■ 曇天で低温ですが、せっかくのゴールデンウィークですので、少し足をのばします。
■ 県境の難所・坂梨峠を越えます。高速道路は使わないので、いつになく交通量の多い東北道を眼下に見ながら、山深く険しい閑散とした旧道の峠道をゆきます。幌を開けて、新緑の息吹を感じながら、ゆっくりマニュアルミッションを楽しみます。
■ 炭鉱の町小坂に。ここにいる間だけ晴れました。行楽の人も多く、休日の空気が漂っています。華やいだ雰囲気です。🔗
2024/4/6
■ 画像は財閥系鉱山事務所、現在は博物館です。この炭鉱の町の辛苦と感動の歴史を象徴する建造物で、展示は、掘削した酸化銅精錬の化学的機序から、鉱山開闢と盛衰の歴史、理想と人格的潔癖さに満ちたドイツ人技師と日本人技師、建築物の19世紀的構造に至るまで、知的な感動や感情的な波乱に大いに満ち溢れた建物です。世のあらゆる"博物館"はこういう感動に満ちています(🔗
2023/8/3)。いずれここのほんの一部でもご紹介できればと思います。
■ 秋田県道2号を山に向かいます。今日は、ふもとの大きな滝「七滝」付近の道が、桜満開のトンネルです。道の駅を併設していて、明るく柔らかい雰囲気で大いににぎわっています。
■ さらに高度を上げて駆け上がりましょう。一年中いつでも険しい雰囲気に満ちている県道2号"樹海ライン"(冬季閉鎖)。昨年は熊による人命被害も出ました。一年を通じて朝晩に視界のまったく利かない濃い霧が発生し、秘境感に満ちています。今、天候は雨混じりの曇天です。それでも、新緑と満開の山桜の美しさ、醸し出す静けさは、ここならではの格別なものがあります。でも、今年は、高度を上げるとほどなく、ブナやダケカンバなど高層樹林帯は、いまだ残雪の多い冬の厳めしい面相で、ヒトが侵入するのを戒めるかのようです。
■ 十和田湖南岸の高所難所たる発荷峠(はっかとうげ)、やや下って鹿角・大湯からまた駆け上がって「県道 田代平・大清水線」と、山また山を縫った冬枯れの荒涼とした高原の道を、次々と、小型軽量スポーツで、テンポ良く進入します。迷ケ平から、いつものブナ林の小径へと分岐し、ゆっくり分け入ります。
■ 自転車より遅い速さで...。今日はこの道に会いに来たのですから...。
■ 立ち止まります。目を瞑ります。自分という現実的存在...を考え直す原点...。(トップ画像↑も)
cf. 🔗
2024/5/8 ...それが、キールケゴル的実存...ヤスパース的実存、だろうと...。
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■ 新緑は、やはり例年よりずっと遅れていて、まだまだ先のようです。深呼吸します。降りて、うぅろうぅろとあるきまわり、反省します。曇天...。ざわめいて話しかけてくるブナ木立...。ミュラー&シューベルトは菩提樹だったかもしれないですが(🔗
2023/8/22)、私にとってはブナです...。思索は深く沈潜します...。が、裸の樹間と曇り空のもと、空気はむしろ明るくひやりとすがすがしく感じられます。この1年の病んだ精神は、ここに置いて帰り、ブナの森にて昇華してもらいます。
■ 急峻な狭隘路を「下の牧場」(私の勝手な命名)に降ります。まだ芽吹いていないので、いつになく見通しが良いです。
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cf. 昨年初夏のほぼ同地点 🔗2024/7/7
■ 道幅いっぱいに前を何か農業用の大型重機がゆっくり進んでいます。この距離を保ってこちらもいっそうゆっくりゆきましょう。どうやら牧場仕様のトラクタに牧草用ブロードキャスタ(肥料散布機)をアタッチしています。播き終えて戻るところのようです。お昼休みの時間ですしね。
■ さらに標高を上げて、「上の牧場」(私の勝手な命名)に上がります。ここは、見事なブナ原生林を一部伐採せずにそのまま牧草地の中に残して開拓した牧場です。
■ 放牧前ですが、このブナの森で暮らす牛たちは色が黒に近い日本短角種で、耐寒性に優れた屈強な、個体平均質量0.5t(500kg)を越えるような大型種です。それはいいんですが、こちらがそろりそろりと近づいて通り過ぎようとしても、みんなでゆっくり立ち上がってこちらに近づいてくる性質があって、私のような部外者は、すこしでも刺激してはいけないので、クルマは、ヒトがあるくより遅い速度を一定に保って通り過ぎるようにしています。無防備な1tのroadsterや1.3tの987Boxster↓なんかコロリとひっくり返されそうです。軟弱者のフリをして通過したら、彼らもギロリと睨んでゆっくりやり過ごしてくれます。ふ、ふう...
cf. 🔗
2024/7/7
■ 今日は牛のみんながいないし、通過するクルマなどゼロなので、生物学的大型哺乳類は私一人だけです。クルマを路肩に停めて、長年ゆっくり観察したかったブナの木を、今日こそじっくり見、道をゆっくりあるいて何度も往復して堪能し、思いに耽ります...; 暗く曇った空、奇怪で巨大なブナ原生林、その元で寡黙に暮らす、コチラをいつもギロリと睨む短角牛たち...。ココの生態系以外の全世界の創造物をいっさい受け付けないような隔絶された雰囲気...。曇天、低温、強風下で、ひとり存分に浸ることにします。
■ 昨日のミズバショウ生息地といい、なかなか得難い経験です。曇天であるがゆえにいっそう、日常から超絶乖離したこの雰囲気...。やはり昨日同様、去りがたい思い。あるくような速さでクルマを動かし、何度もクルマを停めては深呼吸して、記憶にとどめておきたいと思いました。