2024/12/05

■ まなぶ ■ 炊飯は圧力鍋で


今度は「炊飯」からナニをまなぶんだ...? とおっしゃりたいところ恐れ入ります。個人的にまなんだ体験です。

 炊飯は、これまた何年も圧力鍋で、です。

 大学に入学すると同時に独り暮らし(自炊派)となったので、ごく小さなNational製の炊飯器を購入したのが、1980年代。何の不満も疑問も感じずに使っていました。

 大学3年の頃、木枯らしの吹く年度末、大学図書館で試験の勉強やらよもやま話やらで遅くなったので、帰りの電車でいっしょになった友人が、先に降りる彼の駅が近づくと「オレの部屋でメシでも炊くか。豆腐と野菜くらいならあるから、湯豆腐をつくろう」と言われ、う~ん、男2人で、寒い6畳一間のほの暗い灯りのもとで、湯豆腐と白いごはん...。なんだかなぁと思いましたが、だからって自分の部屋に帰ったってたかが知れていますので、この際おじゃますることに。

 ガタイのデカい柔道部のヤツでしたが、なかなか神経は繊細でよく気が回る性格。マメに昆布や豆腐やネギを切って、こたつの上に載せた小さな一口(ひとくち)ガスコンロ(当時は「カセットコンロ」が普及していなかった)にさらに土鍋を載せ、点火し...、まもなくぐつぐつと。

 私は、こたつもガスコンロも土鍋も、自分ですすんで使った経験がありませんでした。珍しさに口を開けてぼぅっと見ていただけ...。

 次に彼は、さらにマメに米を研いで、ザルに上げ...、そのタイミングで、こたつに入って「さあ食おう」と、鍋の湯豆腐を。

 まるでそっけない、昆布の上に漂う白い豆腐とダシのみ...。

 が、な、なんておいしい!湯豆腐とはこんなにおいしいものなのか!とビックリ。後にも先にも、いまだに、それを上回る体験は無いです。

 感動し激賞したところ、向こうは意外な表情。聞くと、豆腐はその辺のスーパーの絹でも木綿でも。ただし消泡剤不使用。昆布は実家から北海道産を送ってもらっていると...。

 で、炊飯のしかたにまたビックリ。なんとその土鍋を軽く水洗いしてすぐまた米と水を入れてガスコンロにかけて点火。「こ、こんなんで、ごはんって炊けるの!?」と驚き騒ぐ私に、ヤツも驚いて「え!? オマエは何で炊くんだよ。あ、炊飯器かぁ。(←ちょっとあきらめ表情)」

 おしゃべりしている間に炊き上がり、またもや食べてびっくり仰天。

 つやつやの粒粒がピンっと立ち上がって、これまで見たこともない見事な白飯。どの粒も口の中でプリっと自分を主張するようです。後にも先にも、いまだに、それを上回る体験は無いです。

 彼は大学の勉強や大学の柔道部という部活動をこなしつつ、毎日あのレベルの自炊なのか...。衝撃。

 私もマネして道具をそろえようかとも思いましたが、今もう炊飯器があるし、この狭い部屋のドコに土鍋を置くんだ...。

 その炊飯器はさらに何年も、病気入院したり細々とバイト生活を続けたりした間、ずっと使いました。

 その後、人からもらった大きな五合炊き炊飯器をまた何年も使いました。コレは、念願の「玄米を炊飯できる」炊飯器でした。しかも、初めて「タイマーで炊き上がり時間を設定できる」タイプだし、1人2人だと1回に五合も炊くと余るにきまっているでしょうが、一膳程度のサイズのタッパーウェアで小分けし冷凍すれば、あとで電子レンジですぐホカホカごはんになります。

 この便利さを知って手放せなくなり、結局コードリールが内部でショートしたのを機に廃棄し、即座に、迷わず最新型の五合炊き圧力IHジャー炊飯器を購入。猛烈に重いですが、何の不満も疑問も感じずに使っていました...。

 時期を並行して、ドイツフィスラー社製「圧力鍋」を使って煮込み料理するなどという人並みのワザを覚えたのですが(その経緯は🔗2/2)、使うようになってだいぶたった頃、ふと思いついて、初めて圧力鍋で玄米をためしに炊いてみようかなと。

 半信半疑...。"白米なら三合を、浸水なしでたった3分"って。しかも、白米より手間のかかる玄米三合の炊飯を、あろうことか、"浸水なし、たった20分"で炊けるなんて...。私の最新型圧力IHジャーだと86分ですよ!...まぁ、あり得ない。フィスラー監修「圧力鍋レシピ本」の客寄せパンダ企画でしょうか。(cf.🔗fissler/recipes)

 で、ぴったりレシピ通りの厳密な分量と時間で加圧炊飯し、圧力ピンが降り、蓋をあけて、びっくり仰天!

 つやつやの粒粒がピンっと立ち上がって、これまで見たこともない見事な玄米ご飯。どの粒も口の中でプリっと自分を主張するようです。(...なんだかデジャヴ感のあるいつかどっかで見た表現...)

 そ、そうだったのか...。いや、たしかにあのときそうだった。その後そうすべきだったのだ。この愚か者め。

 『"電子""圧力""IH""ジャー"炊飯マシン』は、たしかに、毎回土鍋なんかで炊飯する生活ではない現代の多忙だったり大家族の炊事をする人だったり、と、これが必需品である人の声を尊重してつくられた最先端の製品です。

 だからそのマシンが私に合うかというと...。私のイマの生活からしたら、自分にとっては、目指す目標地点が異なる過剰な設備投資だったと実感。

 だからって、翻って、圧力鍋のあるイマ、学生時代に感動した「土鍋炊飯」のための土鍋を新たに買いそろえるつもりもないです。

 その「圧力IHジャー炊飯器」は、いま、眠りについています。これ、二槽洗濯機みたいにどなたかにお譲りした方がいいかなと思っていたりして...。