう;

① 彼女は、ロバートが、(自分が持っている)チーズのことに触れるだろうと思って、不安になった。

…コレでいきましょう。

② 彼女は、ロバートがうんざりしたように見えるだろうと、心配した。

…彼がどう見えるかをミミが心配するというのは、ちょっと妙な気がします。

③ 彼女は、ロバートが(チーズの)ひどいにおいに気づくのを恐れていた。

…あのぅ、とっくに気づいているんですけど...。

④ 彼女は、チーズのにおいに耐えられなかった。

…あまりの悪臭に、息を止めてガマンしてたんですね...。


問5 When Mimi heard Robert say “What cheese?”, how did she probably feel?

① She was happy because she realized that Robert really did care about her.

② She was afraid she wouldn’t be able to have a date with Robert again.

③ She was pleased because Robert had forgotten about the cheese.

④ She was happy because Robert wanted to know what type of cheese it was.


問5 ロバートが「何のチーズのこと?」と言ったのを聞いたとき、ミミはおそらくどう感じましたか?

…検討しましょう;

① 彼女は、ロバートが本当に自分のことを気遣ってくれているとわかって、うれしかった。

…コレでいきましょう。

② 彼女は、ロバートとはもう二度とデートなんてできないだろうと思った。

…このひと言からそこまで読み取るのはムリではないかな。それとも彼はミミとの今日の出来事全ての記憶を消し去るつもりだとでも...(;^^?

③ 彼女は、ロバートがチーズのことなんか忘れ去っていたので、喜んだ。

…お気楽なおまぬけカップルで、それなりに幸せそうです...。

④ 彼女は、ロバートが、それはどんな種類のチーズなのか知りたがったので、うれしかった。

…チーズソムリエ検定試験を受験なさるお二人ですか...。その後マニアな蘊蓄で盛り上がったにちがいありません...。


B 本文の内容と合っているものを、①~⑨から三つ選べ。

① It was the first time ever for Mimi to have a date.

② Mimi only reluctantly agreed to do the job for her mother.

③ Seeing Robert dancing with his eyes closed, Mimi felt uneasy.

④ Robert never complained about the cheese the whole evening.

⑤  Mimi washed her hands, but the smell still remained.

⑥ The redheaded boy thought the smell came from the shoes he found.

⑦ Robert explained to Mimi in a whisper why he had said he didn’t smell a thing.

⑧  Mimi’s mother didn’t like Robert, so she gave Mimi some Limburger cheese.

⑨ The moon looked exactly like a slice of Limburger cheese.


検討しましょう;

