■ 旧センター試験の英語、最後の大問6問目の長文問題に、出題者の
■ そのうち、オペラの話題に、この年の全国のセンター試験受験生50万人がつき合わされたその豊かな知見を共有した年がありました。
■ いつもながら恐れ多くも拙訳にて見てみたいです。
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(1) オペラは、人間の声による表現を最高レベルで讃える芸術だ。オペラほど興奮を生み出し、心を動かす芸術形式は、他にない。とりわけ、すぐれた歌手たちによって歌われる場合はなおさらそうだ。そういったな歌手たちは、人間の声のために作曲された最も偉大で最も困難な音楽のいくつもを披露できるよう訓練されているのだ。
(2) オペラは、西洋のクラシック音楽の伝統の、重要な一部だ。音楽、言葉、演技を用いてドラマチックな物語に命を吹き込むものだ。そのオペラは、16世紀末にイタリアで始まり、後にヨーロッパ全土で人気を博した。以来長年にわたり、世界中のさまざまな音楽や演劇の発展に応えようとしてきた。今もそうだ。ここ数十年、現代の録音技術によって、はるかに幅広い聴衆がオペラに触れるようになっている。ラジオ、TV、映画などにおいて演奏したことで著名になった歌手もいる。
(3) しかし、近年、オペラは深刻な問題に直面している。これらの原因のなかには、オペラの手には負えないものもある。現在直面している問題の 1 つは、経済的なことだ。現在の世界経済の減衰により、文化機関や芸術家に回してもらえる資金は減っている。この資金不足により、オペラ歌手やその他の芸術家を支援するためにはいくら支払うべきか、という、より広範な問題が生じている。世の中では、企業経営者に支払われる莫大な報酬や、スポーツ選手に与えられる何百万ドルという契約は容認しているようだ。が、オペラ歌手はどうだろうか。どういうわけだか、"芸術家というものは、貧困に苦しむことでのみ創造的になれる"という観念が人々にはあるのだが、これは非現実的だ。オペラ歌手を含む芸術家に、必要な支援がないとすれば、貴重な才能は無駄となるのだ。
(4) 資金不足に加えてさらに困難を招いているのは、オペラ界の資金管理方法だ。主役級の歌手たちは、一般的に、公演を終えると出演料を支払われる。公演前の何週間にも及ぶリハーサル中は、何ひとつ受け取れないのが普通なのだ。その間彼らは、役作りのために、レッスンや指導の費用を支払わなければならない。病気になったり公演をキャンセルしたりすると、出演料は支払われない。このシステムの不安定さが、オペラの将来を危険にさらしている。
(5) オペラが直面しているもう一つの問題は、大衆娯楽に影響を受ける観客の要求にどう応えるかということだ。ポップスの歌手なら、歌声だけでなく、見た目でも評価されることが多い。そのため、この大衆文化に影響を受けた観客の前で歌うオペラ歌手は、今では『歌うモデル』であることが求められている。が、こうした要求は非現実的、いや有害でさえある可能性もある。オペラ歌手は、もし体重があまりに軽いと、マイクなしでは大きな劇場やコンサートホールに響き渡らせるほどの大きな声を出すことができない。歌唱力よりも外見を重視するならば、観客は、人間の肉声の最高のものを聞き逃してしまうおそれがある。
(6) オペラの問題には簡単な解決策はないし、オペラの価値についてはさまざまな意見がある。とは言うものの、毎年多くの若者たちが、この特別な芸術形式の中で才能を伸ばそうと、希望と夢を抱いて音楽のコースに登録している。オペラが多くの障壁を乗り越え、若い世代を魅了し続けているという事実。それこそが、オペラが価値に満ちた尊敬されるべき芸術形態であり続けていることを示している。