2023/10/08

■ まなぶ - ミミの初めてのデート [3] 大学入試センター試験 - 英語1999本試験第6問

※ 月齢カレンダー (Website; かわうそ@暦さん作成)の月齢出没計算より

ここ2日ほど読んだこのお話の、今日は、揚げ足を取ってみましょう...え? (;^^A

1) 登場人物の名前なんですが...;

“Mimi” という西洋人の名前は、わりと一般的です。それにまとわりつくイメージとしては、「庶民の娘」という役回りです。私には真っ先に思い浮かぶのが、アンリ・ミュルジェールの小説『ボヘミアン生活の情景』、というよりむしろプッチーニの『ラ・ボエーム』の方が通りがいいですか。パリの下町の裏通りのアパルトマンの屋根裏部屋で、クリスマスイヴの晩なのに寒さに震えて明かりもなく、貧しいお針子仕事で肺結核を病んでいて...。

“Robert Rover”という名前ですが、英語な気もしますが、 “Robert Rovère” とフランス語表記も可能です。いずれにしてもいかにも絵に描いたような貴族風な名前です、 “武者小路実篤” “近衛文麿”みたいな...。

話を初めて読み始めようとしたときには、なんだか、身分違いの恋、庶民の娘が貴族にもてあそばれる話...みたいなうんざり感が一瞬脳裏をよぎりました...、す、すみません。18歳の人がマジメに大学入試に向かうセンター試験にそんな話はないですよね。

ついでに “Montcalm street”という地名も、 “Montcalme”(モンキャルム)というフランス語風です。

いかにも西洋のおしゃれな雰囲気を、わざわざ鼻につくように、意図的に設定してくれているってぇわけですね。

2) リンバーガ―チーズについては;

もう10/5以来ここ数日でお話を味わうにはじゅうぶんな知識をお互い得ましたね。「誰だよ、ここで靴を脱いだヤツは?」と思わず問いただしたくなるようなかおり...。

ご参考までに、Wikipedia (Jn)によると;「リンバーガーやその他ウォッシュタイプのチーズを発酵させるために使われるバクテリアは Brevibacterium linens(リネンス菌)であるが、このバクテリアは人間の皮膚表面に生息し、人間の体臭の原因の一つとなっている。このバクテリアが使われる理由としては、リンバーガーを作ったリンブルフの修道士が、もともとは足で踏みつけることによって牛乳とカード(凝乳)を混ぜていたのが起源であろうと言われている。」

3) 赤毛の少年;

「誰だよ、...?」と問い咎めた登場人物は、「一人の赤毛の少年 (a readheaded boy)」でした。

小説・お芝居・ドラマなどの西洋のお話では、登場人物として、1) 主役 = 金髪(ブロンド), 2) 脇役 = 黒髪・栗毛 (ブルネット), 3) ライバルや悪役 = 赤毛、という図式があります。「そんなのは偏見に基づく人種差別だ」などと今どきは苦情がでそうです。まぁ昔からのステレオタイプな価値観ですので、あきらめましょう。ってことは、貴族的な存在のロバートは金髪(ブロンド)に違いない...(;^^

4) 三日月;

お話のハッピーな最後、「ミミとロバートがダンスホールを出たとき、通りは静まり返っていた。彼らは合わせて踊った曲をハミングしながら、身を寄せ合って歩いた。いまや月は高く、薄切りにしたようで、楽しげな小舟のように、彼らの頭の上に揺れていた。(The moon was high now, sliced thin, riding like a cheerful boat above them.)」

ダンスホールを出ると通りは静まり返ってたってことは、かなり夜も更けた時間? このお月様って、高いところにあるってことは、南中付近? で、かつ、薄くスライスしたような形で頭上に揺れているってことは、三日月のブランコみたいなチョいとロマンチックな...? 