① ミミがデートするのは、これが初めてだった。

…コレを選びます。

② ミミはほんとにいやいやながら母の代わりにその仕事を引き受けた。

…コレも選びます。

③ ロバートが目を閉じて踊っているのを見て、ミミは気持ちがそわそわした。

…コレもOKです。

④ ロバートはこの晩ずっと、チーズのことには何も不満を言わなかった。

…上でロバートの心理変化について書いた通りです。

⑤ ミミは手を洗ったが、それでもにおいは残った。

…手を洗いたかったけど、ロバートがまっすぐダンスフロアの方へ連れて行ったのでした。

⑥ 赤毛の少年は、自分が見つけた靴からにおいが来ているんだと思った。

…脱ぎ捨てた靴、は存在しなかったです。リ、リンバーガーって、そんなふうなにおいなの...。

⑦ ロバートはミミに、なぜ自分が何もにおわないと言ったのかを、そっと説明した。

…特別なふうに微笑みかけてくれたけれど、自分の言動に関する解説なんてなかったです。

⑧ ミミの母はロバートのことが好きではなかった。そこで彼女はミミにリンバーガ―チーズを渡した。

…娘につく悪い虫に、リンバーガ―爆弾をお見舞いしてやろうかという特別軍事作戦ですね。

⑨ 月は、まさしく一切れのリンバーガ―チーズのように見えた。

…ミミは、においのせいで、もうノイローゼになって精神を病んで幻覚が見えているという、ホラーな結末の物語だったのですね...。

センター試験の出題者も、ずいぶん楽しんでお仕事をなさっているようすです...。


2023/10/06

■ まなぶ - ミミの初めてのデート ; 大学入試センター試験-英語1999本試験第6問


軽い小説を読んで楽しんでみましょう。とはいえ、大学入試問題です。だのに、軽いとか楽しむとか、受験生に対して不謹慎なことを言って、ごめんなさい。ま、しょせん大学受験とは縁のない一般庶民が、低レベルで読んで楽しむだけですので、大目に見てください。

 1990年の第1回センター試験から2007年までは、センター試験の英語問題の最終問第6問目は、英米文学風な小説やお話(の要約版)でした。その後、2008年から最終回の2020年まで、おそらく日本人出題者によって書かれ入念に推敲を重ねた濃密な評論文でした。いずれを手に取っても、私のような外野席から見物するだけの庶民にとって、珠玉のような英文ばかりです。

 ひとまず、読んでみましょう...と言っても、英文をそのままここに写し取っても読みづらいかもしれないので、私の拙い訳で恐れ入りますが、今日はサっと内容を見るにとどめましょう。

出題者の、素材選定・要約・単語差替などの労力に、敬意を表します。

---...---...---

「行ってくるね。」ミミは、母屋のとなりにある家業の食料品店にいる母親に声をかけた。初めてのデート。ロバート ローヴァーが彼女をダンスに連れて行ってくれるため、ちょうどやってきたところだった。こんなことになるだなんて、彼女にはほとんど信じられなかった。待っている間、ずいぶん長く感じられたが、何を着ようかと何度も何度も考え,やっとお気に入りのブラウスを着たのだった。今、とうとうロバートがやってきた。彼女の目には彼が麗しく映った。髪にはきれいに櫛を入れてあり,今まで見たことのない黄色いセーターを着ていた。ステキだ、とミミは思った。

2人が玄関を出ようとしたとき、ミミの母親が店から顔を出し、ロバートに挨拶をした。それから彼女は白い紙で包んだ箱をミミの手に渡した。

「サリー トンプソンさんへのリンバーガーチーズだよ、ミミ。輸入物のリンバーガーが、今日、1ケース入ったんだよ。サリーに、今夜、お前が届けるからって約束したんだよ。」

「今夜!?」と、ミミはチーズに目を落としながら、おうむ返しに言った。「明日じゃだめなの?」

「悪いけれど、サリーに約束したんだよ。」母親は言った。「じゃ,2人とも楽しんでおいで。」

「まあいいわ。ロバート、行きましょう。」と彼女は言った。

生まれて初めてのデート。ロバート ローヴァーとの初デート。それなのに、大きな、きついにおいの、やっかいなチーズの箱がくっついてきたのだ。彼女はチーズのことは忘れようとした。いま、私はここにいて、ロバート ローヴァーと一緒にダンスに行くところなのよ、と自分で自分に言い聞かせた。彼女は彼の方をちらっと見上げた。

「そのチーズ、におうね。」と彼が言った。

彼女は、チーズを、彼から最も遠くなるように持ったのだが、そのにおいは、腕を這い上がってくるかのようだった。

2人はモンカーム通りに出た。ミミは番地は知らなかったが、以前その家の前を通ったことがあるので見ればわかると思った。「あ、ここだわ。」彼女は呼び鈴を鳴らしたが、返事がなかった。すると、彼女は呼び鈴の下の名前がトンプソンではないとに気づいた。違う家に来てしまった。まぁ、困ったわ、と彼女は思った。彼女はコートのポケットにチーズを入れ、ロバートのところへ戻った。

