2025/10/12

■ まなぶ ■ 津軽平野の藁焼き


津軽の風物詩。

 ...と表現すれば風情がありますか。通称"藁(わら)焼き"、"藁焼き公害"。

 津軽平野の田んぼという田んぼが、いっせいに火祭り状態です。

 つまり、稲刈り後の稲わらの焼却のことです。Google先生の解説は過去形になっていますが、トップ画像でおわかりの通り、毎年変わらず現在進行形ですよ。


 稲刈りは、今どきはどこでも、コンバインで刈り取り、コンバインからは作業時に同時に、鋤き込みに便利なように裁断した稲わらを排出します。稲刈り直後に、稲わらを改めて土壌に鋤きこんで土中にて冬中にゆっくり腐敗させ、菌類細菌類などの生態系分解者に委ねれば、翌年の土壌改良につながります。

 が、津軽の人間はそれをせずに、さっさと燃やしまくって、すぐに首都圏などに冬の4,5か月間"出稼ぎ"に出発します...。

 このスキームが、昭和やそれ以前から続く"寒冷地の貧農=津軽地方"の決定的印象です。

 藁焼きの匂いとせき込むような煙が、せつない冬の到来を告げるようです。

 と同時に、このスモッグは、人工的な濃霧に近い存在で、重大な交通事故や交通障害、健康被害をもたらしてきました。

 街中にあるあなたの家の中にまで煙は入り込み、布団や衣類や洗濯ものにびっしりと煙くささがこびりつきます。逃れられる場所は無いです。

 "農家に限って、野焼きは許される。植物は二酸化炭素を吸収して生長したのだから、これを燃焼しても、二酸化炭素をもとの空気中に返したダケだ。カーボンニュートラルは保たれているんである"と主張する論者は、もちろん自分の利欲が絡んでいるからです。数十年数百年かかって吸収した二酸化炭素を、いきなり一瞬のうちに放出する、それもあなた個人の金銭的利益のためだけに...。あなたの利益のためなんだから、他の人類は交通事故や健康被害くらいガマンしなくては...。

 最近ではさらに加えて、"クマの通り道となる河川敷の植物という植物は、徹底的に伐採して燃やしてしまえ!"という論も果樹農家から主張されています。(🔗8/20のクマの珍情報源(個人のウェブサイト))

 都道府県自治体では、その意見を支持していないようすですが、どうなのでしょうか。

 青森県庁のウェブサイトでは、「法律上も条例上も野焼きは禁止。稲作農家の藁焼きは弊害がある」として抑制する傾向です。

 "交通事故多発"は今は置くとして、誰にでも起こり得る"健康被害"を、「🔗稲わら焼却による大気汚染状況調査結果(R6)」(PDF文書)にてまとめています;

〈調査項目について〉
○浮遊粒子状物質(SPM
大気中に浮遊する粒径10μm以下の微細な粒子。自動車や工場の排ガス中の化学物質のほか、火山灰や黄砂等の自然由来のものにも含まれ、大気中の光化学反応により二次的に生成される場合もある。 
○二酸化窒素(NO2
主として、重油、ガソリン、石油などの燃焼により発生する一酸化窒素が、大気中で酸化されて生成する。二酸化窒素を含む窒素酸化物(NOx)は光化学スモッグの原因となるほか、人体の中枢神経系に影響を及ぼし、呼吸気道、肺等に障害を与える。
○微小粒子状物質(PM2.5
SPMの中でも直径2.5μm以下のもの。通常のSPMよりも肺の奥に入り込みやすく、吸い込むと肺がんや循環器疾患の原因となると言われている。

 SPM、NO2、PM2.5の各濃度とも、稲刈りとそのスモッグ発生時期には、跳ね上がっているグラフが、このPDF文書からは、容易に視て取れます。

例; PM2.5濃度

 市町村自治体の採る対策はといえば、『藁焼きはやめましょう』というノボリを主要国道県道バイパス沿いに立てるという無能ぶりです。

 "津軽地方だなんて、貧しい稲作農家地帯なんだから、鋤きこむという手間ヒマ費用を惜しんで稲刈り後はすぐ出稼ぎに"、というスキームは、今でもこの津軽地方にやはりあるのかなぁ、農家の皆さんが豊かに暮らすためにガマンしなくちゃだめかな、やっぱり...。お米はあんなに高いのに...。街場の路地裏にすむ私は妙に目がしょぼしょぼして涙が出てきました...ごほごほ。