2024/06/03

■ なおす - 自転車のフラットバー化

ドロップハンドルをフラットバーに

■ 毎日のように降ったりやんだりの気温が低い日々が続いています。また自転車の話ばっかりなんですが、肝心の「乗って楽しむ」ことができなくて、整備やパーツ整理ばかりで鬱々としています。ま、どうでもいい話なんですがネ。

 「ドロップハンドル」の自転車は、「運動」「エクササイズ」「趣味のライディング」であって、「街乗り」「ママチャリ代わり」といった日常使いする気にはなれないです。

 そこで、ロードバイクのドロップハンドルを、マウンテンバイクみたいな一直線形状のバー、つまり「フラットバー」に交換したものを、用意していました。

 かつては、自宅からクルマで行かなくてはならない場所には、自転車を持ち込んでいました。その方が、「クルマで現地まで行き、現地では自転車で」という抜群の機動性を得られたからです。たとえば、所用で自宅から遠い都市の中の数か所に立ち寄る、休日に観光地など巡る、という状況には、最適な気がします。その際の自転車は、ドロップハンドルじゃぁちょっと...。と言って、もろにママチャリをクルマに積むのは重過ぎるし大きなサイズのクルマを所有していなくては...。

ドロップハンドル

 そんなわけで、前後輪を外せば、ハッチバックやステーションワゴンやならば、こんな風に積めます。また、セダンの後部座席とトランクにフレームとホイール(車輪)を分けて積める、というワケです。

2005年頃の撮影

 とはいえ、1. ロードバイクを所有し、2. そのハンドルとブレーキの取り回しを改造し、3. 日常的にホイールやチェーンラインの分解と組付けに慣れていて、4. 小型乗用車に積載、...という4点すべての条件をクリアするなんて、そんなオマエみたいな変なマネがふつうの人間にできるわけないだろう!?...と、健全な生活人のあなたからお叱りを受けそうです...(;--A 

 実は、20年ほど前の5月の大型連休のある日、上の画像のステーションワゴンで岩手県平泉の中尊寺周辺を巡った際に、朝に早めに到着し、閑散とした公営駐車場で荷台から取り出して組み立てようとしたところ、ちょうどそのタイミングで小学生を満載した観光バスが到着し、大挙して降りてきた小学生の皆さんに、グルリと取り囲まれて、「わぁすごい!」「このチャリは半端じゃないな~!?」「組み立ててちゃんと動くのかよ!?」と細かい野次馬の皆さんに品評され見世物となった経験が...。期せずして小学生のアイドルになってしまった...のは、あれが最初で最後の思い出...にしたいものです...。

2024/06/02

■ なおす - スプロケット洗浄

洗浄後のスプロケット

「スパナ」などの金属「工具」の表面には、ざらざらした「梨地仕上げ」が施されています。下の画像奥側にあるNISSAN車載工具(オープンスパナ)の表面加工の通り。これは、整備の際に油で汚れた手で触ってもなるべく滑らないようにとの実用的な配慮です。

奥側(オープンスパナ);NISSAN 車載工具  /  手前側(メガネスパナ);KTC Nepros

 その手前側にあるツルツルピカピカした工具(メガネスパナ)は、京都工具(KTC)のNeprosシリーズという、自動車やオートバイの修理を趣味とするアマチュアのエンスーやマニア向けのちょっと高級な工具です。表面加工は「鏡面仕上げ」です。撮影した部屋の天井のLED電球が2コ反射しています。画像は露出もピントもまるでヘタなのですが、実物は、つい見入って凍りついてしまう美しさ。この工具をシリーズでずらりと並べると、息を呑むような美しさと息が止まるようなクレジットカード翌月引き落し予定明細額で(?)、単に整備のために使う道具に過ぎない地位から、眺めても楽しめる、眺めながらお酒を飲める、という、マニア心をくすぐるような販売戦略によるものです。

 さて、今日は、また自転車のギヤ板(スプロケット)洗浄で...。つまんないウェブログでごめんなさい。ま、このウェブログは、「あいつ生きてるかな?」という確認の意味もありますので、今日も無駄に元気に生きているということで。