「違う家だったみたい。」と彼女は言った。「きっとここに住んでいると思ったんだけどな。」

「それで、僕たちどうしよう?」とロバートが尋ねた。

ミミは唇をかんだ。今から家に持って帰ることもできなかった。チーズは一緒にダンスに持って行くしかなかった。「行きましょう。」と彼女は言った。とてもみじめで、他に何を言えばいいか思いもつかなかった。彼女とロバートは、チーズのひどいにおいと同じくらい重苦しい沈黙の中、ダンスホールまでの残りの道のりを歩いた。

ダンスホールに着くと、人でいっぱいで、コートを掛ける余地もなかった。ミミは手を洗いたかったが、ロバートは彼女をまっすぐダンスフロアの方へ引っ張っていった。

ミミはロバートがまるでスズランのようないい香りをさせているのに気づいていた。で、あたしの方はと言えば...、リンパーガーチーズのにおいだ...。

ミミは、心を込めて踊った。ロバートは目を閉じていた。たぶん、あたしとこのにおいのことを忘れようとしてるんだわ、とミミは思った。

少ししてからスナックのカウンターに行った。飲み物を飲んでいるとき、ロバートの視線は、ミミの頭越しだった。うんざりしているんだわ、とミミは思った。ああ、ほんとうに今夜は大失敗だ。彼女のポケットから立ち上る強烈なにおいは、刻一刻と強くなっていった。

一人の赤毛の少年が、立ち止まってロバートに話しかけた。「誰だよ、ここで靴を脱いだ奴は?」と少年は言った。

ミミの心は沈んだ。

「何か、におうぞ。」赤毛の少年は言った。

ミミは息を止めた。ロバートの方を見ることができなかった。

「別に、僕は何もにおわないけれど...」とロバートは言った、「君はどう、ミミ?」

一瞬、彼女は、自分の聞き間違いだと思った。ロバートは、彼女に、特別なふうにほほえみかけていた。彼女はびっくりして彼を見つめた。「いえ、私も、何もにおわないわ...」やっとのことで彼女はそう言った。

「きっと君の気のせいだよ」ロバートはその少年に言った。

ミミは自分の耳が信じられなかった。それから彼女はワっと笑った。なんてことだろう。ロバートが自分をかばってくれているんだ。素晴らしいことだった。チーズが、急に、2人だけの秘密になった。

ミミとロバートがダンスホールを出たとき、通りは静まり返っていた。彼らは合わせて踊った曲をハミングしながら、身を寄せ合って歩いた。いまや月は高く、薄く削ぎ切られ、楽しげな小舟のように、彼らの頭の上に揺らめいていた。

「チーズのこと、ごめんね」とミミは言った。

「チーズだって? 」ロバートは微笑んだ。「チーズって何のこと?」

2023/10/05

■ まなぶ - チャプリン「独裁者」の演説

※ 左;チャプリン『担へ銃』  /  右;リンバーガ―チーズ (Wikipediaより)

史上名高い20世紀最高の演説の一つ、チャプリン『独裁者』の最後の6分間。初のフル・トーキー映画(映像と音声がシンクロした映画;現在では常識ですが...)で彼は何をアピールしたかは、誰にでもハッキリとしています。独裁者=暴力に対する強い怒り。民主主義に対する信念。絶対に揺れない意志を学びます。

プー ヒトラーは1933年に政権を掌握し権威主義・軍国主義・全体主義化を進めたのですが、この危険な体制の進行を、苦虫をかみつぶして見ていたイギリス等のヨーロッパ諸国は、ロシア共和国 ソ連を刺激したくないばかりに放置。これに乗じて、ロシア ナチスドイツは、2022年 1939年にウクライナ ポーランドに侵攻開始します。自称「枢軸国家」のお友だちのアジアの狂犬 北ちょ 大日本帝国は、その少し前のクリミアの (イタリアによる)エチオピアの侵略のときと同様、これに祝福メッセージを送り、自らも近隣諸国の侵略に乗り出します。...チョイとコロナワクチン副作用で、記憶が二重になって指が滑る現象があるようです。見苦しくてすみません...。

