2023/09/19

■ まなぶ - センター試験 - 英語1998本試験第5問 - 歯医者さんでの会話


 カナダ留学中のツヨシ君が、現地の歯科医に治療に訪れたそうです。会話の内容から、歯科医師のマック先生とツヨシ君は、初診かつ初対面の関係です。和訳してみます(拙訳)。
また英語のお勉強をしましょう。表記の出題です。私は教職でも学校関係者でも受験生を持つ家庭でもない単なる末端の国民で、単純に読んで楽しむだけの外野です。

出題者作成者に敬意を表します。

 ツヨシはカナダの大学で学んでいます。歯の1本にずっと問題をかかえていたので歯医者に行くことにします。

Dr. Mc:こんにちは, ツヨシくん。私は担当医のマックです。どうされました?

T:あの、マック先生。歯がずっとかなり痛いんです。初めはそうひどくなかったんですが、この2、 3日は、そのせいで夜なかなか眠れないんです。

Dr. Mc:なるほど。で、いつから痛み出しましたか。

T:う~ん、1週間くらい前です。アイスクリームを食べているときに初めて気がつきました。

Dr. Mc:ほう、では君はsweettoothの持ち主なんですね。

T:すみません、それはどういう意味ですか。

Dr. Mc:えと、sweettoothを持っている人というのは、デザートや甘いスナック菓子が大好きなんですよ。私のところにいらっしゃる患者さんはそういう人が多いですね。

T:そうですか、僕もまったくその通りです。まあ、ともかく、僕はアイスクリームを食べていたんですが、そうしたら奥歯のひとつに突然激しい痛みを感じたんです。

Dr. Mc:わかりました、診てみましょう。口を大きく聞けて下さい。...うーん、これがその歯ですか、ツヨシくん。

T:ああぁ! そうです!

Dr. Mc:はい、いいですよ。どうやらwisdom teeth(親知らず)のひとつが原因のようですね。

T:wisdomteeth…ですか。

Dr. Mc:ええ,そうです。口の奥のほうにはどちら側にも大きな歯が3つずつあるでしょう。その3つのうちの一番後ろの歯は生えるのも最後なのですが、それをwisdomteethというんです。

T.はぁ、それで、 どうなっているんですか。

Dr. Mc.かなり大きなcavityがありますね。

T:ca…cavityですか?

Dr. Mc:そうです。cavityというのは、腐敗とか損傷で歯にできた穴のことです。すぐにfillingをするのが一番いいと思います。

T:すみません, “filling”というのはどういう意味なのかよくわからないんですが。

Dr. Mc:えー、穴があいているので、 何かを充填する必要があります。あなたの歯にはもういくつか銀の詰めものをしてあるようですね。

T:ああ、そうです。そうしてもらっていると思います。でも日本では、僕のかかりつけの歯医者さんは、詰める前にたいてい何回か治療しました。

Dr. Mc:うーん、その必要はないと思いますよ。大きな穴ですが、それほど深くはありません。歯の根まで及んでいないみたいです。今日、詰めることができますよ。それでもう問題はなくなるはずです。

T:わかりました。早ければ早いほどいいです、マック先生。この痛みはひどいですから。

Dr. Mc:わかりました、Tくん。でもこれからは自分で甘いもの好きを抑えることができるようにならなくてはいけませんよ。デザー卜やスナック菓子は減らすようにして下さい、いいですか。

T:やってみます、マック先生。でも、それって「ミッション・インパッシブル(不可能な指令)」かもしれません。

 想像するだけでもつらくて気が重い歯科治療(もとは自分の不摂生のせいです)が、1回の診察で治療が終わるのか。初診でx線もナシなんですね。いいなぁ。経験豊富な名医なんでしょうか、マック先生は。

 と思いつつ外野席から今年の出題を眺めていたのが二十数年前の1998年1月下旬頃。すると、その年に、全国保険医団体連合会歯科協議会会長名で、センター試験出題のこの内容が「現在の歯科技術に全く反するものである」旨、大学入試センターに意見書が提出されました。

 それは困ったことですね。国家レベルの大学入学試験が、現代の歯科治療技術をじゅうぶん踏まえずに安易に出題するだなんて、けしからん話である...、文部科学省は受験生に謝罪と得点調整と償いを...などと、受験生の立場になったら憤りたいところです。

 が、他方で、受験生にとっても、私のような末端の国民にとっても、その議論の内容はもちろん不明ですが、ただ、英語試験の解答に支障をきたす内容ではない、たわいもない会話でした。そう専門家が目くじら立てて抗議しなくても...と反論もありそうです。

 出題の前に専門家に見てもらえばよかったですね、とも言いたいのですが、機密性の高いものだし、そうもいかないのでしょうか。心労の多いであろう出題チームの皆さんは、またひとつ学び、その後の検証手順の知恵もまた一つ進歩したことでしょう。

 あともう1点、この出題が印象に残ったこと。選択肢の絵です。見て、一瞬、ウッと身を引く受験生も複数いたのではないでしょうか。

 同様に、この翌年の1999年の英語の追試第5問目も、選択肢が、ちょっとリアルな「虫の絵」で、本文の「かなり不快な感じの虫で、羽がないけど飛び跳ねて血を吸う虫」(a rather unpleasant kind of insect.  One without wings that jumps and sucks blood.)に合う虫を、数あるこれらの虫のなかから選べばOK!...って、あんまり元気よく愉快に選びたい図じゃぁなくて、むしろあらかじめ閲覧注意喚起が欲しいくらいです。ここにその選択肢の虫たちの絵をアップして皆さまのご賛同を得たいけど...ヤメときます。この年も、やっぱり、英語の試験中に気分がすぐれなくなった受験生はいたりしたんじゃないのでしょうか。まさか浪人して2年連続でこの「虫歯」「虫」の絵から選ぶ選択肢にあたっちゃったら、心の傷になりそうです(考えすぎか)。

 センター試験30年の歴史では、こんな些末なひっかかりなどより、もっと大きなハプニングも多かったでしょう。経験を積み重ねて良いものにしていく手順と矜持が受け継がれていくことを願っています。といいつつ、外野の私はほとぼりの冷めた頃に、落語みたいに繰り返し読んで楽しみたいと思います...なんて不謹慎な...(;--A