2023/07/26

■ まなぶ - カトリック系大学のトレーサリーデザイン


左 2009-11月  /  右 2022年10月

昨日ちらりと見た画像。窓枠上部の幾何学的な円形デザインをいま仮に、プレートトレーサリー意匠と呼びましょう。

都心にあるイエズス会経営の大学の、校舎の壁に、画像左のように、コンクリート製のトレーサリー意匠が見られました。

画像は同じ箇所を、グーグル・ストリートで見たものですが、撮影時期が、左側は2009年11月、右側は2022年10月です。つまり、この間に、意匠は撤去されたということですね。

この画像左側のかつての意匠。カトリック系大学の校舎を教会のモチーフでおおうという日本の建築から離れた発想は、実にステキでした。その外観がいかにもカテドラルの雰囲気を漂わせ、道路(といっても、片側1車線で大型車は通りづらい)にも、街並み(と言っても大学校舎と向かいは土手ですが)にも、特別な通りを歩いているようなエキゾチックな気配が感じられました。

校舎の中で勉強する人にとっても、目に映る景色といい入り込む陽の光といい吹き寄せる風といい、ただのコンクリート製の建物とは違う空気感に包まれていたのではないでしょうか。

ヨーロッパの教会のトレーサリーは石板をくりぬいた芸術品で、風雨にさらされて1000年佇んでいますが、他方、この大学の意匠は、私が知る限り50年ほど存在し続けたようですが、コンクリートで成形したもので、経年劣化があり、通りに少しずつ崩落の気配があったのでしょうか。大学側にも事情があるのでしょう。部外者が安易になにか言っても無意味でしょうが、撤去されてしまった写真は、東京によくある雑然とした路地になってしまい、以前を思うとさびしさが残されました。