2023/09/16

■ なおす - 玄米を精米


お米を玄米で購入します。米作地帯のど真ん中に住んではいるのですが、農家ではないので。

で、10kgずつコイン精米します。

どのメニューにしますか? 別にそうワクワクしないか...。でも好みは激しく分かれそうです。

デフォルトは「標準白米」ですが、それよりさらにピカピカに磨く「上白精米」もあるようです。「大吟醸」はないかなぁと探したのですが、ありませんでした(あったらお前はそれを選んだのか? と詰め寄られると...)。

逆に、玄米に近い「一分づき」もあるようです。玄米にせず一分づきにするために精米機に持ち込んでお金とひと手間をかける人もいるんですねぇ。

私ならいっそ玄米のままで...30年間ほどそうでした。食感が好きです。ていねいに噛もうという気にもなります。が、残留農薬が...などと言う声も。意に介さず強い決意で主義を貫けばよいのですが、小心者なので、チョっと削りましょう。

ということで、私は「五分搗き」にしています。

分搗き米を自由に選んで食べられるなんて、すばらしく便利です。感謝。

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あの、一点ちょっと(いつもの通り、その「一点」が、長いです)。この、精米最後の段階でお米を受けるために持参すべき容器?ですが、「30kg入り米専用紙袋」(画像右下の紙袋)以外はセットできないのが業界標準仕様になっています(近隣の複数個所複数メーカーの精米機すべて)。

初めて精米機を利用しようと決意した数年前、精米機利用のしくみが不明で、恐怖心が...(クラシックシェービングみたいだな→5/1ご参照)。ここまで読んきてくれた方にはうすうすご察知の通り...根っからの臆病者なんです。ユーチューブなどでじゅうぶんに研究を重ね、かつ数か所を下調べに訪問します(手ぶらで精米機周辺を歩いたりしゃがんだりする不審者です)。

どの複数のブースを訪れても、精米後の白米が床に散乱していて、かつ、かならずホウキと塵取りがぶら下げられています。こんなに白米をこぼすだなんて、ずいぶん皆さんズボラな方々ばかりで...い、いや待て、もしかして、これはやはり最後に白米を受けるのに失敗する確率がある程度高いのではないか...などと推理します。

さて、数年前の、初めて利用した時の話です (毎度ここからが長いので、チャンネルを変えるなら今です);

万が一しくじって米をこぼすのではないかと予想して、焦らなくてよい時間帯として、利用者のいないであろう早朝を選んで訪問。

農家ではないので「30kg入り米専用紙袋」など持っているはずがなく、スーパーの(というか、正確にはニトリとユニクロの)大きな白いポリ袋を念入りに3枚ほど重ねて、精米した10kgの米をこれに受けるつもりです。袋の容量は十分あります。

備え付けのホウキと塵取りを使って、いちおう、あらかじめブース内をきれいに掃きます。掃いた白米混じりのゴミを塵取りに入れたら、塵取りからすぐあふれます。軽トラに常備してある別のポリ袋に入れます。結局、ゴミ・砂・泥・髪の毛・白米の合計で、3合程度はありました(おぞましい記述ですみません)。「炊いて食おうかな」という欲望が、一瞬頭をよぎります。あざ笑っているあなたは、江戸時代初期元禄期の井原西鶴の、大阪堂島のあの話をご存じないからでしょう!? その話によるとつまり...いや、やめときましょう。で、画像では左に見える黄色い収穫コンテナ(画像左の黄色い箱)を置いてあるその台の上に、すくい取ったゴミ入りの袋、いや正確にはごみ交じりの3合の白米入りの袋を置きました。

さて、玄米と段ボールとポリ袋と、さらに、昨日買って用意しておいた新しいホウキと塵取りとごみ袋など、一式を収穫コンテナに入れてブースに持ち込みます。第三者が見れば、どう見ても「コイン精米機をメンテ中の管理人」の構図です。

