2023/11/24

■ なおす - クラシックシェービング - 今日


※ ブラシは濡れた状態です。
使っているカタカナ用語は、5/1の記事をご参照ください。

強い西風のみぞれの吹き荒れる一日中暗い冬の天候になりました。明日から雪予報です。

 どんな天気でも、シャワーとシェービングで気分はシャッキリと晴れます。

 今日のシェービングソープは、2つ。残り少なくなったPB製の『Imperial Rum』を使い切り、足りないので、B&Mの『Bay Rum』にしましょう...なんて言ったって、「今日の夕食はハウスバーモントカレーにしましょう」みたいにすぐわかる人がいるとは全く思えません。

 PB、つまりPHOENIX et BEAUは、イギリスの、男性用スキンケアのブランドで、そこのシェービングソープの1つ、『Imperial Rum Shaving Soap』ということです。とはいえ、お試しサイズです。

 と同時に、 B&M、つまりBarrister and Manは、アメリカの、シェービングアイテムのブランドで、そこのシェービングソープの1つ『Bay Rum』ということです。これは$1≒¥110の時代に購入したフルサイズです。

 シェービングソープの香りはいずれも、ネーミングのとおり、月桂樹の葉とラム酒とシトラスからなるアングロアメリカンな「ベイ・ラム」です。なお、Bay Rumについては、6/29の記事をご参照ください。いずれも、日本には存在しない西洋情緒あふれるほんとうに良い香り、すばらしい泡立ちです。この世の憂さを忘れ果てる別世界が広がります。

 ブラシは、珍しい日本製。伝統的工芸品である熊野筆を作っている工房の『ウォーターバジャー SH-1』という高級品をたまにローテーションして使います。

 シェービングブラシは、日本にない商品ジャンルというか産業というか...。それを、筆の工房が作るのは、理にかなっています。でも、筆の伝統がある日本に、シェービングブラシの市場も技術も絶無に近いというのは、異様な感じがします。いかに、シックとジレットの使い捨てヒゲそりグッズの日本市場独占政策が完璧な成功だったかがわかります。

 この熊野筆の製品は、竹宝堂 SH-1といいます。毛は、アナグマ(Badger)の尾の毛で、このシェービングブラシの分野では、最高級で、そのうち、製品に植毛したノットの根もとから先端にかけて3色のグラデーションになっている(『3 Band Silver Tip』という)ものが、トップクラスのようです。ただし、最高級のバジャー毛の性質として、やはり天然の「毛」であって、それを何度もこすりつけたり石鹸分で洗ったり乾燥させたりしますので、摩耗や脱脂や紫外線など経年変化に弱く、耐久性は最も劣ります。「最高級だが最も短寿命」という点で繊維のうちの絹に似ていますね。

 この製品は、そのバジャーのシルバーチップです。

 こんな高級品がなぜ私の手元にあるかというと、そりゃ買ったからです。初めて買ったブラシでした。イマ同じ製品を楽天市場で見ると、買った当時からもう4割くらい値上がりして、1万円じゃとうてい買えない世界ですか...。5/1の記事に書いたように、何年も前に初めてクラシックシェービングを始めようかと決意した際、そうとう周到に準備しました。その準備の一つとして、後戻りできないように高級品を買いました。これは私の悪いクセです。大学1年のドイツ語の関口文法書についても同じ発想の話をしました(7/23の記事)。

 柔らかくて泡立ちが良くきめが細かいです。形状の特徴として、手持ちのあらゆる外国製品に比べて、ノットの直径が最も小さく(細く)、レングス(毛足)がもっとも長いです。

 これ以上何が必要なんだ...と思ったところ、使った翌日は乾いていません。それが普通です。気分的には、毎日濡れたままコレ1本を使い続けるより、十分に乾燥させながら永く使いたいと思い、その後、外国製品をいくつか購入します。結果、自ずと比較することになります。

 外国製品をいくつか使って、さてまたこの熊野筆製品を使うと、最も柔らかく、逆に言うとコシがなく、繊細で、華奢で、はかない...。リキまず静かなひとときを、と、提案してくるかのようです。たしかに、外国製品から見ると、この熊野筆は、まさに「筆」みたいです。

 「シェービングをする状況」を考えます。これから仕事・これから人に会う・休日の今日を一人贅沢な気分で過ごす...。これらの前の緊張と活力と期待に満ちた気分で、2回も3回も顔をたっぷり泡だらけにして、で、ザァッと洗い流す...。

 そういう強い前向きな気分をガッチリ受け止める、というには、手もとのこの高級な熊野筆は、使う人が欧米人のような外国のガッシリした男性だろうとヘボい私だろうと、華奢でちょっと頼りがいに乏しい気持ちになるかもしれません。

 他方、外国製品は、天然毛も人工毛もバラエティ豊富で、価格は10分の1のものであろうとも、今どきはシェービング時の使用感において見劣りしません。製品群の裾野は広く厚くレベルは高いです。これは、技術の進歩、ユーザと造り手のフィードバックの頻度、何より、競争市場で生まれ育った製品だから、という要因が大きいです。