 前回(🔗→ 5/25)は、マウンテンバイク(MTB)用のスプロケットでした。アレ(Sram XX)は、立体蜘蛛の巣構造というか、細胞質構造というか、インゴットから削り出した芸術作品ですが、今日のは、そういう技術以前の1980年代のロードバイク用です(いずれもご紹介済み🔗→ 5/26)。

 とはいえ、SHIMANOの7400系Dura Aceのモノで、当時の完全なプロ用ハイエンド機材でした。そんなものを私が持っているというのはオーバースペックです。ま、アマチュアでもヘボ素人でも憧れが手に入るという1点をとっても、SHIMANOという会社は、素晴らしい技術力と販売戦略です。

 それはともかく、80年代90年代と使用して、チェーンの油汚れは、洗浄しても取れません。鏡面加工ならひと拭きでキレイになりますが、梨地であるがゆえに、油や泥が摩擦熱で固着した汚れがルーペサイズの隙間に入り込んで、パーツクリーナーや各種有機溶剤などでも取り切れるものではないです。

※ パーツクリーナーでていねいに洗浄してこの状態です。
触ってもサラサラした乾燥状態です。

 今回、これを即座に廃棄処分しようかとも思いましたが、フリマ(個人売買)サイトで数百円であっても買って楽しんでくれる人がいるならオファーしてみよう、買い手がつかなければキッパリと捨てよう、と思い、だめもとで最後のあがき、「台所洗剤に1週間漬けてスポンジで」という、あまりパワーのなさそうな、せめてきれいにしてお別れの儀式とでもいう作業をします。

 使用済みウェットティッシュの円筒状のケースを切って、台所洗剤と水で漬け置きします。


 1週間して今日、スポンジ3Mスコッチブライトでこすります...気休めです...ちょっとくらいきれいにしたらそれで...おや...え?...とれてますよ!汚れが。あれ、何年も何度も試したはずなのに、今こんなに汚れが取れるってことないだろう!?



 勢いづいて、1枚1枚を裏表ともていねいに磨きます。


 キレイになっちゃった! 新品同様じゃぁないけれど、またチャリに装着して使いたいくらい!? でも、もうだめですよね、そんなこといつまでも考えていちゃ。使ってくれる人がいたらその人に、いなければ、きれいに磨いて感謝して捨てる...んですネ...。

2024/06/01

■ まなぶ - 連休明けの3人 (3)

パイロット website「色彩雫見本帳」より
https://www.pilot.co.jp/promotion/library/010/index.php

書道のお手本って、どんな言葉が思い浮かびますか? 小学校で書道を始めるとしたら「希望」「元気」「努力」など二字熟語。書道は、学校外で教室に通うとすれば、級位段位を設けて研鑽を積む形が多いです。進むにつれて、そりゃ2字熟語や4字熟語じゃなくなりますよネ。

 毛筆書道の会派流派は非常に多いです。他に、硬筆書写の世界つまりペン字で美しい字の研鑽を積む芸術分野もあって、コレは会派流派が集約されている印象です。

 文房具メーカーのパイロットでは、万年筆の需要掘り起こしも兼ねてか「硬筆書写の廉価な通信講座」というユニークな事業を実施しています。ここの「今月の課題」は、ウェブサイトで公開されているので、その級位クラスの課題を見てみましょう。

パイロット ペン習字講座 「今月の課題 2024年5月」
https://www.pilot.co.jp/promotion/penmanship/info/202405.html

 わかりやすい日常のことばですネ。パイロット講座は、楷書でも行書でも提出可能だそうですが、順調に進級するには「希望をもって元気に努力」する必要があるようです。

■ 5月の連休明けにチョイと机に向かった人を、3人ほどご紹介中。おとといの続きです。

 Cさん。年齢30代、研究職。地方の旧帝大の修士卒の方です。

 明るく楽観的なCさんは、数学理科が好きだし得意。文学のようなあいまいさ、美術や音楽のような主観的バイアス、公民科目のような結論なき狭い価値観の衝突。これらに比べると、数学や物理のような「疑義のない客観的な一つの真理」、化学や生物のような「物質たちのクッキリとした個性と多様性」。迷いなく進み、思考と結論を積み重ね、楽しめます。大学進路もそうなりました。希望の大学に合格し、理系である自分に対する自信、誇り、プライドも高まります。