私が大学生の時に初めてこの映画を観た際には、てっきり戦後になってから作製されたお笑い映画だと思い込んでいましたが、観た直後に調べて、ピッタリ同時代だとわかって、恐怖感にとらわれました。

 チャプリンとヒトラーは同じ歳。チャプリンが撮影を開始したのは、ポーランド侵攻、ユダヤ人強制収容開始、パリ陥落と、ナチスドイツが破竹の勢いでヨーロッパを席捲しつつあった頃で、ピッタリ同時代のヒトラーの演説を、チャプリンは、あのデタラメなムチャクチャなドイツ語風の恐怖演説でマネしたわけです。ヒトラー本人も、もしかしたらこの映画を観たのではないか、少なくとも噂は耳にしたはず...などと言われます。

 まったくリアルタイムでの、独裁者=暴力に対する強い怒り。民主主義に対する信念。リアルタイムに主張したがゆえに「絶対に揺れない意志」を学び感じることができます。

このトーキーに先立つこと二十数年も前の、第1次大戦の終盤に、チャプリンが制作したのが、『担へ銃』で、塹壕戦の中の兵士の生活や敵との戦いぶりをコミカルに描いていますが、ほぼ同じ状況設定で、後にレマルクが『西部戦線異状なし』でより具体的に、どころかゾっとするような嘔吐するような記述で写実しています。それは、イマ私が入力しあなたが読んでいるこの瞬間のウクライナ・ロシアの若者の描写そのものです。

 さて、第1次大戦以降さまざま投入された殺人兵器(兵器はそもそももっぱら殺人のためにのみ用いる用途ですので、この4文字は同語反復なのですが)のなかに、毒ガスなど感覚神経にダメージを与える兵器があるそうです。

チャプリンの「担へ銃」には、その一つとして、チーズが出てきます...え(;--?

塹壕戦の描写で、主人公の兵士に故郷から届いた小包の中味が、リンバーガー・チーズだとわかった瞬間、彼は直ちにガスマスクを装面し、包みを開いてすぐ敵の塹壕へ投げ込み、敵軍の将校の頭を直撃してチーズを頭からかぶり、あまりの悪臭に塹壕の兵士たちがパニックに陥ります。

鼻を突くような猛烈な悪臭だった...のですか? リンバーガーとはどんなすごい兵器 チーズなんでしょうか。

2023/10/04

■ あるく - 砂沢溜池


溜池のダム状になっている堰堤の道。りんご畑に囲まれているエリアですが、景色が開けて岩木山がきれいに見えます。この溜池は、北側(画像右側)がダム状になっている堰堤で、平野の縁辺にあってすぐ下に田んぼの平野が広がっています。他の三方は、りんご畑で、このあたりから岩木山の裾野が始まるような地形です。

冬期閉鎖道路ですが、春も夏も秋も、湖面と山と空が開けて、明け方や夕方の景色が爽やかです。

2023/10/03

■ まなぶ - 月の見え方 - 青森県立高校入試問題 - 理科 - 平成25年第6問目

左; オリエントスター(時計ブランド)ウェブサイトより / 右;シンプル月齢カレンダー (fxillさん作成無料アプリ)

月が、毎晩、ほんとうにきれい! 煌々と明るいです。先週くらい、9月第4週の日曜の上弦の月から、先日の「中秋の名月」を経て今週末の下弦の月まで、しばらくの間は、すばらしく明るい月を楽しめます...。1か月前の「年間最大の満月」(国立天文台の表現;俗に「スーパームーン」)ほどではないかもしれないけど、天文に詳しくもなんともない私が、肉眼で見たとして、大きさは南中時には区別できないですが、きれい!

