2024/04/16

■ なおす - パンナイフを砥ぐ


パンナイフの刃は、一般にパーリング(波刃)なのですが、寿命の短さから、私は、波刃だった貝印の製品を、無理やり砥いで、平刃(なめらかな直線状の刃)に強引に加工したのが、20年ほど前(2023-7/19)。画像↓の通りです。

※ 画像↑内の、上は新品の波刃、下は加工後の平刃 (2023-7/19)

 でもいずれ切れなくなるのは刃物の運命。私はこれを毎月1回砥いでいます。


 家庭用製パン機(ホームベーカリー)が普及して、私でも自宅で材料をそろえてパンが焼けるのは、うれしいです。

 小中高の頃にヘッセやゲーテの、また大学に行ってからはノヴァリスやシュティフターなどのドイツ文学に親しみました。その小学校の頃から、どうしても不思議でならなかったのが、ドイツ文学の作品中に見受けられる「黒パン」という表現でした。「パンは白いんじゃ?」というのが当然だったので、黒パンって何なのか、まるで中まで真っ黒に焦げたパンを想像し、激しく謎に思っていました。

 東京の大学に行ったので、「パン屋さんでつくったパン」という高級食品を買えるようになり(私の田舎の実家周辺には当時存在しなかった...)、黒パンというのは小麦というよりむしろライ麦を主に使ったドイツや北欧の地方特有のパンだと知りました。「黒パン」という名詞もドイツ語では何種類もあって、大いに謎でしたが、ライ麦の精製度や小麦粉の配合率の違いでネーミングが異なるとだいぶ後になって気づきました。これも文化の一場面ですね。フランスにて「フランスパン」とかデンマークにて「デーニッシュ」じゃぁ、話が通じないのと似ているでしょうか。

 そのライ麦パンを20歳前後にして初めて口にした際には、やはり違和感。小さいサイズでずっしり重く、ごく薄切りで、ぼそぼそした食感で、酸味と粘りがあって、甘さも柔らかさも全くなく...。しかし、特有の香りや栄養価があると知りました。とはいえ、東京のオシャレなパン屋さんのパンを日常的に買える身分じゃぁないので、珍しい食品というにとどまりました。

 ホームベーカリーを使って20年以上たちますが、買った動機は、家族が使いたいから、私も興味があったから、「ふんわりやわらかい、牛乳と砂糖をたっぷり使った食パン」という、ふつうにあこがれる食パンを焼いてみたいナ、というだけでした。が、その後すぐ、小麦粉と塩のみのたった2種の原料と、水と酵母だけで「フランスパン」を食パン型に焼ける、また、なんと「ライ麦パン」も焼ける...ことに気づき、この20年、もっぱらその2種のパンを毎週数日おきに焼いているというわけです。


 この間、いったい何本のパンナイフを無駄に...、いやその話は2023-7/19でしましたネ。

 フランスパンは、こだわって使っている専用小麦粉"カイザー・メゾン"などのクラムが刀身にねばりつきやすいことや、ライ麦パンは、最もハードなタイプのパンであることから、ナイフを入れてスライスする行為は気合いの要るワザです。

 ゆえに、ナイフは、意地になっているかのように毎月砥いで、ベストな状態を保ちます。パンナイフなのに自己満足のカミソリシャープに仕上げています。

 が、焼き上がり時にホームベーカリーの羽を含んで取り出すことがよくあり、スライスする際に、うっかり鉄製の羽に刃をガリガリとあてることもしばしばです。

 以上のような過酷な環境下で酷使する特殊性から、やはり通常の包丁に準じた頻度で砥ぎ続けているというワケでした。

 今日も、小さな重い1斤を、12枚に薄くスライスします。小さい1斤でも1人では3,4日もちます。オリーブオイルのみでよく噛んで食べると、お腹のもちが良いです。後から知ったのですが、ライ麦やサワー種といった素材の効能はもとより、GI値の低さは、精製した白い小麦粉と白砂糖をふんだんに使った通常の「食パン」の比ではないようです。血糖値が乱高下して短絡的な人間にならないよう、少しはドイツ人の冷静な合理性に近づくことができればいいんですがネ...。