  Cさんの大学受験の頃と時期を同じくして「リケジョ」が流行語に。学部・修士と彼女があゆむと同時進行で、女性研究者への社会的注目度が爆発的にアップしました。すばらしい好条件で研究職に就き、迷いのない生き生きとした毎日です。

 若き研究職のまさに花であり花形としての毎日なのですが、世間では、輝くリケジョのアイコン的存在の方が発見提唱したナントカ細胞が、世界的注目度がピークになった...ら、なんだか妙な雲行きになってきました...。

 職に就いてからの趣味は海外旅行です。お盆・年末年始・5月大型連休は海外のリゾート地を満喫します。「研究職」の毎日からの大きな解放感が得られ、非日常の休日で大いに充電してまた仕事に臨みます。

 コロナの世の中になりました。気にせず海外旅行したいのですが、社内の同僚たちの目がちょっと...。また、仕事は、研究の現場があるのですが、基本的に自宅でリモートワークです。

 その状況下でお盆や年末年始のお休み...、とは言っても、家で仕事、家で休日...。世間のニュースでは製薬会社の若い研究職夫婦間で殺人事件など、気持ちがしぼむ世の中になってしまいました...。

 家で過ごす休日のある日、同居する母親に簡単な頼みごとをされました。母のお友達に書道何段だかの方がいて、いつもは展覧会を見てお食事やおしゃべりをして...だった習慣が、コロナ禍で「書道展覧会がオンラインにて実施」になっちゃったのだそうです。母は、展覧会のウェブサイトを見たいとのことで、Cさんの大画面パソコンを操作して展覧会を見せてもらいたいのだそうです。

 Cさんは書道には興味がないです。学校時代にすでに気づいた通り、芸術作品などは、見る人によって価値が異なる主観的バイアスが、知性では納得できず、理不尽です。が、母の頼みごとはたやすいことでしたから、いっしょにPC上で展覧会のウェブサイトを見ました。

 見ると、母の世代の書家の方々の毛筆は、楷書体はなく、草書体...。行書体もあるのですが、平安仮名で綴った詩歌のようです。隣で一緒に画面を見る母は、喜んだり感心してため息をついたりしていますが、Cさんは、どれを見ても意味不明です。

 が、ずっと見て進むうちに、硬筆書写の展覧会にもブラウザで遷移できました。そこで、ペンで書いたその展覧会の作品群を見ると、楷書も多く、行書も読みやすく、意味が分かる...どころか、なんだか美しさもわかります...

 い、いや、わかる、を越えて、その美しさに引き込まれます。

 見るほどに、蜘蛛の糸よりも細く、経験したことのない美しい行書体や仮名の連綿体が大画面いっぱいに広がり、まったく新しい価値の世界がどんどん奥に広がっていく気持ちになりました。

 このコロナのご時勢、私も硬筆書写を始めたい!とまで、こころを打たれました。

 調べてみると、教室に通わなくても、「パイロット」と「日ペンの美子ちゃん」が通信講座の双璧とわかりましたので、親しみがわく「美子ちゃん」の、ペン字の「競書誌」を毎月購読して課題(お手本)を書いて提出し、進級していく形で、自分も練習して、あの美しい文字を目指すことにしました。

 新しい価値観・新しい人生の目的ができました。コロナ禍の閉塞した毎日に張り合いが出ました。

 最初は10級からスタート。毎月、清書した課題を郵送で提出。2か月後の競書誌で自分の名前と進級したかどうかを見ることができます。もし順調に進めば、...2級,1級,準初段,初段,2段...5段...準師範,師範という最高位に登りつめるシステムです。

 級位クラスと段位クラスでは、課題(お手本)が違います。級位クラスの手本は、10文字以内のごくやさしい日常表現です。

 1カ月間、ほぼ毎日課題を練習して、清書して、送るのが、彼女の日課となりました。

 Cさんは、9級, 8級, 7級と、毎月どんどん進級します。

 夢中で練習して半年以上...。意識下で気づいていたかもしれないチョっとした違和感が...。

 彼女は学部時代以降ずっと、科学論文を読んで書いてきました。その際は、誰にでもわかりやすい日本語や英語に慣れ、こころがけてきました。必要な情報が、客観的に、短く、装飾なく、主述が完結した一文に、おさめられていなくてはなりません。

