■ 昨日の続きです。昨日は...
(1)...1段落目;オーディオ機器の黎明...蓄音機の発明と改良は、1) より気軽に、2) より良い音質で、の2つの目標を追求してきた。
(2)...2段落目;うち、1)の方向性に位置づけられるのは、1920年代の自動車搭載ラジオ、1980年代の歩きながら音楽をヘッドフォンで聞くという発想の実用化と普及がある。
(3)...3段落目;また、2)の方向性に位置づけられるのは、音質を追求することだ。可能な限りナマの演奏に近いHi-Fiなサウンドをめざす努力をしている。
…といった内容でした。
■ 今日は、第4段落~第6段落(最後)まで訳してみます;
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(4) 今日、電器店に足を踏み入れると、消費者は、驚くほど多様なオーディオ技術を目の当たりにする。 ポータブル・システムを探している人は、何百という種類の、色、形、サイズの、さまざまなイヤホン、ヘッドホン、デジタル・プレーヤーの中から選べる。 他方、オーディオファイル(audiophiles)、つまりハイファイであることを最優先する音楽ファン、のため、店内の別の売り場では、大型のスピーカー、CD プレーヤー、アンプなどの重量級コンポーネントを展示しており、往々にしてこれらは高額である。 音楽ファンたちは、これらすべてのテクノロジーとこれほど多くの選択肢に直面して、多くの場合、自分のリスニングのニーズに適した機器を調べたり決めたりするのに、多大な時間を費やしてしまうこともしばしばだ。
(5) 機器を購入した後ですらなお、オーディオ技術の進歩のせいで、消費者の注意は、音楽そのものからどんどん離れ続ける。 ポータブル・システムの利便性のおかげで、公園でのジョギングや通勤など、他のことをしながら音楽を聴くことができるのだが、このような状況では、音楽の一部が、周囲の騒音に埋もれてしまい、リスナーが音楽に集中することは困難になることもある。 また別の場合、オーディオファイルたちは、最高水準のハイファイを達成しようとして、自分のコンポーネントの組み合わせを試したり調整するのに、かなりの時間と労力を費やしてしまいがちだ。
(6) これほどまでに多くのテクノロジーが利用できるようになると、実際に音楽を聴くことが、二の次の問題にされてしまうように感じることもありうる。 お気に入りの録音を電車に持ち込んで通勤できるのは幸せなことだが、自分の注意がどこか他のところにあるときに音楽を聞いていると、音楽の力の多くは散逸してしまう。 同様に、高品質の機器を利用できるのは良いことだが、完璧なハイファイを達成しようと腐心しすぎるあまり、テクノロジー自体が、自分と音楽との間に割って入るような事態となる。 音楽は驚くべき力強い芸術形式である。 最も大切なことは、おそらく、座って、聞こえてくるモノを、味わう時間をつくることだ。 エジソンやその他の発明者の才能のおかげで、音楽の美しさがこれまで以上に身近になった。 手を休め、真剣に耳を傾けるかどうか...、それは私たち次第なのだ。
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■ (4), (5), (6)とも、1) 利便性 = ポータブル・オーディオ、2) 高音質 = 重量級オーディオ機器、の2つの方向が、技術進歩により進化しているのは歓迎するものの、この2方向に、私たち消費者が振り回され、「音楽を聴く」という本来の目的が失われていく恐れがある点、本来の目的に立ち返るよう促してくれます。
■ 一方の、1) ポータブル・オーディオを身につけて、聞き流しながら何か別なことをするのは、散漫だし、場合によっては危険だったりします。この事例は、今となっては誰でも納得できる場面を思い浮かべられそうですね。
■ 他方の、2) 重量級の高級オーディオ機器は、あまりなじみのない世界という人が多数派でしょう。
■ CD1枚を自宅備え付けのステレオ・システムで聴く場合を想定しましょう。① プレーヤーのトレーでCD盤を受け、回す機構 → ② CD盤からデジタル信号を読み取る機構 → ③ 信号をアナログ信号に変換する機構 → ④ アナログ電気信号を物理的運動エネルギーに増幅する機構 → ⑤ 振動させ音波に変換して再生する機構 → ヒトの耳の鼓膜に到達
■ 通常の普及価格帯製品は、①と②と③が1つの箱に入って「CDプレーヤー」。④が「アンプ」。⑤が「スピーカー」。
■ 他方、高級品の泥沼は...、トップ画像は、私が十数年前にちょっとよろめいて(?)所有した機器ですが、ま、マニアの方々から見れば、ヒヨッコのようなかわいい方でしょう。でも、私にとっては泥沼に「はまる」レベルですらなく、それ以前に、沼を発見して怖気づいてさっさと逃げ帰ったレベルでしょうか。
■ 高級品は、①&②と、③が別の筐体(箱)で、かつ③が左右チャンネルに別れたハコの場合もあります。④の「アンプ」は、CDプレーヤー以外の入力機器などをセレクトし、信号の大きさ(音量など)を制御する「コントロールアンプ(④-1)」と、その制御後の信号を増幅する「パワーアンプ(④-2)」に、筐体が分かれます。多くのパワーアンプは、左右別の筐体です(④-2Rと④-2L)。⑤のスピーカーは、ステレオなので左右別の筐体ですが、大画面テレビ附属のシアターシステムなど、スピーカーのハコだけでが5個以上だったりします。ステレオの場合は、正面に丸い「ユニット」が、高音・低音の2ツついてますよね(2way)。場合によっては加えて中音ユニット(3way)、さらに周波数を細かく分断した4way, 5wayなどもありえます。高音ユニットと低音ユニットを、別々のパワーアンプから電源供給して駆動する強者もいます。この時点で、CD1枚聴くのに、ハコが最低9個以上のものものしさに囲まれることになります...。①から⑤までの筐体は、どのハコの1ツをとっても、大人一人で持ち上げるのは困難なものがほとんどで、どの1ツも、お車1台分の価格で...買え...ないかもしれません...。また、これを繋ぐケーブルやコード(つまり電線)も、やはりお車数台分で...どうかな...。またこのレベルではもはや、おうち建築やおクルマ修理や医療や企業会計と同様、自分一人で何とかするのはムリで、専門家の介入が必要です。参考までに、下↓の画像は、上で挙げた「パワーアンプ(④-2Rと④-2L)」のみの画像と価格...。趣味の世界の話ですので、埒外の私たちがコメントする意味はないのですが...。
■ 本文で “audiophile”という単語を使っている時点で、執筆者自身がオーディオマニアだと思います。でも、必要なのは、何かしながら音楽を聴いたり、どんな機械がイイとかつべこべ考えるよりも、まずはきちんと音楽を聴こうじゃないか、という、あたりまえの結論となりました。この文のタイトルがそもそも『- - 聴く際の利便性と音質 - 他に優先事項はあるだろうか? - -』ですが、利便性よりも音質よりも、最優先事項は「音楽を聴くこと」だと言いたいんですね。第1段落の最終文『音楽そのものを、これらすべてのテクノロジーの中に埋もれさせてしまわないようにすることが重要である。』 また、第6段落の最終文『最も大切なことは、座って、聞こえてくるモノを、味わう時間をつくることだ。 たちどまって、真剣に耳を傾けるかどうか、私たち次第だ』というのが結論だったんですネ。あたりまえの結論ではあれど、私には耳が痛い話で、執筆者の見識に諫められて、大いに反省し納得しました。音楽にいちばん感動した原体験って、もしかして、中学1年生の時の「カセットラジカセ」だったりします。