2023/11/18

■ なおす - 低所得世帯向け給付金


低所得世帯に「物価高騰重点支援給付金」1万円が市から支給されるとの通知。春の「物価高騰対策...」に続いて今年2回目です。


2023/11/17

■ きく - マーラー 交響曲第5番 嬰ハ短調 - シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団


1980年代の、私が気づいたのは半ばくらいから、「マーラーブーム」とほぼ同時に「ブルックナーブーム」。どちらも大学生上がり無職の病人の私が聴いたら、何か、調性が破綻しかけていて、ただでさえ生活がつらいのに、いっそう悲観的になる音楽でした。

 うち、マーラーの交響曲は、1番、4番と、できるだけ平和な曲になじみ、次に2番、3番と、まだ調性になじむ曲を。ここまでは、怖いので、いつでも片足を抜きかけているかのように、FM放送をカセットテープに録音したものを繰り返し聴くのみで、お金はかけないことにしました。で、意を決して次の段階に行こうと思い(おおげさなヤツ...)、聴いたことのない5番について、1986年に、シノーポリのCDをいきなり国内盤で買いました(最も高額な買い方なのでこういう表現です)。というのも、レコード芸術で「特選」盤になっていたからです(軽薄なヤツ...)。

 これは、聴いて後悔。意味が分からない曲でした...。つまり、調性の破綻が顕著な気がしてなじめませんでした。でも、買った以上は、「ひとまず100回」聴きます。

 同じ時期、まだまだ一般には高額だったCDプレーヤー、Denon DCD1000という高級オーディオ機器を49,800円で購入して自分の貧弱なステレオコンポ(テクニクスのコンサイスコンポといいました)に接続しました。6畳一間の貧相な下宿のお部屋に、しかも1年の半分は病院で寝てたりするのに...。しかも定食屋の定食は月1回の贅沢、毎日お米は食べられないので、煮た大豆のみ食べていたというのに...。あろうことか、入院時に病院にこのCDプレーヤーを担いでいったことがあります。大切なので抱いて寝ようかという勢いです。直接ヘッドフォンを挿して聴いていました...。

 初めてのマーラー5番の盤を毎日毎日、4か月ほども、けっきょく100回は聴きました。リズムやデュナーミクの揺れが激しく、すばらしく躍動感がある、のに、音色が繊細で多彩で...。

 もっと聴きたくなり、当時すでに「不動の四番打者」だったショルティ/ロンドン交響楽団(Decca盤)を、中古LPで並行して聴きました。Decca盤のショルティは、音色が強くストレート、金管群がアングロアメリカンな猛烈な咆哮、低弦はゴリゴリと擦弦音があります。ストレートなショルティ盤に比べると、シノーポリ盤は、4管編成に加えて金管2管の巨大編成ではあるのですが、繊細で、何かこもったような抑えたようなためらいがあり、翳のある風情です。でも、ドイツのオーケストラでなくてイギリスの、という点が、音色にそこはなとなく明るい雰囲気があります。シノーポリ盤を今も大切に聴く所以です。

 同年(1986年)に、DENONレーベルから、E・インバル/フランクフルト放送交響楽団(F.R.S.O)でマーラー交響曲全集が出(録音エンジニア;川口、P・ヴィルモース)、FM放送をヘッドフォンで病院で寝ながら聴きましたが、異様に音が透明で見通しが良く、マーラーの交響曲に対してもっていたマッシブな息苦しさが、すっきり払われていた気がしました。病床に伏していたから感覚が冴えていたのかもしれません。

 翌1987年に、このインバル/F.R.S.Oが、来日演奏。バブル経済を上りつつある東京の雰囲気と相俟って熱狂的な歓迎だったようですが、東京文化会館と自転車距離に住んでいた自分が演奏会に行ける境遇なワケがないし、ふぅんと思っただけではありました。

 病院の「談話室」のテレビでその演奏会の模様をチラリと見たのですが、もちろん音質の問題もあって、ただのニュースであり、何の感動もありません。一人でCD聴いてた方がいいな、と思いました。でも、「CDなどのメディアは、再生機器や録音機器に色づけられた造られた音」という説、「ナマ演奏にはかなうわけないだろ!」という主張も、当然もっともです。でも比較の対象になるのかなと疑問でした。

 その年、顔しか知らなかった大学の友人から、「都響定演(東京都交響楽団の定期演奏会)のチケットが余っちまったんだけど、買わない? 500円で。君なら買うかもと友達に聞いたので。」と言われ、演奏曲目を聞いたら、マーラー5番。「か、買う。買わせていただきます。」つまり、演奏会に行けるものなら行きたかった自分が、他の全ての自分を押しのけて出てきました。

 都響のホームグラウンドは東京文化会館大ホールです。その晩、着席したのは大ホール3階の最も安い席。周りに着席している人はほとんどおらず、オーケストラがはるか下方に小さく人形芝居みたいに見えます。こんな遠くて聞こえるのかよ、と思ったのですが、はるか遠くの管も弦も、いや、トライアングルもシンバルも、私をすぐ取り巻いて耳元で囁くようにシャープで、高音から低音までのダイナミックレンジは広大です(ナマだから当たり前か)。F.R.S.Oでなくても、大学の、いや中学高校のオーケストラであっても、マーラーは生の管弦楽団(の安い場末の人跡稀なエリアの座席?)に限るじゃないか...。真っ暗な帰り道、ひんやりする上野公園を、チャリで、動物園の虎の声を聞きながら(たぶんそりゃ気のせい)坂を下りて池之端から暗闇坂を上がり...その間ずっと、内臓が抜け落ちるようなコントラバスの音が、興奮したからだじゅうに残っていました。