天体観測的見地からは、ありえない事態となってしまいました...(;^^。10/3にいっしょに見た通り、三日月は夜更けには観測できないハズ...。画像は、今月2023年10月の、下弦の月から朔を経て上弦の月までの月齢出没時刻ですが、今月10日の「二十六日月」と17日の「三日月」の南中時刻は、それぞれ朝8:14と昼過ぎ1:09…。通りが静まり返る時間帯どころか、朝の通勤通学時と昼休み終了後にまた動き出す時間帯です。(...ココがまさに揚げ足取りという所以である...←なんてウルサいヤツ)

でも、三日月って、あっけらかんとまん丸い満月よりも、いかにも「神秘的な夜」のイメージがありますね。

 でも、ステキなお話でしたね!

■ 今晩10/8の月は、月齢23の有明の月。月の出は23:49に東北東59°。南中は朝6:49。天気は晴れ。今晩も明るい「三日月」を仰ぐことができそうです。

2023/10/07

■ まなぶ - ミミの初めてのデート [2];大学入試センター試験-英語1999本試験第6問


Limburger Cheese - Wikipedia(En)

お好みでしたら、上の設問をクリックするとチョっと拡大します。

本文に引き続いて、今日は、設問の一部を解いてみましょう。

 昨日のお話の中で、ロバートの心理的変化としては;

 ・ チーズのにおいが気になる(ロバートの最初の発言「そのチーズ、におうね」) 

→・ 次第に彼は、 “ミミが、においのことをひどく気に病んでいる”と、気づく。

→・ “ミミの気持ちを考え、チーズのことには触れないことにし、チーズが存在しないものとしてふるまうと心に決める”...この点を読み取らなくちゃ、というお話だったんですね。


問4 Why did Mimi hold her breath when the redheaded boy asked Robert about the smell?

① She was afraid that Robert would mention the cheese.

② She was worried that Robert would look bored.

③ She feared that Robert would notice the terrible smell.

④ She couldn’t stand the smell of the cheese.


問4 赤毛の少年がにおいのことをロバートに尋ねた際、なぜミミは、息を止めたのですか。

…検討しましょう;

① 彼女は、ロバートが、(自分が持っている)チーズのことに触れるだろうと思って、不安になった。

…コレでいきましょう。

② 彼女は、ロバートがうんざりしたように見えるだろうと、心配した。

…彼がどう見えるかをミミが心配するというのは、ちょっと妙な気がします。

③ 彼女は、ロバートが(チーズの)ひどいにおいに気づくのを恐れていた。

…あのぅ、とっくに気づいているんですけど...。

④ 彼女は、チーズのにおいに耐えられなかった。

…あまりの悪臭に、息を止めてガマンしてたんですね...。


問5 When Mimi heard Robert say “What cheese?”, how did she probably feel?

① She was happy because she realized that Robert really did care about her.

② She was afraid she wouldn’t be able to have a date with Robert again.

③ She was pleased because Robert had forgotten about the cheese.

④ She was happy because Robert wanted to know what type of cheese it was.


問5 ロバートが「何のチーズのこと?」と言ったのを聞いたとき、ミミはおそらくどう感じましたか?

…検討しましょう;

① 彼女は、ロバートが本当に自分のことを気遣ってくれているとわかって、うれしかった。

…コレでいきましょう。

② 彼女は、ロバートとはもう二度とデートなんてできないだろうと思った。

…このひと言からそこまで読み取るのはムリではないかな。それとも彼はミミとの今日の出来事全ての記憶を消し去るつもりだとでも...(;^^?

③ 彼女は、ロバートがチーズのことなんか忘れ去っていたので、喜んだ。

…お気楽なおまぬけカップルで、それなりに幸せそうです...。

④ 彼女は、ロバートが、それはどんな種類のチーズなのか知りたがったので、うれしかった。

…チーズソムリエ検定試験を受験なさるお二人ですか...。その後マニアな蘊蓄で盛り上がったにちがいありません...。


B 本文の内容と合っているものを、①~⑨から三つ選べ。

① It was the first time ever for Mimi to have a date.

② Mimi only reluctantly agreed to do the job for her mother.

③ Seeing Robert dancing with his eyes closed, Mimi felt uneasy.

④ Robert never complained about the cheese the whole evening.

⑤  Mimi washed her hands, but the smell still remained.

⑥ The redheaded boy thought the smell came from the shoes he found.