で、米を受けるためのポリ袋を広げておき、さらにその下には用意した段ボールの箱を置きます。この時点で精米機初体験の緊張は極値に達しています。「こわい...やめようか。でも朝早いし誰もいないし、やるならもう今しかない。今やらなければ生涯やらない」と葛藤します...犯罪でもするんですか。この刹那に感得した一つの真理;「得難き機会はすべての動物をして、好まざる事をも敢ヘてせしむ」。

さて、コインを入れると、精米機の中に隠れているお姉さんが目覚めて指示を出し始めます。「五分づきコース」を選んで、精米ボタンを押します。ドカンという轟音で開始。口をあいて見とれています。精米された米は最終落下地点の上にあるバスケットに次々とプールされていきます。五分づき米は、玄米と変わらないような黒さです。お姉さんちゃんと米を搗いているんですか!? 朝早いからって...。

精米完了。緊張しつつ、ごくりと息を飲んで、両手でポリ袋を広げておき、意を決してペダルを踏んで米を落下させました、

ら、

ドカンという轟音とともに、10kgすなわち100Nが一度に重力加速度9.81 m/s²に加勢されて落下。手に受けるその衝撃が想定外に大きく、「ちょっとずつ落ちてくれよ、おバカ!」と思う間もなく、袋はあっさりと3枚まとめて破れ、米が床にあふれ落ち始めます。米は魔物だなと疳づいた時はすでに遅く、破れた袋の形を取り繕おうとすればするほどますます焦り、米は雪崩のように床に崩落し、沼へでも落ちた人が足を抜こうと焦るたびにぶくぶく深く沈むように、せまい精米ブースはあたり一面に見る見る間に米が堆積し(大げさだと思います)...あとは自由に想像して楽しんでね...(ioi)...。

ブース内の床は精米後の米がざっくざく。誰かが外から開けようものなら滝のように米が流れ落ちたことでしょう。この煩悶に際して覚えず逢着した第二の真理;「すべての動物は直覚的に事物の適不適を予知す」...が、真理はすでに二つまで発明しましたが、毫も悟りを会得した愉快が感じられません。

これが日本昔話みたいな大判小判ならなぁ、あはは...などとあなたのジョークで慰めてもらっている場合ではありません。しかも五分づき米で色は黒く、銀シャリ信仰のある東北人に見られたら恥ずかしいというコンプレックスもあり、誰かに見られないうちに、床にぶちまけた米の中に塵取りを突き刺して狂ったように怒涛の速さで段ボールに掬います。掬ってもすくっても...。で、最後は米をホウキで塵取りに掃き取って段ボールに。掃いて捨てるほどあるというのはこういう意味だったのか...ここに第三の真理が驀地に現前します;「君子危きに臨めば平常なし能わざるところのものを為し能う。之を天祐という」...。幸いに天祐を享けたる君子が、暴君たる精米機の指示に服従させられた奴隷的労務からついに解放に近づいたところ、何だか迫り来る軽トラのエンジン音が...。ここで人に来られては大変だと思い、いよいよ躍起となってホウキを掻きまわす...。足音がだんだん近付いて、ついにガラリと我が闘争のブースを開ける...。ああ残念だが天祐が少し足りなかった...。

「お前、ずいぶんきれいに掃除したな、どうもどうも」と、軽トラのおじいさん。聞くと今度は本物の「精米機ブース管理人」でした!が、すぐ気配を察知して、「マガした(ぶちまけた)のか...。たいへんだったな。準備がいいな。ごくろうさん。大きい(30kg入りの米専用の)紙袋じゃないとダメなんだよ。」と叡智と慈愛に満ちたありがたいお言葉を賜りました。

このあふれる大判小判のように持ち帰った生涯思い出に残る五分搗き米を、その後しばらくは、研ぐ際には、六分搗き米くらいになるまで額に青筋を立てて猛烈な気合いを入れて洗ってはすすぎ、おいしくいただいたのは、いうまでもありません。過酷な労働の後のごはんはおいしい...。