2023/08/26

■ まなぶ - 電子辞書 - 私の場合



 今月、20年ほど使った電子辞書Casio ExWordが壊れて廃棄した旨8/17に書きました。機能的に英和と和英だけの超シンプルな最低機種ですが、ゆえに使いやすかったです。単4電池2本で駆動し、よく使った年は、年に1,2回、電池交換をしました。今は、2019年に購入した画像の充電式の多機能なSharp Brainを使っています...と言えるほど使わなくなりましたが。

 電子辞書は、「道具」の一つで、道具というのは、使い手によって有用性は多様です。また同じ使い手でも、その人の技能や必要性のステージは刻々と変わります。電子辞書もそうだと思います。

■ 電子辞書を、イマこの時代に必要としている人とは? あなたが「学校で英語という教科を勉強中」の中高生ではないという前提で、いっしょに考えましょう。

 目の前にあるまとまった英文の意味を今すぐ正確に知る必要があるが、自分の英語理解力に余るならば、「スマホ辞書」「スマホカメラでOCR→google lends」や「PCやスマホでgoogle 翻訳」があるのでは? 仕事中などそういう状況ではないでしょうか。

 電子辞書ユーザとして思い浮かぶのは、上のネット環境が制約されている人です。図書館や自室の環境ではスマホやPCが使えないとか、商用で海外ホテルの狭い部屋で書類と向き合うとか。

電子辞書は、英語の勉強(特に英文法)を一通り終えた「英語を使って、現地や現場で業務をする職業人や特定分野の専門職」向けの機器だと思います(ただし、翻訳業の方の業務は、PCで契約分野辞書サイトを展開し、その傍らに小学館ランダムハウス英和大辞典第2版を置いて仕事をしているでしょう)。

 おおざっぱに言えば、たとえば実用英語検定試験は、「2級は高3程度」、「3級は中3程度」に照準を合わせています。そのレベルでは、その大多数が中高生の履修レベルで、英語はまだ英文法学習中ではないでしょうか。

そう考えると、文法的説明が一覧しづらい電子辞書は、英検レベルでは準1級以上の人のツールでは? 

ひと通り英文法と語彙の知識を完備した大学生や大人が電子辞書を使うとしたら、1) 業務や仕事を離れて、くつろいで読んでいるときに今すぐこの1語だけ知りたければ、手軽で有用かもしれません。あるいはまた、2) 業務や仕事を離れて、趣味の時間をとって、英文解説書などを、理解しつつ語彙も増やしたい意図で読みたいのであれば、そのひとときを演出するガジェットでしょう。以上の2者にとって、「スマホカメラでOCR→google lends」「google翻訳」は、かえってよけいなわずらわしさがあったり気分が壊れたりするかもしれません。

他方、英文法の知識など完備していない大人だったらどうでしょう? 電子辞書は役立ちますか。文法の知識が貧弱ならば、電子辞書で単語をいくつか引いただけでは、あいかわらず意味不明では?  例えば、イスパニア語を履修したことのない私やあなたが、目の前のイスパニア語の文書を、電子辞書があれば読めると思いますか? その時は「スマホカメラでOCR→google lends」「google翻訳」でよいのでは? いやそれ以前に、そのような大人であれば、そのような事態になるのを避けるでしょう。ロシア語がわからない私やあなたが、ロシア語の文書を手に取る事態になるとは思えません。

お前はどう使っているのかと言われると、ここ数年は、スマホとPCの電源を切った状態で読み物をしているとき...。なのですが、そのときも私は最近ますます、紙辞書です。電子辞書は、i) 単語の意味だけ今すぐ分かればよく、かつ、ii) できれば発音も知りたい(画像の物は発音してくれます)、の2条件が揃ったときのみになりました。上の赤い電子辞書は、購入直後はよく使いましたが、あるとき使用中に充電池が切れ、乾電池と違って、充電に時間がかかりその間使えないことに気づいて以来、不安や不信感が...。加えて、昨年末にジーニアスが第6版になって大幅に読みやすくなり、もっぱらそちらを快適に使っています。紙辞書の方が速くて理解しやすいです(一番下の段落ご参照)。

ただ、この議論は、どうだ私が正しいだろう、というわけにはいかないでしょう。人により、道具の使用状況はさまざまで良いと思います。

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さて、今度は話題を少しズラして、あなたは、小中高生のように英語を学習中の希望に満ちた若者に、電子辞書を勧めますか?