⑦ Robert explained to Mimi in a whisper why he had said he didn’t smell a thing.

⑧  Mimi’s mother didn’t like Robert, so she gave Mimi some Limburger cheese.

⑨ The moon looked exactly like a slice of Limburger cheese.


検討しましょう;

① ミミがデートするのは、これが初めてだった。

…コレを選びます。

② ミミはほんとにいやいやながら母の代わりにその仕事を引き受けた。

…コレも選びます。

③ ロバートが目を閉じて踊っているのを見て、ミミは気持ちがそわそわした。

…コレもOKです。

④ ロバートはこの晩ずっと、チーズのことには何も不満を言わなかった。

…上でロバートの心理変化について書いた通りです。

⑤ ミミは手を洗ったが、それでもにおいは残った。

…手を洗いたかったけど、ロバートがまっすぐダンスフロアの方へ連れて行ったのでした。

⑥ 赤毛の少年は、自分が見つけた靴からにおいが来ているんだと思った。

…脱ぎ捨てた靴、は存在しなかったです。リ、リンバーガーって、そんなふうなにおいなの...。

⑦ ロバートはミミに、なぜ自分が何もにおわないと言ったのかを、そっと説明した。

…特別なふうに微笑みかけてくれたけれど、自分の言動に関する解説なんてなかったです。

⑧ ミミの母はロバートのことが好きではなかった。そこで彼女はミミにリンバーガ―チーズを渡した。

…娘につく悪い虫に、リンバーガ―爆弾をお見舞いしてやろうかという特別軍事作戦ですね。

⑨ 月は、まさしく一切れのリンバーガ―チーズのように見えた。

…ミミは、においのせいで、もうノイローゼになって精神を病んで幻覚が見えているという、ホラーな結末の物語だったのですね...。

センター試験の出題者も、ずいぶん楽しんでお仕事をなさっているようすです...。


2023/10/06

■ まなぶ - ミミの初めてのデート ; 大学入試センター試験-英語1999本試験第6問


軽い小説を読んで楽しんでみましょう。とはいえ、大学入試問題です。だのに、軽いとか楽しむとか、受験生に対して不謹慎なことを言って、ごめんなさい。ま、しょせん大学受験とは縁のない一般庶民が、低レベルで読んで楽しむだけですので、大目に見てください。

 1990年の第1回センター試験から2007年までは、センター試験の英語問題の最終問第6問目は、英米文学風な小説やお話(の要約版)でした。その後、2008年から最終回の2020年まで、おそらく日本人出題者によって書かれ入念に推敲を重ねた濃密な評論文でした。いずれを手に取っても、私のような外野席から見物するだけの庶民にとって、珠玉のような英文ばかりです。

 ひとまず、読んでみましょう...と言っても、英文をそのままここに写し取っても読みづらいかもしれないので、私の拙い訳で恐れ入りますが、今日はサっと内容を見るにとどめましょう。

出題者の、素材選定・要約・単語差替などの労力に、敬意を表します。

---...---...---

「行ってくるね。」ミミは、母屋のとなりにある家業の食料品店にいる母親に声をかけた。初めてのデート。ロバート ローヴァーが彼女をダンスに連れて行ってくれるため、ちょうどやってきたところだった。こんなことになるだなんて、彼女にはほとんど信じられなかった。待っている間、ずいぶん長く感じられたが、何を着ようかと何度も何度も考え,やっとお気に入りのブラウスを着たのだった。今、とうとうロバートがやってきた。彼女の目には彼が麗しく映った。髪にはきれいに櫛を入れてあり,今まで見たことのない黄色いセーターを着ていた。ステキだ、とミミは思った。

2人が玄関を出ようとしたとき、ミミの母親が店から顔を出し、ロバートに挨拶をした。それから彼女は白い紙で包んだ箱をミミの手に渡した。

「サリー トンプソンさんへのリンバーガーチーズだよ、ミミ。輸入物のリンバーガーが、今日、1ケース入ったんだよ。サリーに、今夜、お前が届けるからって約束したんだよ。」

