2024/01/10

■ なおす - 万年筆インクの溶解


1/6の続きです。

1/6の画像

 そもそもこの実験(?)の『目的』は、『万年筆インクのうち、顔料と古典を誤って前後して充填し、結果的に万年筆ペン芯内で混合し固着したものを、融溶して洗浄する場合、手近で入手可能な液体のうち、どのようなものが有効か』を調べてみることです。

 混合して固着したインク(1/6の画像)に、トップ画像の通り、以下の表組み合わせで、それぞれ溶液を、約5ccずつ、滴下します。滴下の際は、溶液を滴下する都度、シリンジのバレルとニードルを、水道水で水洗いしています。


 トップ画像では、⑥の水以外の全てが、滴下した瞬間に、固着していたインクが溶液中に均一に拡散したようです。このままひと晩放置します。

図1
 図1は、その24時間後。容器を、静かに傾斜させて、下にたまった溶液はシリンジで吸引して排出したようす。振ったり、拭いたりは、していません。

図2
 図2は、それを正面から撮影。以下のようです;

i) 両端の①(染料+古典)と⑦(染料+顔料)は、いずれも図上部の「液だまり」から全量が流れ去っています。アルカリイオン水でほぼ融溶して排出できたようです。

ii) ②~⑥は、インクが「顔料+古典」という、強固に固着する(凶悪な)組み合わせです。万年筆のペン芯内部でこれが発生することを想定しています。うち、⑥の「水道水のみ」に浸した場合は、上部の液だまりがほとんど融溶していないとわかりました。

iii) ②~⑥のうち、上部の液だまりから、融溶して下に流れ落ちた量が最も多い順に;

③のアルカリイオン水激落ちくん

②の水酸化ナトリウム水溶液

⑤のアタックZero

④のチャーミーMagica

 この時点における、『目的』に対する結論は、

1) ③の「アルカリイオン水激落ちくん」が効くようです。万年筆界隈でささやかれていた通りでした。

2) ④と⑤の、「台所洗剤」と「洗濯用洗剤」は、じゅうぶんに融溶したとはいえないので、これらを用いて万年筆洗剤の代用とする意味は無いと思いました。

3) 比較対照群とした⑥の水道水は、古典インクの色素は流出したものの、液だまりの固着は融溶せず、洗浄効果は無いと言えます。

 このまま翌日まで、室温に放置します。

図3
 図3は、その翌日です。室温でほぼ乾燥していました。これに、水道水を5ccずつ、①~⑦のそれぞれに、シリンジで滴下し、少し振動させて、時間を置かずに、静かに傾けて、画像容器の下方から排出しました(下のラベルシールが濡れて汚れています)。

 昨日以降放置し、今日、水道水を浸潤させる意味は、「すすぎの有用性」の有無を見たいということです。

 すると、液だまりがスッキリきれいになったのは、②の水酸化ナトリウム水溶液でした。③と⑦のアルカリイオン水激落ちくんは、顔料粒子がプラスチック容器に固着しているようです。

 結論です。

『目的』を達するには、今回使った溶液のうち、「水酸化ナトリウム水溶液」がベスト。次いで、「アルカリイオン水激落ちくん」。

ただし、

1) 水酸化ナトリウム水溶液を用いるのは、取り扱いが日常生活から乖離し、難易度が高い。

2) いずれの溶液を使うとしても、じゅうぶんに水道水ですすぎ洗いをする必要がある。

3) 混合したインクが特定の溶液に比較的効果的に融溶することは今回わかったが、実際に万年筆洗浄に使って効果があるのかどうかは、この実験では必ずしも明確ではない。

 今後は、

1) 「万年筆専用洗浄液」がプラチナとパイロットから発売されているので、これを、水酸化ナトリウム水溶液と激落ちくんと比較して確認したいです。

2) 破損しても損害の少ない「カクノ」「プレピー」で、インク固着を再現して、水酸化ナトリウム水溶液と激落ちくんを試してみたいです。