2025/08/23

■ まなぶ ■ 並んで待つ - 大学入試センター試験2012年追試験 英語第6問


待ち行列に関する話題の続きです(🔗8/19)。

 今度は数学でなくてセンター試験の英語で、日常的に"並んで待つ"話題を考察していますので、和訳してみます。

 大学入試センター試験の内容は、待ち行列に並ぶことの苦痛を和らげる改善策に関し、多面的に考察し、実に要領を得ていると感じます。語数制限のあるコンパクトな問題文にするために、長時間または大人数でまたはその両者を投じて、大いに推敲したことでしょう。

 なお、6つあるパラグラフの冒頭の見出しは、設問Bの組み合わせ問題の選択肢を、私が選んで和訳したものです。

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(1) はじめに
    列に並んで待つことは、日々の生活では、避けられないし、また不快なこともしばしばある。バスや電車に乗るときに待ち、スーパーマーケットでレジに並んで待つ。驚くほど長い時間を待ち行列で費やしている。例えば、平均的なアメリカ人は一生のうちに2年から5年も並んで待っていると言われている。これについて私たちに何かできることはあるだろうか? 実は、人々の列への並び方は、昔とは全く同じではない。列に並ぶことは、慎重な研究対象となっていて、待ち時間を短縮するためにさまざまな対策が講じられてきた。とは言うものの、待つという経験は、待っている時間の長さだけでなく、待つことをどう感じるかによっても左右される。心理学的研究で得られた知見は、待ち時間に対する人々の認識を改善するのに貢献してきたのだ。

(2) 待ち状況に関して、説明が得られること 
    待ち時間をより良いものとする方法の一つは、待っている人にハッキリとした情報を提供することだ。"どれくらい待てばいいのか"、"イマ自分が並んでいるのがこの列でいいのか"、などがわからないと、待ち時間は長く感じられ、いっそう苦痛になる。そのために、一例として、駅では、"次の電車の到着時刻と到着番線"が表示され、音声案内される。"どのくらい待つのか"や、"どこに並べばいいのか"を告げることは、人々が待ち時間とうまくつきあえるようにしてあげるのに欠かせない。

(3) 待つ人の気を惹いておいてあげること
    「手持無沙汰な」時間を減らすことも有用だ。たいていの人は、待っている間、何か気を紛らわせるものがないと落ち着かない。何かやるべきことがあれば、時間などスグ過ぎていくように感じるものだ。そのため、病院やクリニックの多くは、患者がぱらぱらとめくれる雑誌が置いてあるし、レストランの中には、客が席に案内されるのを待つ間にメニューを手渡してくれるところもある。

(4) 待ち行列の管理に公平感があること
    待つという体験を改善するまた別の方法は、"公平"とか"社会正義"といったものを尊重することだ。後から来た人が先にサービスを受けることで、イライラはつのる。これが起こりがちなのは、複数の列に並んでいる場合だ。列を1つに絞ることで「先に来た者が先にサービスを受ける」という原則を徹底することができる。

(5) 以上の改善策を種々組み合わせている事例
    アミューズメントパークなどは、上に例示した解決策を、どううまく取り入れているかを示す好例だ。アミューズメントパークでは、来場者に待ち時間を告げている。また、来場した待ちの客を楽しませようと、互いにやり取りするようなゲームや着ぐるみなどコスチュームを着たキャラクターを待ち行列に配置している。さらに、あとから来た人が、間違って先にサービスを受けることがないよう、来場者を一列に並ばせている。これらに加えて、表示する待ち時間を、予想されるよりも長く告げている。というのも、"思っていたより待ち時間が短い"ほうが、来場者の気分を良くするからだ。なお、さらに、待つ来場者たちが、長い行列を見てビビって離脱などしないよう、行列の先が視界に入らないよう、待ち行列を配置している。アミューズメントパークでは、客が長時間にわたって列に並ぶため、"待つこと"について、その心理的影響を、きわめて重大なものと考えているのだ。

(6) 結論
以上挙げたとおり、並んで待つことの心理的な面を検討することによって、並ぶという体験は、著しく改善できる。研究者たちは、今後も、待ち時間の質を高めようと、アイデアを次々と繰り出す点は疑いがない。他方で、私たち自身も、待つことに対する意識を変革できるとすれば、列に並ぶという体験を、いっそう良いものにできるかもしれない。世の中はますますせっかちになり、今すぐ結果を求めがちのようだ。もうちょっとゆっくりいこうぢゃないかと思えるようになれば、みんなが恩恵を受けられるかもしれない。いやむしろ、待ち時間というものが、生産的でこころ楽しいものにだってなりうる。友人とおしゃべりしたり、スマホでSNS・メールをチェックしたり、好きな音楽を聴いたり。待つということは、今後も依然として私たちの生活には避けられないのだが、それをいっそう楽しい体験に変えることは、可能なのだ。