2024/09/12

■ なおす ■ ママチャリ - ブリヂストンアルベルト


へ!? ロードバイクやMTBの「競技用自転車」をエラそうに(?)書いてきたキミが、ママチャリのことを書くのかい?

特別にメーカーやブランドに思い入れて購入したわけじゃないんですが、20年近く前に、母親のために買いました。

現行モデルでは、「アルベルトL型26 インチ」。税込みで92,000円になっているようです(2024年)。マ、ママチャリのくせに、た、高い~!...です、よね!?

今どきは、「ママチャリ」なんて、ホームセンターで、毎年春に、1万円チョイで新車に買い替え、で、気分もサッパリかもしれません。言い換えると、雪国では、4月に買って、11月で捨てる、半年余りの使い捨て商品です。中高生なら3年間はもたず、「3年で2,3台」がふつうです。冬は親がクルマで送り迎え、他方でチャリは放置されてサビ放題です。

でも、私の場合は、母親が「自転車があれば...」と言い出した際に、メンテして愛着をもって長く乗れるのがいいナ、という発想がありました。で、けっこう価格が「高いな」と思いつつも、日ごろ競技用自転車で何かと出入りしていた弘前の大学前の自転車屋さんに頼んで、ブリヂストンの高級車種(?)を、躊躇なく注文しました。

■ とはいえ、やはり、12月から3月までは必ず積雪のある津軽地方では、鉄道やバスといった公共交通機関はアクセスしづらく、やはり1人1台クルマなしでは、ごく日常的な「買い物」「受診通院」などもままならないです。

自転車は、年輩のヒトが通年使うには、「気候」「買い物」「荷物」「片道2km以上」「服装」などの点で、無理があります。結局、母親は、ほとんど乗らなかったようです。

先日、改めて見ると、タイヤは、新品成型時の「ヒゲ」が残っているようです。通常は20km程度乗れば摩耗して無くなるモノです。乗車した積算距離は、20年近くの合計で数十kmも無いでしょう。

私は、個人的趣味で、競技用自転車(ピスト(競輪)、ロード、MTB)を組み立てたり整備したりしてもう数十年...。今回初めて「アルベルトを徹底的にキレイにしようかな」と整備台に載せ、細部を見て、う~んと感心。

アルベルトは、2003年のデビュー以来20年もフルモデルチェンジがないのですが、パーツには、年を追う都度、「軽量・高剛性」なシマノ競技用自転車と「ママチャリ需要」のフィードバックを感じます。

「ママチャリ」であるためにベストを尽くした良心のカタマリです。コレは競技用自転車という華やかな需要には無い、しかし、地味でいながら量的にはマッシヴで強圧な需要です。

競技用自転車は、「非常に狭い限られた用途」「想定される応力方向への高強度な耐入力」に関し、高度な専門知識を、パーツ設計者からエンドユーザーに至るまで正確に共有し、メーカーが全面的に責任を負います。言い換えると、想定外の用途や入力加圧に対しては、あっさりと破断し崩壊しますが、それは全面的にエンドユーザーの過誤であり、死亡事故を含めてエンドユーザーが全面的責任を取るべきです。

「ママチャリ」は違います。「想定された方向のみからの入力」など甘い設計思想で、メーカーには許されません。「走る・曲がる・止まる」以外の、「雨なのに・不整路なのに・スカートなのに・重い荷物くくりつけてるのに、乗る」「倒される」「ぶつけられる」「放置される」他にも、想定外の事態にある程度耐える必要があります。

競技用の部品は、このような場合、壊れればいいだけです。「悪いのはユーザー」です。逆に、ママチャリユーザーからは、「悪いのはメーカーだ」と責められます。

シマノのママチャリ用パーツの設計思想と、ブリヂストン・アルベルトの設計思想は、これに緊張感をもって備えています。結果として、競技用自転車よりも、ずっと複雑な構造となり、重量も増しますが、反面、コストも勘案するという、絶望的な課題を突き付けられて、これを乗り越えようとする意志を感じます。

今回、初めてアルベルトを整備台に乗せて、その進化を痛いほど実感しました。「ホイールの組み方=必ず6本ダブルクロス組」「内装変速構造」「リア・ドラムブレーキ」に、競技用部品とは異なる進化の過程をつくづく噛みしめます。

振り返って考慮すると、例えば昭和の、自動車が誰にでも買えなかった時代、自転車は、日常的な移動と運搬の中心的存在で、疲労・摩耗・交換の耐久性を上げるために、金属部品は、ごく一例を挙げれば、ですが、ワイヤー制御ではなく鉄棒制御でした。時代を経て、アルベールのフレーム/シマノのパーツは、より高強度でより軽量なワイヤー制御を達成しているわけです。

この外観だけを低コストで模倣したホームセンター販売の1万円チョイのママチャリは...;

安易で無知な設計思想。震えあがるような粗悪パーツ。まさに、節約したつもりの数万円の金額とあなたの家族の命の金額は、等価値の引き換えです。

 話はそれますが、いずれにしても、ヘルメットはかならずかぶり、かつアゴのストラップはかならずキッチリ留めましょう!チャリで倒れたら、まず腕を打ち、直後にかならず頭をちからいっぱいアスファルトにぶちまけます。かぶるかぶらないは、イコール死なないか死ぬかに直結する、命の瀬戸際で、ご自由に選べます。いまどきの数千円のヘルメットは、うんと軽量で、スタイルもよく、ベンチレーションもいっそう良くなっています。この40年以上、チャリのヘルメットだけにいったい何十万円費やしたことか。だから、何度もころんだのにイマ生きているんですが。)

 手入れもしないまま1,2年で醜悪になって廃棄するチャリより、手入れして何年もずっと愛着と満足で接することのできるアルベルトを使った方が、と、つくづく思います。

「中1のときに買ってもらったアルベルトを、"高校卒業するまで/大学を卒業するまで”、乗った」という方、「さらにその後、実家の父母が乗っている」という方を、身近に複数知っています。

なお、今回この話を貫いて、過荷重で高重心で無駄にメンテポイントの多い「電動アシスト自転車」は、どの車種もまったく信頼していません。ごめんなさい。

弘前市内の、アルベルト販売台数がダントツで多い、大学前の自転車屋さん。先日(2024年9月)に訪れた際、目の前に、2003年製造の最初期型アルベールが、点検整備されて、当たり前の顔をしてキレイに新車と並んでいました。使う人がこのお店を当然のように信頼して、整備を任せ、整備する人も、20年前に売ったときと同じように明日もまた使うのが当たり前だろうという表情でした。こうでなくちゃ!