2025/02/09

■ なおす ■ モンベルのジッパートラブル 2

ソフトシェルに採用の、「閉めれば見えなくなる」コンシールジッパー
(赤いジッパーは、それとは別の防水ジッパーです)

モンベル製品のトラブルその2は、コンシールジッパー(®YKK)の破損です。

 ソフトシェルや超軽量ウィンドブレーカなどに採用されています。

 "ソフトシェル"とは、生地のタイプのこと。十数年前頃、登山ウェアの世界で一世を風靡し、そのまま定着しています。"...表地のシェル素材は撥水性に優れ、風・雨・雪を適度に防ぎます。通気性も高いので行動中でも蒸れにくく、樹林帯での行動開始から、稜線歩きまで、幅広いシーンで快適に着用できます。防風性と保温性を備え、ストレッチ性にも優れる高性能ウエア。アウターレイヤーとして、ミドルレイヤーとして、1枚でマルチに活躍します。..."🔗モンベルWebsite

 この謳い文句は本当だと思います。私は、ソフトシェルが山歩き界隈で普及し出した2000年代から、もう6着程度購入しています(トップ画像もその一部)。いまでも真夏以外は毎日のように使っています。

モンベルWebsite製品カタログより同等現行品

 モンベル製品は、このウェアのジッパーに、YKK製の"コンシールジッパー"を採用して、防風防滴性を高め、かつ見た目のスッキリ感を演出しています。

 ジッパーの「噛み合う無数の歯」を「務歯(Element)」と言いますが、これが見えない構造です。

YKK Websiteより

 このYKK製品は、本来は女性服に採用されることを想定しているようです。生地の縫い目にしか見えないごく細い線にジッパーが隠れており、ゆえに務歯は極めて小さいナイロン製です。

YKK Websiteより

 見た目がジッパーだとはわからなくなるシンプルさとトレードオフで、開け閉めの際の抵抗が極度に重く、その際の速度が極度に遅いです。

 耐久性があると思いますか?...トレッキングや山岳登攀での酷使を前提としている衣類に...。

 個人的に、ソフトシェルの使い勝手が革命的に良かったことから、2010年代に次々と3着購入し、うち最初の1着は、このコンシールジッパーの破損で廃棄。ナイロン製の務歯がグニョグニョに変形。次も、また次も、コンシールジッパーが破損したので、2016年頃、メーカーのモンベルに修理を依頼。有料。見積が高額だったので、ならばこの際、多少高くても「耐久性のある通常サイズの務歯とスライダをもつメタルジッパーをつけてもらえないか」と本社修理工場にたずねたところ、OK。

 で、修理から上がってきたものがこれ。

衣類の中央にメタルジッパー取付
両脇のポケットはコンシールジッパーのまま

 ダ、ダサい!...さすがモンベル。

 また、フラップ無しなので、防風防滴性は無くなりました。

 見た目から、当初は使うのがイヤでした。でも、ジッパーは滑らかで速いです。使いやすくなりました。

 私の着ているものなどどうせ見る人はいないし、カッコ悪くてもいいじゃないかということで、今でも愛用しています。あ、コレ着てモンベル弘前店に行った際に、店員さんが目を丸くして首を伸ばしてジッパー部分を見ていたことが...。

2025/02/08

■ なおす ■ モンベルのジッパートラブル 1


モンベル製品の愛用者です(🔗2024/11/21)。そのウェア類も日常的に使っていますが、日常使いだとすれば価格は高め、デザインはダサめ(?)、ただし機能性はハッキリ高く、耐久性はあらゆる衣類を軽く上回る超級です。

 でも...ウェア類に限らず、モンベル製品のギア類(山岳用品)にも、上のリンク2024/11/21で述べたように、「ジッパー(ファスナー)トラブル」は定番です。

 今日は、まず何と言ってもモンベルのジッパートラブルの筆頭に挙げられる、シュラフ(スリーピングバッグ・寝袋)の「噛み込み」例。


 図は#0(対応温度域別で-5℃以上、"国内3,000m級の冬山用")です。が、ま、モンベルの温度帯域は甘いというのが定説だと思います。いやそれはどうでもいいのですが、#0に限らず、これまで30年ほど使ってきた#0から#7までの8種類すべて、どの年代/製品世代でも、ジッパートラブルは、ほぼ発生していました。とりわけ、厚いタイプ、#0, #1, #2など冬用の、ロフトが大きい(布地などがジッパーの表裏を覆うように張り出している...防寒のため)タイプで頻発します。