「今夜!?」と、ミミはチーズに目を落としながら、おうむ返しに言った。「明日じゃだめなの?」

「悪いけれど、サリーに約束したんだよ。」母親は言った。「じゃ,2人とも楽しんでおいで。」

「まあいいわ。ロバート、行きましょう。」と彼女は言った。

生まれて初めてのデート。ロバート ローヴァーとの初デート。それなのに、大きな、きついにおいの、やっかいなチーズの箱がくっついてきたのだ。彼女はチーズのことは忘れようとした。いま、私はここにいて、ロバート ローヴァーと一緒にダンスに行くところなのよ、と自分で自分に言い聞かせた。彼女は彼の方をちらっと見上げた。

「そのチーズ、におうね。」と彼が言った。

彼女は、チーズを、彼から最も遠くなるように持ったのだが、そのにおいは、腕を這い上がってくるかのようだった。

2人はモンカーム通りに出た。ミミは番地は知らなかったが、以前その家の前を通ったことがあるので見ればわかると思った。「あ、ここだわ。」彼女は呼び鈴を鳴らしたが、返事がなかった。すると、彼女は呼び鈴の下の名前がトンプソンではないとに気づいた。違う家に来てしまった。まぁ、困ったわ、と彼女は思った。彼女はコートのポケットにチーズを入れ、ロバートのところへ戻った。

「違う家だったみたい。」と彼女は言った。「きっとここに住んでいると思ったんだけどな。」

「それで、僕たちどうしよう?」とロバートが尋ねた。

ミミは唇をかんだ。今から家に持って帰ることもできなかった。チーズは一緒にダンスに持って行くしかなかった。「行きましょう。」と彼女は言った。とてもみじめで、他に何を言えばいいか思いもつかなかった。彼女とロバートは、チーズのひどいにおいと同じくらい重苦しい沈黙の中、ダンスホールまでの残りの道のりを歩いた。

ダンスホールに着くと、人でいっぱいで、コートを掛ける余地もなかった。ミミは手を洗いたかったが、ロバートは彼女をまっすぐダンスフロアの方へ引っ張っていった。

ミミはロバートがまるでスズランのようないい香りをさせているのに気づいていた。で、あたしの方はと言えば...、リンパーガーチーズのにおいだ...。

ミミは、心を込めて踊った。ロバートは目を閉じていた。たぶん、あたしとこのにおいのことを忘れようとしてるんだわ、とミミは思った。

少ししてからスナックのカウンターに行った。飲み物を飲んでいるとき、ロバートの視線は、ミミの頭越しだった。うんざりしているんだわ、とミミは思った。ああ、ほんとうに今夜は大失敗だ。彼女のポケットから立ち上る強烈なにおいは、刻一刻と強くなっていった。

一人の赤毛の少年が、立ち止まってロバートに話しかけた。「誰だよ、ここで靴を脱いだ奴は?」と少年は言った。

ミミの心は沈んだ。

「何か、におうぞ。」赤毛の少年は言った。

ミミは息を止めた。ロバートの方を見ることができなかった。

「別に、僕は何もにおわないけれど...」とロバートは言った、「君はどう、ミミ?」

一瞬、彼女は、自分の聞き間違いだと思った。ロバートは、彼女に、特別なふうにほほえみかけていた。彼女はびっくりして彼を見つめた。「いえ、私も、何もにおわないわ...」やっとのことで彼女はそう言った。

「きっと君の気のせいだよ」ロバートはその少年に言った。

ミミは自分の耳が信じられなかった。それから彼女はワっと笑った。なんてことだろう。ロバートが自分をかばってくれているんだ。素晴らしいことだった。チーズが、急に、2人だけの秘密になった。

ミミとロバートがダンスホールを出たとき、通りは静まり返っていた。彼らは合わせて踊った曲をハミングしながら、身を寄せ合って歩いた。いまや月は高く、薄く削ぎ切られ、楽しげな小舟のように、彼らの頭の上に揺らめいていた。

「チーズのこと、ごめんね」とミミは言った。

「チーズだって? 」ロバートは微笑んだ。「チーズって何のこと?」