■ 「生きている」という実感。痛いほど感じた瞬間って、思い出せますか。
■ 人生の重大な場面では何度かあったはずですが、日常的に確かめることのできる趣味が、私の場合、15歳の時から50年近く、「自転車」でした。
■ 中学3年のとき買ってもらった「スポルティフ」タイプの自転車。MIYATA製でした。定価59,800円値引きナシだったのを覚えています。1970年代の話です。うれしくて、東京での大学生活半ばまで、7,8年間、頻繁に自分で手を入れつつ乗りました。🔗
2024/04/14
■ 多くの山岳路を選んで乗って、苦しい思いの対価として、開ける展望に、大きなWow体験。これは現実か、自分の脚だけでたどりついたのか、と思うような光景。下り坂の爽快感。
■ 大学2年の終わりに、下宿の駐輪駐車スペースにきちんと停めていたところ、契約していた別な方のクルマの車庫入れの際にひっかけられて踏みつぶされ...。その人は、私のチャリが凝った競技自転車だったこと、防犯登録が青森だったことを意識して、青森と言えば強い競輪選手で有名だ、それ系のヒトのだったらどうしよう...と、蒼ざめたそうです。詫びも補償金もかなり誠実な対応をしてもらいました。が、同等の新しいチャリを一から買うには無理があるし、そもそも大学1,2年の頃は大学の勉強がたいへんすぎて電車で往復するので精一杯、往来頻繁な都心23区内で一般道を乗る気にもなれなかったところだったので、自転車はあきらめました。
■ 内臓疾患で病室の天井蛍光灯を見て暮らした20代の大半の年月後、多くの人たちのおかげで少しずつ回復したのですが、よく見かけるイタリアン製のクロモリフレーム(クローム・モリブデン鋼をラグにロー付けで溶接塗装した骨格)を使ったロードバイクの芸術品のような美しさに、やはり乗ってみたくなりました。
■ はじめ最底辺クラスのものを購入しました。奇しくも、中学時代と同じ、「MIYATA製、処分価格59,800円」でした。それなりに心躍る毎日でしたが、フレームやパーツの素材や構造の知識を得るにつれ、結局は次に別に新たにオーダーするに至りました。
■ その際に、そうとう無理して、フレームを丹下プレステッジチューブ、金属パーツは初めてシマノ デュラエース (SHIMANO DURA-ACE; 以下D/A)のフル装備で組みました。
■ 初めてまたがった日のあの瞬間の感触を今でも思い出します。まるで有機物の集合体である何らかの生物にまたがったような、まったく音もなくヌメリと動き出す異様なスムーズ感。
■ 1991年頃の話です。
■ それ以来、ロードバイクを、自分で組み、乗り継いできました。からだの健康だけでなく、こころの健康も支えてもらった思いです。
■ 今年で、ロードバイクをやめることにしました。
■ 何台もあるロードバイクやマウンテンバイクを、いっきに一瞬にして捨ててしまう、という手も、一区切りつけるためには効果的かもしれません。
■ しかしそんな度胸などあるはずもなく。かといって、完成車状態で人に譲るには、もう時代遅れでしょう。結局、徹底的に解体して、売れるパーツだけ売却処分、あとは廃棄処分、と決めました。
■ 売却するに際して、これも徹底的に洗浄し、磨き、グリースアップして、さらに実戦配備してもらえるくらいキレイにして売ろう、それで悔いなく処分したと言える、と思いました。安くてもいいんです。手を離れてのち、もしかして誰かの役に立つかも、という小さな望みが湧きます。それで気持ちにケリがつきます。
---...---...---
■ その1991年頃購入のD/Aのパーツは、今もすべて、手入れとグリースアップを重ねて、手元にあるところ、クリーンアップして売却します。
■ 手始めに、自転車コンポグループの象徴的存在といえるクランクセットを。
■ 型番7410は、史上初の手元変速システム「STIレバー」デビュー時のモデルです。
■ FC-7410は、武骨で古典的な7400から見ると、発想もデザインも、抜本的にくつがえしたフルモデルチェンジでしたが、「ビッグマイナーチェンジ」の位置づけで、一転して美しいデザインとなりました。
■ ところが、華奢なデザインのFC-7410の初期ロットは、三大ツールのピレネーやアルプスの山岳ステージで、剛性不足から、プロ選手が踏み込むと勝手に変速するなどと、プロ機材としては致命的な欠陥を多数指摘されました。
■ これに対して、シマノは、直ちに根こそぎ作り変える改良版をリリースしました。が、型番7410は変えることなく発売し直したという、カンパニョッロに「オモチャ」とののしられた史上初の手元変速システムSTIをどうしても軌道に乗せたいシマノの信念・執念・苦しさ・良心を感じる印象的な製品です。※ 🔗
2023/07/27
島野工業は、大阪堺の日本刀の鍛造技術に出自する技術屋さんですが、今や...。
■ 径1インチの今となっては細身のクロモリフレームからアルミオーバーサイズチューブへの過渡期で、カーボン素材だなんて知らない時代でした。
■ 今これを組み付けるとしたら、やはり往時のコルナゴのマスターオリンピックのような美しいメッキのローづけラグ付きのクラシックなクロモリフレームがベストマッチでしょうが、アルミでもチタンでも、やや細めのラグドカーボンも似合う気がします。
コルナゴ マスターオリンピック + Dura-Ace 7410系