 「噛み込み」が起きたら、解決するには、”逆方向にゆっくり動かす"のがYKKお勧めの方法ですが、スライダは強く固着してもう1mmも動かせないのがふつうです。そこで、噛まれた布地をかなり強い力で引っ張る必要があります。


 何度も「噛み込み」と生地の無理な引っ張りを繰り返すと、スライダの上下の顎(レール)間の口厚(上下ギャップ幅)が広がり、スライダを移動させる前もさせた後もジッパーの歯は開いたままで噛み合わない(閉じない)状態に...。ふつうはこれを見ると「壊れた」と思うでしょう。私も何度も経験しました。が、プライヤかペンチがあれば、ギャップを狭めることで修理可能です。が、もしホントに3,000m級の冬山でそうなったら...。

 「キミの使い方に問題があるんじゃないの?」と言われてもやむを得ないかもしれません。私だけがヘンな使い方をしているのでしょうか。拙ブログをずっとご覧でしたら、少しは察していただけると思うのですが、私は所有物はかなり大切に扱って長持ちさせる方だと思います。

 でも、その本来的な使い方からすると、ジッパーを開ける際も閉める際も、かならず中に入った状態でします。ということは、ジッパーという製品一般に想定された角度とは違う方向から強い力を加えられるのが常です。

 誰でも、寒い時期、シュラフに入る瞬間や出る瞬間は、やはり急いで開け閉めするのではないかと予想できます。気づかいはしているのですが、ジッパー周りのロフトが高く周辺の布地は極薄ですから、布地の噛み込みは必須です。

 シュラフというものを知った1970年代から、このジッパー部分はずっとこの製品に宿命的につきまとうアキレス腱のような気がします。まるっきり異なるベクトルで用いられる点を意識した、何か全く新しい発想の技術的なブレイクスルーに、ずっと期待して数十年...。

2025/02/07

■ まなぶ ■ お誕生会は、レストラン貸し切りでするもの...なの? - 青森県立高校入試問題 - 英語 - 平成21年第5問


あなたは8歳で、遠く離れた所に暮らす祖父母に会いに行くとしましょう。めったに行けない特別な日。あなたはうれしいです。

 ところで、何がうれしいですか? "家族みんなで過ごす特別な休日の気分"という雰囲気が大きいですよね。もっと突っ込んだ「うれしさ」の実利的本体は? 現金をもらえる? まだお金の価値はよくわかっていないからそれは除外。子どもなら、「いとこたちと遊べる」「いつもと違うおいしいものが食べられる」という期待が大きいのではないでしょうか。

 後者について、2通りありえます。

i) おばあちゃんお手製の、あのごちそうにありつける

ii) おじいちゃんおばあちゃんが外食に連れて行ってくれる

 i)は、たとえば、盆暮れという特別な日に連れて行ってもらえる、農家の祖母のつくる"甘い茶わん蒸し"。茶わん蒸しなんか、今となっては大したものじゃないかもしれないのですが、昭和の時代、自家製となると、たいへんな手間のかかった特別な日のごちそうです。孫たちの顔を思いながら、ただでさえ忙しい盆暮れの時期の、前の日朝早くから、20も30もの蒸椀、巨大な鍋、膨大な材料の山のなかに祖母はうずまるようにして仕込みます。

■ ii)の経験は無いのですが、現代では当然あるでしょう。せっかく孫が来るのだから、ひとつ豪華盛大に、高級旅館の割烹、高級ホテルのレストランなどに、予約を取って、孫たちを引き連れて、クルマで乗りつけます。孫にとっては、ハンバーグステーキ&ビーフシチューセットが、いつも食っているのと違って葡萄酒みたいなお酒の匂いがきつくて、大人向けの味なのかな。

■ その孫たちがティーンエイジャーになる頃、祖父母は他界。

i) あの茶わん蒸し、もしかして盆暮れに準備するのってたいへんだったんじゃないのかな。もう二度と...。祖母の手仕事を味わえた幸せが、今になって実感され、それは生涯続くでしょう。

ii) あの高級ホテルのレストラン、もう二度と...、って、ふつうにまだあるしぃ、今度は親にあのハンバーグを食わせてもらえるかな...。味は...思い出せないが、ま、ハンバーグだからいいじゃないか。