 「演奏会に行く行為」には、当時の歪んで卑屈になっていた自分にとっては、往復の手間・時間・金銭・猥雑な視覚情報・スノビズム・歓声・周りの客の息遣い・咳・くしゃみ・話し声・撮影・筆記・拍手など、嫌悪感がありました。今でもずっとあります。小さな部屋にいても小さな音のクラヴィコード1台やリュート1本、またグレゴリアンから指輪四部作の演奏規模に至るまで、真っ暗にしてヘッドフォンで目を瞑ってCDを聴く方が、音楽の純粋性、一歩進んでDämonenhaftigkeitやDionysischkeit(かってな造語です)が保てるではないか、などと歪んだ刷り込みが定着してしまいました。🔗3/22に言った"無前提で音楽を聴く"とはこんなことに違いないと思い込んでいるところです。この問題については、自分で納得がいくまで、しかしもしかして死ぬまで、葛藤しそうです。

2023/11/16

■ まなぶ - 高いマグロ - 青森県立高校入試H19(2007)年 - 社会第3問(2)


モモさんというその人の話を聞いたのは、十数年前。話してくれた知人は当時中学生の娘さん(トモカさん)の親で、そのトモカさんの仲良しがモモさんです。

私は学校関係者でも中高生の親でもありません。

 二人は、中2春のクラス替えのときに同じクラスになりました。

 トモカさんが、初めてモモさんに話しかけたのは「部活はなぁに?」というセリフ。そのときに知ったこと;モモさんの家は、母と祖母が経営する小さな生花店で、保育園年少の妹がいて、毎日の夕食は、モモさんが、家族である祖母・母・妹のためにつくっている。土日は花屋さんの仕事。

 モモ「だから、部活とか生徒会とかで遊んでいるヒマはないんだ」とキッパリ。「学校の授業終わったら、すぐ妹を保育園に迎えに行って(保育園は自宅と中学校の通学路の途中)、スーパーで晩ごはんの買い出しをして、晩ごはんつくって...。」

 トモカ「そ、そう...。でも、いいネ、お花屋さんって、ステキだね。」

モモ「あんた、花屋のキツさ、知らないからそう言うんだろうけど。真冬の朝の市場でも店でも一日中水にぬれて、冷たくて目から火花出るからね。ずっと重い束を動かしてなきゃなんない仕事だし、枝や葉や棘や刃物でナマ傷だらけだし...」

 トモカさんは、取り付くシマもなく厳しい人柄とその背景にある生活を負うモモさんに、恐怖を感じました。

 でも、学校で、不公平で横暴な男子生徒や先生たちに対して、敢然とモノを言い、女子の泣き寝入りを許さない態度に、女子のみんなが惹かれます。家庭科は、調理の包丁さばきも段取りも被服の縫製も、先生より速くて上手です。学校の成績順位は学年でベスト3です。「生徒会長に立候補したら?」「(隣の都市にある)より良い高校を受けたら?」の勧めは、すべて「家が忙しいから」「大学とか行かないから」と拒否して、自宅から一番近い県立高校志望です。

 高校受験も差し迫った冬休み後の学校授業で。県立の入試過去問を解く授業です。時間を決めてみんなで解くのは有益なのですが、解答解説も、また特にこの社会の先生も、解答棒読みでツマらないんですよ。社会なんて、さっさと一人で答え合わせした方がいいです。みんな退屈そうに聞いています。退屈まぎれに、トモカさんは、ふと隣の席のモモさんを見ると、真剣、というか、ココの箇所の解説になって、なんだか怒っている風です。で、キっとなって、ツマんない先生に質問します。

 モモ「先生、キプロスって、どこの海にあるんですか。」

先生「え? キプ...、の海...、えぇっと、ははは...」

モモ「1.に『水揚げ』って書いてあるんですが、『養殖』だと船で海から獲ったのと違うんじゃないですか。マグロは回遊魚じゃないんですか。栽培漁業と違うんですか。キプロスに養殖場があるって意味ですか。この水揚げって単語どういう使い方なんですか。」

先生「え? 水揚げって...、えぇっと、ははは...」

モモ「だいたい、マグロのラベルのこの値段、100gで598円って、高すぎませんかっ!? 入試をつくる先生たちって、日頃からいつもこんなものばかり食べているんですかっ!? (怒 」

 クラスのみんなは、くだらない授業の眠けも一気に吹き飛んで、「ワハハ!」「そうだそうだ!」「高けぇ、あり得ねぇ!」などと、ふだん勉強しないワルい男子まで、モモさんを応援するかのように、爆笑したり机をたたいたりして盛り上がります。

 勉強不足で百年一日のように同じ授業をする威圧的な化石化公務員の先生は、「静かにしろ!」と逆切れします。みんなは、静かにします。先生の負けだってことは、誰の目にも明らかです。