「満月(月齢15)」は、真夜中に南中するというわかりやすい存在ですが、三日月や半月は...。三日月でも半月でも、右が明るいか左が明るいかでチョイと呼び名や見える時間帯が変わったりなんかして...。いや、日本国民ならば中学校で学習したハズ、などと責められても、そんなぁ、月相(ムーンフェイズ)だなんてそれなりにパズルみたいし、よく理解しないまま高校入試なんか受かり社会人になり老人になり地球上を去る人だってふつうにたくさんいそうです。いずれにしても、あちこちにいろんな時間帯にいろんな形をして顔を出すお月様に、ヒョっと出会うのは、リクツは置いて、大きな楽しみです。

上の画像は、別に自分の時計の自慢だったり欲しいブツを挙げ連ねて喜んだりするサイトじゃないつもりですが(私の時計はamazonで883円のチープカシオです...あ、いや、言わなくてよかったか?)、機械式の時計の文字盤に29.5日周期の月相を組み込むのは、たいへんな技術なことでしょう。ステキだなぁ...(けっきょく物欲しそうな顔)。ま、今どきは、月相がどうしても知る必要があって腕時計を見る、などという人はありえないですが、その意匠が多くの人の気持ちを魅了するのはもっともな気がします。


※ 青森県立高校入試問題H25年理科第6問を多少改変 (クリックで拡大)

この難解な「月の見え方」が、他の天体の見え方と組み合わされて、やはり、高校入試問題の常連さんとなっているようです。なお、入試問題の問題文や画像は、私が勝手にほ~んのちょっぴりだけ改変してありますので、青森県教育委員会に「けしからん出題だ」との苦情をねじこまれないようお願い申し上げます。

※ 図1 ; 理科教科書「科学3」学校図書

 入試問題を解くには、上の図1に置いたような、中学理科の教科書の図をよく理解しなくては...。でもこの説明は、中学3年15歳の平均的理解力のある人にとっては、なかなかの意味不明物です。どの教科書のイラストも似たり寄ったりです。すでに理解している人が見れば、なるほどと当然に理解できます。
 理解できないって? お呼びじゃないね、みたいな「真理を理解しているわたくしが、お前たちに説明してやっている」という理系を標榜する方々の典型的な説明のしかたに思えます。世界中の理解を得る努力などいっさいしないまま、科学的にわたくしが正しいので原発処理水を海洋放出して差し支えないという傲岸不遜なすばらしい思想は、ニッポンのリケーのすべての皆さんにもれなくじゅうぶんに蔓延して会得されている日本人科学者の思想的土壌です。これに毎日付き合わされる薫陶を受けている中学生や高校生の皆さんは、きっと涙が出るほど苦労して喜んでいることでしょう。

さて、つらい中学高校生活を送ったようすで一人で熱くなっている誰かさんの個人的怨恨感情は遠く見捨て、色鉛筆でも使いながら、一人ゆっくりスローモーションで理解していければ...と、中高生に対して心から願うことにして...(いやいや、人の心配より...)。

出題例の問題(5)の中にある図2の「目視して右側が明るい『月齢3の三日月』の見え方」は、「月齢26の三日月」と対照的ですが、どちらもじつに魅力があります(何がどう魅力かは主観的表現です)。図2が南中するのは午後3時頃で、宵の口を過ぎた頃の6時間後に西の地平に沈みますが、月齢26の三日月は明け方3時頃に東の空に昇り始め、リクツでは朝9時頃に南中すると言えますか。意外な時間帯に意外な位置に、自分は主役じゃないけれど、ほっそりときれいに控えているふうな、三日月。しかも夜更けや深夜には、空を見上げても三日月には会えない点もちょっと意外な気がします。

どっちの三日月も、時期が合えば、宵や暁の、緋色や橙色の空に、ハッキリ明るい金星と一緒に見えて、その美しさに、自分の馬鹿げた感情をいったん置いて、思わずため息が出ます。今晩も夜半に明るいお月様に、週明けには三日月に、会えるかな。