 そのティーンエイジャーが親になる頃、父母は他界。

i) 祖母のあの茶わん蒸しは、もう永遠に失われたけれど、もう大昔の記憶でも、自分が生きている限り覚えているあの味わい。自分にも他人にもとうていマネできない複雑な料理の仕込みに、祖母のまごころを実感。

ii) 祖父母の家に行くたびに、あちこち外食に連れていかれたのが、もう大昔のことで記憶は薄れ、ドコで、ナニを食ったかなど忘れてしまった。けど、ま、外食に連れて行ってくれる人たちだったのは確かだったかな。

 i)は私の経験です。ii)のように「家族で外食」の経験は絶無です。私にとってはi)が貴重な思い出ですが、i)でもii)でも、今どきそう重大な問題ではないかもしれません。

 まったく同じ事例とはいえないのですが、特別な日、と言える「お誕生日」。お誕生会は、自宅で家族で? それともレストラン貸し切りで? 青森県立高校入試問題の場合を見てみましょう。あい変らず恐れ多くも拙訳で:

"ジェニーは8歳。おばあちゃんが大好き。ジェニーの家は祖母の家から遠く、そうたびたびは会えなかった。

ある日ジェニーが「お父さん、私はおばあちゃんの誕生パーティーをしたいの。どう?」と言った。「それは素晴らしいね。駅の近くに良いレストランがあるよ。ロブスターキングっていうんだ。私は店の主をよく知っている。そこでパーティーを開こう。私が予約しておこう。」「ありがとう、お父さん。」

父親は電話に駆け寄り、レストランに電話して、パーティーについてウェイターに話した。「申しわけないのですがブラウン様、店主は今ここにおりません。お嬢様の考えはわかりますが、来週の日曜日は閉店しております。」ブラウンさんはそれを聞いて悲しかった。「わかりました。ありがとう。店主さまによろしくお伝えください。」

いくつか他のレストランにも電話をしたが、予約を取ることができなかった。ジェニーは泣き始めた。「お父さん、私たちどうしたらいいの。」「心配ないよ、ジェニー。私がレストランを見つけよう。」

父がずっと電話帳でレストランを探しているときだった、電話が鳴った。ロブスターキングの店主のグリーンさんからだった。「ブラウンさん、お嬢様が、おばあ様のために来週日曜にここで誕生パーティーを催したいとのこと、ウェイターから聞きました。」「ええ、でもお店は閉まっていると。」「何人の方がパーティーにお越しですか?」「4人です。」「実はその日ここで、私の父の誕生パーティーを開く予定なんです。2つのパーティーを一緒に開くのはいかがでしょう? 人が多いほど楽しいでしょう。」「本当ですか。あなたのお父様にお願いしていただいたのですか?」「そうです。父は2つの楽しいことがあれば、みんなもっとうれしくなるだろう、と言っています。ですので、どうぞレストランにお越しください。ビュフェ式のパーティにします。」「どうもありがとうございます、グリーンさん。」

「ジェニー、良い知らせだよ!私たちはロブスターキングでパーティーを開けるよ。盛大なパーティになるよ、きっと。」「ほんとう? どうやってできるようにしてくれたの?」父は電話での会話をジェニーに聞かせた。

2つの誕生パーティーが始まり、20人の人々が集った。ジェニーはプレゼントを祖母に贈った。ブラウンさんは自分の娘にこう言った。「ジェニー、店の主のお父さんはステキな人だよ。彼の親切なことばのおかげで、今日、私たちはパーティができたんだということを覚えておきなさい。」すると、彼女は店の主の父のところにあゆみ出て、「ご親切をありがとうございます。私はあなたのことは忘れません。お誕生日おめでとうございます!」彼女は彼にプレゼントを贈った。その場の誰もがほほ笑み、しあわせだった。"

 "ハッピーエンドでよかった!ほのぼのとこころあたたまるお話で...す...ね..."って、なんだか素直にこころがあたたまってくれない気もチョっとします。お誕生会って、どうしても"パーティ"をしなきゃだめ? しかもそれを"レストランで"しなきゃだめなものなの? という疑問。

 ■「そりゃ当然だろう」という声もあってよいですが、「う、う~ん」の声の余地も同等に、どうぞ認めてください。なんだか、出題者たる青森県教育委員会の偉い方々の生活水準の高さと価値観の乖離をここでも(🔗2023/11/16)また感じてしまったのは、私だけかなぁ。受験生のみんなはどう思うんだろう。