■ 敬愛している弘前の叔父が逝去と、今朝、知らせをもらいました。
■ お役所勤めからりんご農家に転じ、生涯を通して豪快な海釣りを楽しんでいた人で、海に山に年中出掛けるスポーツマンでした。
■ 半面、人がらは静かで謙虚で前には出たがらず、周りの人には驚くほど律義で面倒見がよい方でした。が、親しく釣りの話をするときは顔をくしゃくしゃにしてもう楽しくてたまらない表情、ロッドやリールの話など大きな目を輝かせて少年のように話し、見せてくれるために取りに立ち上がったりします。
■ また、猛烈な早起きでした。お役所勤めのときから朝4時にはもう活動時間となっていたようです。イマ私の生活(🔗2023/8/20, 2023/10/9)も、彼に見習ったという面もあります。
■ 私が大学を病気留年した1980年代中頃、数年間入退院を繰り返していて、うち真夏の数か月間ほど、猛暑の東京を避けて青森県の自宅で療養してみた短い時期があります。気持ちも沈み、周りにも沈んだ重圧感を与えていました。
■ そのうちの平日のある一日、叔父が私のいた実家に来て、「今日は天気が素晴らしいから、山の方面に行こうじゃないか」と、にこにこして、半ば強引に誘い出しました。
■ 私は、Tシャツにジーンズに裸足に鼻緒のついたビーチサンダル。特にドライブ気分ではなかったのですが、せっかくなので彼の「20万kmでエンジンを交換したんだ、もうだいぶ前だけど」という、いったい何十万km走っているかわからないニッサン・テラノに乗せてもらって、二人で、雲ひとつない夏の快晴の岩木山方面へ。
■ どんどん山に向かい、ついに有料観光道路岩木スカイラインに取り付き、ぐいぐい登り詰めて、「登山リフトに乗ろう」。リフトを山頂駅で降りたら、「山頂まで1時間程度かけてゆっくり登ろう」ですと!? たしかに岩木山の山頂登山にはいちばんラクなコースですが、私は今日の自分の服装じゃムリだと言うと、「う~ん、ま、いいんじゃないか、天気は抜群だし」と。
■ 岩木山の山頂にこんな格好で登ったら、山の神様に怒られそうです。「にわか登山者」「ヤマをナメている」「軽薄な若者」を絵にかいたような...。そんなことは彼も知っているだろうけど、天候やお互いの経験や雰囲気を考え、状況的に大丈夫だと判断したのでしょう。
■ 山頂は、ちょうど真昼で、風も弱い快晴。海岸線もクッキリ見え、私の住むなじんだ狭いエリアも一望。廻堰の大溜池も、キラキラとまぶしくて、この数年間、部屋で本ばかり読んでいた目にはキツかった...。
■ けれど、鬱々と暮らしたあの頃の日々のうち、突出して明るい印象のある一日だったという思い出が、今は胸に突き刺さります。
■ あのとき彼は、きっと沈み込んでいる私のことを気にかけて、気分転換に連れ出したのでしょう。いじけた私のために、あれこれ考え、その結果、仕事や家族のこともあるだろうに、彼の貴重な、晴れた平日の1日を、私のために費やしてくれたのだと思います。いきなり「岩木山に登山しよう」などと前もって言ったら、引いてしまうだろう私のことを考え、なるべく唐突に軽やかなふうに私をお日様のもとに連れ出して...と考えてくれたのだと思います。
■ 後年そう思うと、いくら彼に感謝してもしきれない思いです。ほんとうにどうもありがとう。