 他方で、ペン習字のお手本って...。感傷的だったり、途中で切れている感があったり、誤った表現に思えたりと、国語的な感覚が、自分の価値とは整合しない気が...。

 彼女が違和感を感じた課題が何なのか、その時点における課題がもう再現できないのですが、類似の課題の例は、どうやら、以下の↓ようなものらしいです;

日本ペン習字研究会「ペンの光」

 「LEDの多彩な光が」;え?...光が、...どうしたの? そこまで言って感極まったの? それきり言って息絶えたの? 

 「すっかり冬の装いで」;え?...装いで、それで、どうしたの? 続きは?

 「先んずれば人を制す」;繰り返し練習すればするほど、な、なんだかこれまでの課題から一転して急に攻撃的な雰囲気を感じるのですが...。

 「霞始めてたなびく」;これは新暦では2月にあたる七十二候の「霞始靆」に由来する漢語なのはわかるんですが、現代日本語では、「はじめて」という単語は、「経験・時期的に」の意味で「副詞として/名詞(体言)として」使う場合は、「初めて」という漢字をあてたほうがいいんじゃないかしら。「始めて」だと、動作を表すマ行下一段動詞「始める」の連用形に接続助詞の「て」を接合した一文節で、動作の並列状態を指すのじゃないかしら...。疑問に感じたCさんは、図書館で数冊の「類義語辞典」や岩波の「広辞苑」を調べます。すると、Cさんの理解と似たような説明がありますが、追加的に、"慣例的にいずれも用いられる"点を書き添えています。

 Cさんは、自分が大学受験までに学んだ「日本語の現代文法と古典文法」vs「今月の課題」の齟齬を感じたことが、もう数回。その都度、「今月の課題」の日本語を図書館で何冊かの辞書に相談した経験をしました。するとそのたびに「どちらも誤りではないが」「慣用的にそう用いられる」などといった結論に達して、自分は大学受験時代に理系だったけど、国語だって人並み以上には勉強したのに...と、自分の知識や自信やプライドが揺らぎ、腑に落ちない気持ちになりました...。

 極めつけが、日常的な、あまりにも日常的なお題、お料理名です↓。「美子ちゃん」でも「パイロット」でもたまにあるのですが、Cさんには初めての体験だったこの課題は、積もっていた疑問「習字はきれいな字を書けばそれでいいんだけど...」「でも、毎日練習する甲斐がある、ちょっと日常を離れて上を見上げるような『努力』『希望』的なお題がいいんだけどな」「私、小料理名を毎日繰り返し書いていて、楽しいのかな...」を明確な意識に浮上させてしまいました。

日本ペン習字研究会「ペンの光」

 さて、そんなふうに疑問を感じ始めた途端、これまでの情熱が色褪せてきました。

 すると、順調に昇っていた進級が、3級でぱたりと止まりました。先月も3級、今月も3級でした。だからいっそ1カ月お休みして、気を取り直して次の課題を清書して提出したものの、やはり3級...。

 この連休中こそ一生懸命に書道の練習を重ねようとして与えられた課題が「サンマの塩焼き」や「本マグロの中トロ丼」だとしたら...。「サンマの塩焼き」を繰り返し激しく真剣に清書しなくちゃ...し、しなくちゃ...。た、食べればおいしいんだ...、なごむんだ...、楽しいんだ...、と言い聞かせる自分。

 なんだか気が進まないような気がするペン字課題を自宅にこもって練習して、今年の5月の大型連休は終わりました...。え? 「充実感」? 今は、こころに寒い風が吹く言葉です。これを清書して提出して来月も3級なら、私の連休って...。

 知性では納得がいきません。こんなに頭を抱えた連休は経験がありませんでした...。

 これまで、爽やかな5月の連休は、青い海と白い砂浜の海外リゾートで、大いにのびのび解放感...だったのにナ...。

 私は、Cさんが自力でブレイクスルーを成し遂げてくれることを、心の中で祈っています。