今どきの電子辞書は「英和」「和英」「国語」「古語」「漢和」「家庭の医学」など全部が入っているので、電子辞書1ツあれば、重くてかさばる「紙の辞書」など不要では?

 思うのですが、「電子辞書が1ツあれば、中学高校6年間バッチリOK」というアドバイスをする人は究極の激しい冗談でこの場をワっと盛り上げようとしている方だと思います...Σ(゚ω゚ノ)ノ...なんてことを言い出すんだ!

 高1のAくんの告白;高校に合格した翌日、じいちゃんばあちゃんからお祝いに高級な電子辞書を贈ってもらった。もうこれで安心。で、学校も始まり、英語の宿題だ。訳さなきゃ。知らない単語だらけだ。さっそく単語を引いてみよう。

まず、立派な化粧箱から出す。で、プラスチックケース(ビニール袋)から出す。開く。電源を入れる。あ、充電しなきゃ。新品は8時間かかるって。この時点で今日は終わった...。で、翌日気を取り直す。立派な化粧箱から出す。で、プラスチックケース(ビニール袋)から出す。開く。電源を入れる。数ある辞書から「英和」を選ぶ。数ある「英和」のうちから「ジュニア・アンカー」を選んでみる。「QWERTY配置の慣れない小っさーい繁雑なキーボード」で、宿題プリントの単語を見比べながら人差し指でポチリポチリと入力する。候補が途中いっぱい出て煩わしいけど必死でよく見てその中から選ぶ。品詞の候補? なにそれ? 動詞とかのことかな。適当にスクロールする。おそい。液晶画面がスクロールして目がおかしくなる。この辺の意味かなぁ...。読んでもよく理解できない。さらにジっと読むとまた目がおかしくなる。(さらに根性があれば)、どういう使い方をするか(語法)もスクロールしたいけど、あらためて「語法ボタン」を押さなくちゃ。 “他動詞”, “SVOC(Cは形容詞相当語句)構文を構成する”って、何のこと...? (ここでさらにめげない強靭な意志ある人は)、「例文ボタン」をタッチ。展開するまでにワンテンポ...。で、その例文をじっくり読み...って、あ、そう使うのかこの単語...つ、つかれた...。もうめんどくせえから二度と使いたくない、宿題やりたくない...。50年前ならここで「ドラえも~ん(ioi)」、今なら「グーグル先生ぇ~(ioi)」ではないでしょうか。

 夢の玉手箱電子辞書と、なんでもリクツ抜きですぐ教えてくれるドラえもんやグーグル先生は、このA君をよってたかってダメにすると思います。あなたのご家族やご親族の現役高校生の電子辞書を見せてもらってください。きっとまだじいちゃんばあちゃんにもらった当時のままの「豪華化粧箱」に格納されて本棚の隅に鎮座ましますか行方不明になっているかのどちらかでは?

学齢期=言語習得期に必須の行為は「辞書で見出語の語法と用例を精読すること」ではないでしょうか。で、電子辞書の構造上、最悪な点は、いちいち『語法ボタン』『用例ボタン』を押して閲覧し、『スクロールして探す』という、ストレスいっぱいな点です。

 通常は、めんどくさいから用例ボタンを押してまで用例は読まない → もっと知りたい気持ちや伸びようとする一瞬のチャンスを、毎回潰す → 若者の才能と知識と将来を破壊します。

 紙辞書ならば、例えば高3大学受験生で、自分の手もとで「ジーニアス第5版」を1, 2年ほど使っているのであれば、目指す単語"owe"の見出しまで 1秒から10秒ほどでたどり着き、語法はowe A to Bと、Aは物事・結果、toは不定詞でなく前置詞、Bは人・原因、で、その具体的な例文"I owe my success to you."...と、眼球の移動だけで、完全に一覧できる視界範囲内です。ここまで見れば、理解できて身に着くでしょう。

新学期のシーズンは、文科省で『全国春の電子辞書撲滅運動』を呼びかけた方が良いと思います(;^^A