2023/10/14

■ なおす - 万年筆の洗浄-1-日頃の水洗い


毎日使う万年筆。インクがなくなりそうなら、どう補充しましょうか。私が主に使うカートリッジ・コンバータ両用式について、 私の場合はこうです;

これは個人の好みの問題ですが、コンバータを首軸に装着したままインク瓶の上で補充というワザが、不器用な私には難しいです。ほとんどが吸入式の輸入品もです。不器用なヒトって、こんな風に使うのか、しょうがないな、ということで、大目に見てください。

この補充行為ですが、一般には;まず、インク瓶の蓋をあけます。次に、万年筆のキャップと胴軸を外し、1) ペン先がインク瓶に接触しないよう、かつ、2) ペン芯がインク液面下に、かつ、3)首軸が液面上に、という3つの条件を同時に満たすよう、クリアランスの非常にタイトなインク瓶開口部直径内にて、シビアな上下左右空間を保つアクロバティックな空中静止の体勢を保ちます。その間ずっと「インクが指につかないように」と祈りつつ、恐る恐るコンバータのツマミを押したり回したり...。静止状態が要請されるがゆえに左手で懸命に保持する物体に対して、あろうことか右手で小刻みな運動エネルギーを加え続けます。...曲芸を強いられている気がします。

 ((…ということは、インクをべったり指につけたことがあるかも))

この曲芸の作業の間じゅう、インク瓶のインク液面はその表面積を大気中に露出開放中。「インク瓶がひっくり返りませんように」、「大気中を浮遊中の菌類特にカビ胞子類の皆さんや他の細菌類の皆さんに見つかりませんように」との多様な祈りも続々と加わります...。

((...ということは、インク瓶をひっくり返したことがあるかも))

((...ということは、インク瓶の中のインク液面にカビが浮いているのを目撃したことがあるかも))

コンバータにインク補充後はティッシュで首軸先端を拭くのですが、その際も「インクが指につきませんように」「ティッシュがペン先やペン芯のフィンとひっつきませんように」と最後の祈りを唱えつつ...の綱渡りの心理状態が続きます。

最後に、胞子類菌類細菌類のみなさんをインク瓶内部に大気圧充填して、蓋を閉じます。

インクという有機物豊富な培養基と、密閉したインク瓶内部という高湿で嫌気性の環境とで、何か生命体がすくすくと育ってくれるでしょう...。

以上の一連の行為は、何らかの宗教的な精神の修行ですか!?...なんちゃって、コンバータを愛用の方、ごめんなさい!不器用なヤツが何十年もインク瓶と生活を共にすると精神も荒廃してこようかというものです...。万年筆から遠ざかっていた時期がありますが、ボールペンやシャーペンの発達という理由以外に、コレを思い起こすと二の足を踏んでいたのかもしれません。

じゃぁ今のお前はどうしているのか、というと...。

ベストなのは、新品カートリッジを次々に充填...。もっとも作業がハヤい・ラク・キレイ・衛生的です。が、毎日使うことを考えれば、コストの点で、あらゆる筆記具中で最も高額に維持することにもなるので、この選択肢はナシです。やはり私もインクは瓶で購入しています。

コンバータを首軸に装着したままでの吸引はせずに、空(カラ)のカートリッジに、2mlバレル程度のシリンジで注入して再充填します(テルモなんかでなくてもダイソーで十分です)。

書き繋ぐべき状況でインクがなくなったら、シリンジ+カートリッジ(または、シリンジ+コンバータ(Pilot;CON-70N))を使う場合、シリンジでインク瓶から0.9ml程度を吸入し、すぐインク瓶に蓋をします。これだと、インク瓶液面の大気開放は15秒間程度。首軸からカートリッジを取り出し、チュっと注入して首軸に挿し戻せば、すぐそのまま書き続けられます。シリンジは、あとで、カップやビーカ内で水を吸引し、引き上げて台所シンクに排出、の作業を繰り返して洗うだけです。速いし、指をインクで汚すことはありません。

切迫した状況でないならば、インクが無くなったこの機会にいっそ首軸からコンバータなりカートリッジなりを外して洗った方が精神衛生によいです。カラのカートリッジを首軸から外して首軸を水洗いし、カラのカートリッジにはニードルを奥まで挿(さ)して2回程度水を入換え注入します。

ふだんの水洗いの際には、首軸に、別に用意してあるカラになったカートリッジを挿し、そのカートリッジの逆側にも穴があけてあって20mlバレルのシリンジ(画像最奥)に挿し、この状態で首軸をビーカ内で水没させて水を吸引、引き上げて台所シンクに強い勢いで排水します。2,3回繰り返します。

透明軸のカクノやプレピーで同じ作業をしてわかるのですが、首軸内部のペン芯のフィンは、使用中はインクがまんべんなく回ってフィンはインクに浸っています(画像手前のプレピー)。ただの水洗いでは、首軸内に残存したインクは全く取れないです。この点で、輸入品のような吸入式の万年筆は、水洗いしただけでは、新旧のインクが首軸内で必ず交わります。他方、シリンジによる水の吸入や排出により、その水圧で、スッキリきれいになるのが、透明軸の場合は目視できます(画像手前から2本目のカクノ)。

以上の作業で、万年筆は、スッキリ素速くきれいになりました。これだけキレイになったカクノを見ると、これでじゅうぶん...と思うのですが...。(明日に続いたりします)