2025/06/12

■ まなぶ ■ 万年筆のネーミング-2:セーラー

セーラー プロフィットカジュアル

 セーラー社製の万年筆のラインナップは、これまた把握するにはなかなか複雑です。

 金ペンを採用したメインのラインナップを、単純化すれば、"プロフィット"シリーズと"プロフェッショナルギア"シリーズの2本立てでしょうか。

 両系統の命名の違いは、軸の形状によるようで、前者が、"葉巻"みたいな、両端形状が丸い"バランス型"(↑トップ画像), 後者は、"葉巻の両端を切り落としたような"ベスト型"↓、というカテゴライズのようです。

左: セーラー プロフェッショナルギアKOP
右: パイロット カスタム漆

 事情に詳しくない末端消費者の私が思うのは、「なぜ"profit"と"professional gear"? 」「販売の骨格をなす2系統の、両概念にどのようなコントラストがあるんだろう?」...

 片や"利益→成功"、片や"専門家向け→機能性と耐久性"という拡大解釈に出るものなのかな。概念ペアが「対照」を成していない気がして、わだかまりがあります...などというのは小うるさいかってな思い込みですが。

 セーラーの万年筆はどれも、個人の感覚としては、書き味が、サリサリとした気持ち良いかろやかな抵抗感があり、紙に書き綴っている心地よさがあります。

 対して、昨日のパイロット製の万年筆が、ヌルヌルとインキの潤沢さを味わいながらペン先を紙から上げずに書き続けられる心地よさを感じます。いずれも独特なたのしさだと思います。

 万年筆は、社会的実用性と言う点では、(もちろん個人的な生活上での話ですが、)もはや使い物にならないと言ってよいです。もっぱら自分の楽しみとして毎日使うだけですので、その用途には、パイロット製の特性と好みのベクトルが合います。...以上は、純粋に個人的な問題です。

 セーラー製は、他方で、印象としては、上で述べた「純粋に個人的楽しみ」という点に全力を傾注したデザインの製造期間限定品が多いです。その点は"万年筆の社会的実用性"という私見と類似しているのですが、i) その発売頻度が高く、ii) 価格も高く、また、iii) 最大の難点は、自分で持つにはあまりにも気恥ずかしくなるネーミングである点、遠巻きに眺めて楽しむにとどめている理由です。

セーラー「四季織-山水シリーズ」

"プラスチック製の工業製品と『イメージ』とを抱き合わせにして『高付加価値』商品として販売する"という、この業界の体質が、しかし、消費者には大いにウケている点、私は、称賛と批判の彼岸にいて眺めることにしています。

左「アフタヌーンティー・シリーズ」
右「カクテル・シリーズ」